ニホンコウジカビ

麹菌は日本人の食文化に欠かすことのできないものです。醸造では「国菌」に指定され、多くの研究が進み、栄養・健康作用も広く知られるようになりました。米麹は、蒸し米に麹菌のニホンコウジカビを培養したもので、その米麹と水、(もしくは米)のみで作る麹甘酒は、栄養や科学の知識のない、ずっと昔から実際にのみ、効果を体感することで、体調管理に役立つものとして身近に存在していました。東洋医学では体内の水分代謝改善の働きがあるとも言われています。

 

時代を経ても廃れずにあるのは、自然な甘みを持つ美味しさがあるからこそではないでしょうか。体にすっと染みゆく滋味とどこか懐かしいほっこりとする香りは、そのままいただくのはもちろん、野菜や果物を組み合わせればバリエーションが広がります。また、料理に甘みとコクを加え、お菓子をおだやかな甘みに仕上げてくれます。

 

麹菌とは?

ヘルシーで美容にも良いとされ、欧米でも人気を集める和食。2012年には、「和食:日本人の伝統的な食文化」としてユネスコ無形文化遺産に登録されました。今や寿司や味噌汁は世界各地に広まり、豆腐はヴィーガンの貴重なタンパク源としても注目され、今や世界各地のスーパーなどでも、手軽に手に入れられる世界で親しまれる食材のひとつとなりました。

その和食の特徴の1つとして、発酵食品が多いことが挙げられます。漬物や納豆だけでなく、醤油、味噌、みりん、日本酒、米酢といったお馴染みの調味料のほとんどが発酵によりつくられています。これらの調味料をつくるのに欠かすことのできない原料が「麹」なのです。

麹は、蒸した穀物や豆類に「コウジカビ」と呼ばれるカビを生やしたものです。麹菌(コウジカビ)は増殖するためにさまざまな酵素を放出し、食材に含まれるデンプンやたんぱく質を分解します。その結果、うまみ成分であるアミノ酸などがつくり出されるので、美味しいと感じるようになります。

 

コウジカビには数多くの種類があり、自然界にごく普通に存在していますが、黄麹菌(アスペルギルス・オリゼ)という種類が日本では主に使われています。これは別名「ニホンコウジカビ」といい、日本酒、みりん、味噌、醤油の製造に用いられています。ニホンコウジカビは、2006年には、日本醸造学会により日本独自の「国菌」として認定されました。他に、たまり醤油の製造に使われる「タマリコウジカビ」や沖縄の泡盛や焼酎に用いられる「アワモリコウジカビ」などがあります。そして日本料理には欠かせない出汁にも用いられる鰹節は、麹菌「カツオブシカビ」により造られている発酵食品のひとつです。このように日本の食文化は麹菌なくしては成り立たないほどに、私たちの食生活を支えている国を代表する菌なのです。

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なんでしょう?この奇妙な画像の正体は?? どうか、気持ち悪がらないでください。 よーく見ていただくと、美しく感じませんか? 実はこれは、和食を支えるスーパーヒーロー菌、「コウジカビ」の顕微鏡拡大写真なのです! 麹(コウジ)というのは広い意味では、穀物にカビを生やしたものです。その中で、狭い意味で麹といわれるのは、米に「コウジカビ」を生やした「米麹」です。 そして、酒・しょうゆ・味噌など和食の基本となる発酵食品は、この「米麹」を原材料として作られていますので、この一見奇妙な姿の「コウジカビ」こそ、和食を支える主役といえるのです! 麹には、コウジカビ自身とコウジカビがつくった酵素が蓄積されており、これを使った発酵によって、反応が加速されます。 酒・しょうゆ・味噌などの発酵食品の味を決める上での基盤であり、いずれの場合も「麹造りがもっとも重要」と謳われています。 さらに、「コウジカビ」の本名は、というと、 アスペルギルス・オリゼー です。 まるでヨーロッパの人物名のようですが、日本にしか存在しない菌なのです。 極めて毒性の高い野生の近縁種から人間が改良し、1000年以上前から利用してきたとされます。納豆や漬物、かつお節などでもそれぞれ異なる微生物が活躍しています。 3月14日(土)から開催される、特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」では、 様々な発酵の仕組みや発酵食品の製造過程をご紹介します。 特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」 https://washoku2020.jp/ #和食展 #特別展和食 #国立科学博物館 #科博 #和食 #食文化 #日本食 #米麹 #コウジカビ #発酵 #味噌 #醤油 #しょうゆ #酒 #日本酒 #麹菌 #オリゼー #アスペルギルスオリゼー #ニホンコウジカビ 写真:コウジカビの顕微鏡拡大写真

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麹甘酒に使用するのは、白米を原料とする「米麹」です。できあがったばかりの米麹はふわふわしており、花のように見えることから米に花と書いて「糀(こうじ)」と、日本語の美しさに改めて感じ入るような詩的な表記をされることもあります。これをそのまま商品化したものを「生麹」、水分を飛ばして乾燥させたものを「乾燥麹」といいます。乾燥させると麹菌の活動が止まるので、腐敗する心配がなく、長期保存に向いています。「バラ麹」と「板麹」の二種類がありますが、形状が違うだけで中身は同じです。また生麹と乾燥麹に成分の違いはないので、使い方に合わせて選ぶのが良いでしょう。

 

一般的な米麹は白米が原料で、クセがなく甘みが強い特徴があります。日本酒、米味噌、みりん、酢、甘酒の素になります。玄米麹は甘さ控えめで独特のコクと香りが特徴的です。玄米麹で甘酒を作ると、白米麹までの強い甘みはありませんが、玄米ならではの深いコクと強めの香りが楽しめます。

麦麹はオオムギやハダカムギなどが原料で、風味が豊かです。麦味噌や焼酎造りに使用されます。豆麹は大豆、ひよこ豆、小豆などからつくられ、豆味噌の原料となります。豆味噌はコクや複雑な味の深みを出してくれるペプチドを豊富に含んでいるので、煮込みうどん、味噌おでんなど煮込み料理に最適です。煮込めば煮込むほどコクが出て美味しくなるのも特徴です。 大豆たんぱくは肉や魚の臭みを消してくれる効果もあるので、さばの味噌煮などにもおすすめです。加熱すると香ばしい香りがして食欲増進にもなります。その他、奄美大島の蘇轍(そてつ)麹は、蘇轍の種子が原料となり、伝統的な味噌づくりに使われています。

このように麹は原料により味の変化が生まれ、地方色豊かで、多様な食文化を作り出しています。

 

 

麹が日本人に愛される理由

麹菌を用いた発酵食品は古代中国で始まりました。その技術が日本に伝来したのは弥生時代とも古墳時代ともいわれています。麹の記録が残る最古の文献は8世紀の奈良時代初期に成立した「播磨国風土記」にある酒造りに関する記述です。「大神の御粮(みかれひ)枯れてかび生えき 即ち酒を醸さしめて 庭酒に献て(たてまつりて)宴しき(乾飯が濡れてカビが生え、これで酒をつくった)」とあることから、麹菌の発見は偶然によるものと考えられています。カビた米飯は「加無太知(かむだち)」または「加牟太知(かむだち)」と呼ばれ、「麹(こうじ)」は、それが訛ってできた言葉ともいわれています。

麹の胞子の黄身がかった緑色は高貴な色とされ「麹塵袍(きくじんのほう)」という天皇の装束に用いられていました。室町時代には、麹菌の胞子だけを集めて粉末状にしたものが商品化されました。

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義父母から、娘への贈り物。 1日早いですが、 節分で鬼を祓い終えたので、 飾らせていただきました。 . なんとも美しいおひなさま。 . 即位の礼で天皇皇后様が纏われていた束帯, 五衣唐衣裳に近いものをと、妻と考え選びオーダーしました。 これで鬼はビビッて、うちに来ないはず! . しかし美しいおひなさま。 . 見惚れております。 なにより、 娘が喜んでくれたら嬉しいな。 . #義父母に感謝 義叔母にも感謝 店主さんにも感謝 おもしろい話を聞かせていただきました . #自慢の#雛人形 #我が家の家宝 #お雛様#お内裏様 #平成即位の礼 #束帯#黄櫨染 ではないけど #禁色#麹塵#青白橡#山鳩色 #麹塵袍#笏#立纓御冠#飾太刀 #桐竹鳳麟#桐竹鳳凰麒麟 #十二単#五衣唐衣裳#重ね色目#紅の匂 #おすべらかし#檜扇#平額#桐塑頭 #親王飾り#伝統工芸#御守り

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江戸時代になると、冷ましたお粥に麹を加えて作る甘酒が庶民の間で人気を集めます。一晩で簡単に作れるため「一夜酒」とも呼ばれ、天秤棒を担いだ棒手振り(ぼてふり)の行商により一杯68文(約150200円)で売られていました。そして甘酒を飲ませる茶店もありました。浅草の東本願寺門前には、三河屋、伊勢屋、大坂屋などの有名店があり、神田明神門前の三河屋、天野屋は現在も営業しています。

今では冬の飲み物のイメージの強い甘酒ですが、江戸時代には甘酒は夏によく売れていました。現在のように医療が発達していない当時、夏バテが死亡の原因になることも少なくありませんでした。健康に良いさまざまな栄養素が凝縮した麹で作った甘酒は、今でいうエナジードリンクとして飲まれていました。このように麹は古くから日本人の文化と寄り添い、日本人の物の見方、考え方や精神性を形成する要素の一つとして存在してきました。

 

米麹甘酒の健康効果

近年、甘酒の健康効果が改めて注目され、様々な商品が開発されています。麹菌のゲノム解析など、学順的な研究も進められています。その結果、疲労回復、ダイエット、病気の予防や整腸作用など、麹甘酒の様々な効果が科学的に裏付けられ、「ジャパニーズ・ヨーグルト」と呼ばれて海外でも話題になりつつあります。

それでは、今注目を集めている米麹甘酒のもつ健康効果についてもう少し詳しくご紹介します。

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夏バテや疲労の回復

消化不良や食欲不振、体のだるさなどの夏バテの諸症状は、高温多湿の環境やエアコンによる急激な温度変化がストレスとなり、それが原因で自律神経が正常に機能しなくなることで起こります。

自律神経を回復させる一番の方法はリラックスすることですが、麹甘酒には自律神経に作用し、緊張を緩和する働きのあるアミノ酸、GABAが含まれています。麹のほっこりする香りとおだやかな甘さが気分を落ち着かせ、リラックスさせてくれます。麹菌には同時に摂取した栄養の消化吸収を助ける働きがあるので、夏バテで弱った胃腸をやさしくサポートします。

麹甘酒に含まれるブドウ糖は、炭水化物の最小単位である単糖類の1つで、グルコースとも呼ばれています。分子が非常に小さいため体内に素早く吸収され、エネルギーに変換されます。疲れている時に甘いものが欲しくなるのは、体がエネルギーを要求しているためです。スポーツ選手などは競技前に食事の代わりにブドウ糖やバナナなど素早くエネルギーに変換されるものを摂取するのと同様に、麹甘酒を少し飲むことで、すぐに元気を回復することが期待できます。

麹甘酒にはビタミンB群も多く含まれています。「疲労回復のビタミン」と呼ばれている ビタミンB1を始め、筋肉や皮膚・髪の毛・爪などを健康に保つビタミンB2、皮膚・粘膜の再生や免疫機能に必要なビタミンB6500種類もの酵素を補助するナイアシンなどがあります。ビタミンB群の主な働きは、糖質、脂質、たんぱく質を代謝して、エネルギーに変えることです。サプリメントなどで単独で摂取するよりも、多くの種類を一緒に摂取した方が高い効果を得ることができます。そのため多くの栄養素を含む麹甘酒を飲むことで、効果的にビタミンB群を摂取できるといえます。

また、麹甘酒の原料となる米麹には、鉄分の働きを促進するモリブデンが特に多く含まれているので、貧血に悩む女性の強い味方になってくれます。また赤血球の形成や大事の発育に欠かせない葉酸も多く含まれているので、妊婦さんにも最適という安心安全、自然由来のサプリメントなのです。

 

腸内環境を整える効果

私たちの健康は「腸」によって左右されるといっても過言ではありません。腸の役割は栄養を吸収し、不要物を排出するにとどまりません。腸には体の免疫機能をつかさどる細胞の60~70%が集中しています。腸の状態がよければ、免疫機能は高まり、さまざまな病気を予防・改善できるのです。

 

日本人の大腸は平均にして、欧米人より23m長く、日本人は欧米人と比較して、便秘になりやすいといわれます。ちなみに草食動物の腸は、概ね肉食動物より長くなっています。これは食物繊維の多い植物を消化吸収するためです。江戸時代までの日本人の食生活がほぼベジタリアンだったことを考えると野菜や穀物に含まれる栄養素は消化に時間がかかるため、理にかなっています。消化に時間がかかるということは、つまり食物が大腸に長時間停滞しているということになります。

また日本にはトイレに対して複数の呼び名が存在します。不浄、お手洗い、化粧室、雪隠、憚り(はばかり)、隠所、お花畑など、また排泄の音を消す「音姫」からも日本独特の恥じらいの文化が垣間見えます。このような文化的背景も便秘の原因につながっているともいわれています。

2016年(平成28年)の厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、便秘の人は人口1000 人あたり男性が約25%、女性が約46%となっています。

人の腸内には、数百種類の細菌が6001000兆個も生息しており、種類ごとに集まって腸壁に棲みついています。その様子が植物群生(英:flora)のように見えることから「腸内フローラ」と呼ばれています。これの細菌は「善玉菌」「悪玉菌」「日和見(ひよりみ)菌」の3つに分類され、それぞれが抑制試合ちょうど良いバランスを保っています。善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7が理想的なバランスとされています。しかし、食生活の乱れなどで善玉菌が不足すると、優勢な方に味方する性質をもつ日和見菌が悪玉菌に加勢するため、腸内環境のバランスが崩れ、体調が悪くなってしまうことがあります。つまり便秘や下痢は善玉菌が不足しているという、腸からのサインなのです。

麹甘酒に含まれる麹菌は善玉菌の一種です。腸まで生きて届くことはありませんが、乳酸菌やビフィズス菌など別の善玉菌のエサになることで間接的に善玉菌を増やすことに貢献しています。そのほか便秘改善に有効な成分として、食物繊維や便に水分を与えて排便を促すマグネシウムが含まれています。

このように麹甘酒は腸内環境を整えるのに最適な飲み物といえます。

米麹甘酒の美容効果

ダイエットに最適

麹甘酒に含まれるビタビンB群や麹の酵素αエチルグリコシドには、基礎代謝を高めて体重増加を抑制する働きがあります。甘酒はサイダーやコーラなどの炭酸飲料と比較すると糖質量が多いのですが、αエチルグリコシドの効果により、甘酒を飲むほうが健康的に痩せることができるといえます。月桂冠総合研究所の実験によると、マウスに麹甘酒を与えると脂肪分の多い餌を食べても脂肪がつきにくく、体重増加も少ないことが実証されています。

 

乾燥肌の改善

乾燥肌や肌荒れの原因の1つとして、角層内のセラミド量の減少が挙げられます。角層内のセラミド量は加齢とともに減少し、セラミド量の減少により皮膚バリア機能が低下して、肌の保水力の低下がみられるようになります。

米麹には、肌の保湿力を向上させる働きがあります。皮膚の角層に存在している、セラミドの元となる「グルコシルセラミド」は、米や米麹に含まれており、皮膚のバリア機能の改善に効果があるとされています。また米麹に含まれる「N-アセチルグルコサミン」は、コラーゲンやヒアルロン酸の合成促進、角層水分量増加に効果があるとされています。麹甘酒が肌に保水効果をもたらすことが実証されています。

 

潤いある美しい髪と健康な頭皮

麹菌に含まれるビオチンが皮膚細胞の新陳代謝を促し、肌の皮脂と水分のバランスが整うため、美しい素肌を保つことができます。ビオチンはかつて髪の毛を意味するドイツ語「Haare」の頭文字を取り「ビタミンH」と呼ばれていました。ビオチンは髪の毛の主成分であるケラチンの合成を助け、頭皮や髪の毛を健康に保ち、白髪の増加の抑制する効果があります。また、頭皮が健康に保たれていることで、髪の先までしっかりと栄養がゆき届くようになり、その結果、抜け毛や薄毛の対策にもなります。頭皮全体の新陳代謝を活性化し、皮下組織の血流も良くなるのでより健康で美しい髪を維持することができます。

 

シミやそばかすの予防

麹菌には、強い抗酸化作用をもつといわれるコウジ酸やフェルラ酸も含まれています。コウジ酸はシミやソバカスの原因となるメラニンの生成や、タンパク質と糖が結びつき、老化物質を生成すること、つまりくすみの原因といわれる糖化を抑制します。フェルラ酸は、強力な抗酸化作用をもつファイトケミカルの1つで、細胞を傷つける活性酸素を除去してシミやシワの予防に役立ちます。

麹甘酒を単体で飲むだけでなく、にんじん、アボカド、トマトなどアンチエイジング効果の高い野菜や果物と組み合わせると、さらに高い効果が得られるでしょう。

 

麹甘酒で免疫力をアップ

体外から入ってくるウイルスなどの病原体を捕食・攻撃・破壊する「免疫」。免疫はもともと人体に備わっています。免疫力が低下すると風邪をひく、怪我の回復に時間がかかるなどの症状があらわれます。通常であれば数日で治る病気が悪化して長引いてしまう可能性が高まります。免疫細胞の約7割が町内に待機し、病原体との戦いに備えています。つまり麹甘酒で腸内環境を整えることは、免疫力の向上につながるといえます。玄米、ヨーグルト、生姜、ニンニクなど免疫力を高める食材と一緒にとることで、さらに高い効果を得ることが期待できます。

麹甘酒は高血圧予防にも最適です。麹甘酒に含まれるビタミンB6GABA、パテントン酸には心身の緊張を緩和する働きがあります。人はリラックス状態で血管が拡張され、血流が良くなるため、血圧も下がりやすくなります。また高血圧改善には減塩が必須ですが、減塩料理が物足りないと思う方も少なくありません。料理に甘酒を加えることで、うまみとコクが増すため、減塩料理でも美味しく食べることができます。ラタトゥイユやワカメのお味噌汁に麹甘酒を加えるなど、塩分を排出する効果のあるカリウムを含んだ夏野菜や海藻類と組み合わせるとよいでしょう。

ジュースなど人工甘味料が多く含まれる清涼飲料水よりも自然由来の糖質を含む麹甘酒の方が糖尿病になりにくいといえます。

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期待される認知症やがん予防への効果

腸内バランスが崩れて、悪玉菌が優勢になると、有毒物質が放出されて、多くの病気の原因となりえます。腸内環境の悪化が原因と思われる病気の1つにアルツハイマー型認知症があります。増えすぎた悪玉菌により、ビタミンB群・鉄分・トリプトファンなど、脳の神経伝達物質の合成に必要な養分の吸収が妨げられると考えられているためです。近年死亡数の上位に挙がるがん、その中でも大腸がん、肝臓がん、乳がんの発症についても、腸内環境と密接に関わっています。ウェルシュ菌などの悪玉菌が優勢になると、腸内の食べ物を腐敗させ、発がん性物質をつくり出します。健康体の場合は免疫機能が働き、発がん性物質を攻撃することができますが、腸内環境が悪化していると、免疫力が低下してしまいます。このような悪循環により、がん発症の危険性がますます高まってしまうのです。そのため麹甘酒の優れた整腸効果に大きな期待が寄せられ、さらなる研究が進められています。

 

 

麹甘酒、毎日継続のススメ

麹甘酒の優れた健康効果を知ると、日々の食生活に取り入れたいと思わずには入られませんが、麹甘酒はとろみが強く、まったりとした口当たりが苦手な方も少なくないでしょう。そのまま飲むことが難しい場合は、炭酸水や牛乳で割ったり、生姜やレモンを絞ると飲みやすくなります。麹菌独特の米ぬかのような香りが気になる場合は、冷やすと飲みやすくなります。しかし独特の食感や喉ごし、香りや風味があるため、そのまま飲むことが苦手な方は料理の調味料として使用すると、抵抗なく麹甘酒を普段の食生活に取り入れることができるのではないでしょうか。

ブドウ糖やオリゴ糖が豊富に含まれる麹甘酒はしっかりとした甘みがあるため、調味料として砂糖やみりんの代わりに使うのがおすすめです。麹甘酒のやわらかな甘みはいつもの煮物や照り焼きがより優しい味わいに仕上がります。精製された上白糖と比較しても血糖値の上昇が穏やかで、カロリーが低いため、体重増加を抑制することもできます。お菓子作りにもやさしい甘さの麹甘酒は最適な調味料といえます。

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ヨーグルトやパイナップル果汁に漬け込むと安くて硬い肉も柔らかくなるのはよく知られていますが、麹甘酒でも同じ効果が得られます。麹菌が生み出す酵素プロテアーゼが、肉や魚に含まれるタンパク質をペプチドとアミノ酸に分解してくれるため、肉を柔らかくするのです。醤油や味噌など他の調味料と砂糖やみりんの代わりに麹甘酒を合わせて漬け込んでおくと、調理の際に肉を加熱しても硬くならず、柔らかく仕上がります。麹菌特有の香りもほぼ消えてしまいますので、独特の香りが苦手な方も気にならないでしょう。

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このプロアテーゼが作り出すアミノ酸には、グルタミン酸やイノシン酸といううまみ成分が含まれています。グルタミン酸は昆布、イノシン酸は鰹節に含まれていることでもよく知られていますが、日本料理には欠かすことのできない出汁のように、素材本来の美味しさを引き出す効果があります。

仕上げのソースや味噌汁、スープやドレッシングに加えてコクを出したり、野菜の漬け床としても使えます。まろやかな甘さが特徴の麹甘酒はあらゆる調味料、料理の種類との相性が良く、万能調味料として普段の食生活に美味しく簡単に取り入れられます。

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まとめ

日本を代表する花は?というと桜を思い浮かべるように、日本を代表する菌は麹菌といえるほど、古来より麹は日本文化に欠かせない菌類です。麹菌は古くは10世紀に源順(みなもとのしたごう)が著した漢和辞典「和名類聚鈔(わみょうるいじゅしょう)」に加無太知(かむだち)として記されました。麹菌は日本の伝統的発酵食品に欠かせないだけでなく、日本の社会に大きな影響を与えてきた微生物といえます。

縄文後期から弥生時代にかけて日本列島に伝播した水田稲作技術。温暖といわれている日本列島の気候風土も、台風や津波などの災害による被害は甚大でした。古代の人々は天災を荒ぶる神の行いと考え、この被害を少しでも軽くなるように祈りました。その時に神に捧げた供物の中の米や餅に付いたカビが麹菌です。日本の温暖湿潤な気候風土と稲作文化が出会うことで、麹菌が生まれ、私たちの食生活や文化に色濃く根付いています。

今改めて麹のもつさまざまな健康効果やパワーが見直され、注目を集めています。麹甘酒は、古来より脈々と生き続ける自然の力と恵みを凝縮した世界に誇ることのできる日本人のソウルフードといえるのではないでしょうか。

 

参考:

  1. 八海醸造株式会社、東京農業大学共同研究

「麹甘酒摂取がスポーツ選手における トレーニングによる疲労の軽減に役立つことを確認」

2. 金沢工業大学

「甘酒を飲んで、便通改善、コレステロール低減、肥満抑制。
応用バイオ学科尾関研究室が企業との共同研究で学術的に初めて実証」

 

3. 文部科学省「日本食品標準成分表2015年版」

 

4. 月桂冠総合研究所

「江戸から続く健康飲料甘酒の知られざる力」

 

 

5. 月桂冠総合研究所

「麹菌フコース特異的レクチンの解析と大量生産」