目次

  • 古酒とは?  −  意外と古い日本酒古酒の歴史
  • 古酒の歴史  −  古酒味厚くして、身体上下共にうるおうて酔う。新酒味薄し、頭上ばかり酔って下も寂なり
  • 古酒の味わい  −  古酒の味わいは、通常の酒よりさらに熟成が進み、濃厚で複雑味のある深い味わい
  • 古酒の種類  −  「醸造の仕方」「貯蔵・熟成の仕方」「熟成年数」などにより様々なタイプがあります
  • 古酒を作る  −  お家で『オリジナル古酒』をつくろう!

古酒とは?

現在、「古酒」は泡盛の古酒(クース)を指すことが多く、
日本酒の古酒(こしゅ)はあまり知られていませんが、古酒の歴史は古く、
鎌倉時代には既に上質な酒としてその存在が記されています。
古酒に明確な定義はなく、一般的に長い間熟成させた酒のことを指します。
寒造りだけが行われていた頃は、しぼって火入れするまでの酒を
「新酒」、火入れをして秋まで貯蔵したものを「古酒」と呼んでいました。
酒造技術の向上や環境の整備により四季醸造が行われるようになってからは、
酒造年度(7月から翌年6月末)を基準に、その年度に造られたものを「新酒」、
次の年度以降に造られたものを「古酒」と呼ぶようになりました。
また、熟成期間100年を超すような年代ものは大古酒と呼ばれます。

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古酒の歴史

現在、日本酒は製造されて一年以内ぐらいに飲まれるのが一般的ですが、古くは新酒より古酒の方が貴重とされ、鎌倉時代から江戸時代にかけて、長期間熟成させた清酒が珍重されていました。元禄8年(1695年)に発行された「訓蒙要言故事」には「古酒味厚くして、身体上下共にうるおうて酔う。新酒味薄し、頭上ばかり酔って下も寂なり」と記されてあり、古酒が高い評価を受けていたことが窺えます。その古酒が明治時代になり、市場から忽然と姿を消してしまいます。これは、製造したお酒全てに税金がかかる「造石税」の導入(現在では酒の販売時点で課税される)や、第二次世界大戦中、戦後の食糧統制による米の使用制限など、酒を貯蔵する環境が整ってなかったことが原因とされています。その後、昭和29年に酒税が蔵出し税に変わり、古酒に取り組むメーカーが再び出てくるようになりました。現在では市場にこそあまり出回らないものの、多くの蔵で5年、10年といった古酒が保管されています。

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古酒の味わい

古酒は通常の酒よりさらに熟成が進み、濃厚で複雑味のある風味が特徴です。重厚でほどよい苦みやまろやかさが感じられるようになり、古酒独特の香味は、油や肉を使った濃厚な味の料理に良く合います。貯蔵中に酒中の成分は酸化、分解などさまざまな化学・物理反応がゆるやかに起こり、年数を経るごとに淡黄色から褐色へと着色度を増していくので、もとの清酒からは想像できないような香味と色に変化していきます。しぼりたての新酒ではアルコールの分子がむき出しの状態で存在するため、刺激的で荒々しい味や「麹ばな」と呼ばれる新酒香を持っています。熟成が進むにつれ、酒中の成分どうしの物理的反応や化学的反応によって華やかな新酒の香味が消え、アルコールが水乃分子にに包まれた状態となり、まるみのある調和のとれた味になり、その色も山吹色へと変化します。
さらに進むと、中国の紹興酒の香りによく似た「ひね香」を生じ、重厚な味となり、色も濃くなっていきます。

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古酒の種類

古酒は「醸造の仕方」、「貯蔵・熟成の仕方」、「熟成年数」などにより様々なタイプに分けることができます。その中でも大まかに2つに分類したものが以下のタイプになります。

・淡熟タイプ
淡麗な吟醸酒などをおだやかに熟成させたもので、色合いは薄く、もとの酒の特徴を残した香味がやわらかく穏やかな味わいの酒。もともとの香り高い吟醸香がのこり、熟成から得られる木の実のような香りがひろがります。

・濃熟タイプ
熟成により大きく変化する酒で、純米酒や本醸造酒など比較的精米歩合の高い米で醸造し、常温で貯蔵した色・香味ともに濃厚な酒。香りとしてはシェリーや紹興酒に近く、木の実、蜂蜜、キャラメルなど豊な香りを楽しめます。

熟成はお酒の持つ成分が化合・分解を繰り返して行うので、含有成分が多いほど複雑に変化し、温度が高ければ変化は早くおこなわれます。
淡熟タイプは、原料を小さく削った吟醸系が多いため含有成分が少なく、低温で寝かせているので無色に近く、味、香りも変化が穏やかです。
反対に濃熟タイプは純米酒や本醸造酒などの精米歩合の高いお酒を使用し常温で保存するため、熟成の条件によって様々な変化を楽しめます。

また、その他にも低温熟成と常温熟成を交互に行ったもの、ワイン酵母やシェリー酵母で仕込んだスッキリとしたお酒や、麹米をふんだんに使った甘み、酸味の輪郭を持ち合わせたお酒、さらにそれらを樽熟成させ香味、色調豊かなものなど新しい古酒造りの試みも進められています。

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古酒を作る

通常、古酒というと酒蔵で長期間低温保存されていますが、火入れされたものであれば、日本酒を熟成させることは家庭でも可能です。新聞紙などでお酒を包んで光を遮断し、床下や涼しい押入れ、冷蔵庫などに貯蔵しておくだけで熟成は進みます。
先の<古酒の種類>でご紹介したとおり、「醸造の仕方」、「貯蔵・熟成の仕方」、「熟成年数」等により古酒のタイプが違ってきますので上記を参考に、お好みの古酒を作ってみて下さい。

酒の熟成に適した環境としては
・年間を通じて温度が低く一定
・紫外線を遮断できる
・振動がない
といったことが挙げられます。

特に紫外線は酒質を著しく低下させますので、必ず新聞紙などで包む、箱に入れるなどの対策が必ず必要です。

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