日本酒の「古酒」と「新酒」を徹底比較!

今回は日本酒の「古酒」と「新酒」の比較を行っていきます。日本酒にはたくさんの種類がありますが、同じ銘柄であっても新酒と古酒では味や風味に大きな違いが出てきます。古酒と新酒の比較を通して、皆さんにより日本酒の魅力を知ってもらえればいいなと思います。

 

新酒って?古酒って?

はじめに新酒と古酒について簡単な解説を行なっていきます。

 

新酒とは?

新酒の定義は、「製造年度内に造られた日本酒」というものです。日本酒の製造年度は7月1日から6月30日となっています。一般的には、4月1日から3月31日が1つの年度とされているため間違いやすいですが、日本酒の年度は7月から始まるんだと知っておきましょう。

通常であれば、日本酒は米が収穫される10月から仕込みが始まり、翌年の3月に出荷されます。仕込みから出荷まで年度内に完結するものを、新酒と呼んでいるのです。

 

古酒とは?

繰り返しになりますが、日本酒は10月に仕込みが始まり、翌年の3月ごろに出荷されます。ですが中には蔵元で熟成させるために出荷を遅らせるものもあります。10月に製造を開始し、6月30日を超えて出荷されるものを「古酒」と呼んでいます。

仕込みから出荷というプロセスを、複数の年度にまたがって行うものを古酒というんだと理解しておきましょう。

 

「新酒」と「古酒」の違いとは?

ここでは新酒と古酒の違いを3つ紹介していきます。新酒と古酒には大きな違いがあり、違いを知っておくことでより日本酒を楽しむことができます。

「新酒」と「古酒」の違い①:酒造年度

1点目は酒造年度の違いです。繰り返しになるため簡単に説明しますが、酒造年度内に製造から出荷までが完結するものを「新酒」、複数の年度にまたがって製造から出荷が行われるものを「古酒」と呼びます。

 

「新酒」と「古酒」の違い②:酔い方

2点目は酔い方の違いです。新酒と古酒の酔い方の違いをわかりやすく示している江戸時代の書物があるのでここで紹介したいと思います。以下の文章は、江戸時代の書物『訓蒙要言故事』の中に出てくる記述です。

 

「京童が言うに、古酒を祇園會(ぎおんえ)と云い新酒を御霊祭(ごりょうさい)と云。なんとなれば、古酒は味が濃くて、体全体がうるおうように酔う、ちょうど祇園大社の祭が上京、下京共に賑わう様子と似ている。新酒は味が薄くて、頭ばかり酔って体は全然酔わない。御霊の小社の祭が上京ばかり賑わって、下京は寂しいのと同じだ」

 

上記の文章では、古酒は味に深みがあり体全体が潤うように気持ちよく酔うのに対し、新酒は味が薄い上に頭しか酔わないということを表現しています。新酒と古酒、どちらが好きかという点では個人の趣向によるものが大きいかと思いますが、実際に良い方に違いがあるのは江戸時代から知られていた事実です。

 

「新酒」と「古酒」の違い③:味わいや色

古酒と味わいや色は、新酒と比べると大きく異なります。

古酒は琥珀色のような茶色っぽい色をしているものが多いですが、新酒は透明なものが多いです。また古酒はカカオやキャラメルのような甘さを含んだ味わいがしますが、新酒は味わいに弾けるような若々しさを感じることができます。このように、色や味わいといった点で新酒と古酒は大きく異なります。

古酒は新酒よりも色や風味に特徴があるため、古酒の特徴を最大限活かすためにワイングラスで飲むのがおすすめです。

 

新酒と古酒で酔い方が違う理由とは?

新酒と古酒の違いのところで、酔い方が違うと書きました。ここでは、なぜ新酒と古酒では酔い方が違うのかについて解説していきます。

新酒と古酒で酔い方が違うことを理解するためには、まず酔いの正体について知っておくことが大切です。私たちが酔いを感じるのは、酒に含まれるエチルアルコールの働きによるものが大きいとされています。古酒と新酒で酔い方が違うのは、このエチルアルコールの働き方が違うからなのです。

新酒に含まれるアルコールは、アルコール分子と水分子がそれぞれ単独で存在しています。一方で古酒に含まれるアルコールは、アルコール分子と水分子が分子結合を起こし、くっついて存在しています。このようにアルコールの存在形態が異なるため、新酒と古酒では働き方も変わってくるのです。

私たちの体内ではアルコール分子と水分子がくっついて存在している方が、アルコールを消化しやすくなっています。そのため古酒の方が酔い方は緩やかで、酔いにくいのです。また熟成年数が多ければ多いほど分子結合は進む傾向があるため、古酒の中でも熟成が進んだものの方が酔いにくいという特徴があります。

 

古酒と新酒と味わいの違いをより深く知ろう

古酒と新酒が大きく異なるものであることは、ここまでの内容から理解していただけたと思います。ここからはより深く、古酒と新酒の味わいの違いについて書いていきたいと思います。

 

古酒の味わい

古酒の定義として、複数年度にまたがって製造から出荷まで行われた日本酒と紹介してきました。そのため、熟成期間が1年であっても20年も古酒として分類されるのです。また銘柄によっても味わいが異なるため、同じ古酒でも様々な味わいを楽しむことができると言えます。

 

古酒の味わいの特徴として言えるのは、新酒に比べて奥深いものが多いということです。日本酒は時間をかけてゆっくりと熟成させることで、酵素の働きにより雑味が消えて味が安定するようになります。特に純米酒の場合には、米だけを原料としているため、よりお米の香りや味わいを楽しむことができるようになります。

 

新酒の味わい

一方で新酒は新鮮な香りと荒々しい雑味に大きな特徴があります。そのため新酒のお供としては、こってりしたものや味が濃いものがおすすめです。食事の重たさを新酒のみずみずしさで緩和させることができるため、味のバランスを整えることができます。

 

古酒と新酒にはしっかりとした味わいの違いがあるため、それを理解した上で楽しむようにしましょう。

 

保管と熟成の違いとは?

古酒は日本酒を熟成して造られます。そのため、日本酒を家の中で置いておけば古酒になるのではと思われるかもしれませんが、置いておくだけでは熟成は進みません。日本酒はアルコール度数が強いお酒であるため、保管して置いて腐るということはありませんが、適切な環境で保管しなければ味や風味が落ちてしまいます。

ここからは日本酒の正しい保管方法や熟成方法について解説していきます。

 

日本酒の正しい保管方法

まず前提として日本酒は立てて保管します。立てて保管した方がより日本酒の味わいを保つことができるからです。

 

一般的に日本酒は冷蔵庫に入れて保管しているという方が多いと思いますが、冷蔵庫でなくても大丈夫です。紫外線は日本酒を劣化させる要因になってしまうため、直射日光が当たらない冷暗所で日本酒は保管するようにしましょう。

日本酒は一番美味しいタイミングで消費者の手に届くように出荷されています。そのため購入して1ヶ月以内には飲むようにしましょう。

 

日本酒の正しい熟成方法

日本酒を熟成させたい場合には、保管方法とは少し異なる方法で置いておかなければいけません。まず前提として日本酒を熟成する場合には、直射日光を当ててはいけません。また日本酒の熟成方法は、熟成させる日本酒の種類によって異なります。

 

本醸造酒、純米酒を熟成させる場合には、常温で直射日光が当たらない場所に保管しておきます。夏場には、28度を超えないように気をつけましょう。

吟醸酒を熟成させる場合には、まず冷蔵庫で1年間ほど寝かせます。その後15度から18度の冷暗所に保管しておきます。温度管理が難しいという方は、ワインセラーを活用するのがおすすめです。

 

まとめ

今回の記事では新酒と古酒の比較を行いました。新酒と古酒には、酒造年度や酔い方、味わい、色などさまざまな違いがありました。どちらの方が美味しく感じるかは個人によりますが、より飲みやすいのは古酒の方だと思います。新酒がきつくて飲めないという方は、より口当たりの軽い古酒を飲んでみてくださいね。