チェコ共和国、南ボヘミア州のビール、ヴドヴァイゼル・ブドヴァル。
日本でもお馴染みのアメリカのビール「バドワイザービール」が生まれるきっかけになったビールでもありますが、その中身はまったくの別物です。
もともとチェコは中世時代からビール醸造がとても盛んな国。
ピルスナービールの「ピルスナー」も、チェコにあるピルゼン地方で作られていたことに由来するほどです。
現代でも、一人当たりの年間ビール消費量世界一を誇る、ヨーロッパの中でもっともビール造りが行われている国の一つ。
現在は、チェコビールの種類は400以上を数えるほどです。
中でもブドヴァルは、ヨーロッパで長く愛されてきたチェコビールの銘品です。
そんな歴史にあやかろうと、1876年、このビールのブランド名でもある「ヴドヴァイゼル」を冠したビールがアメリカで生まれました。
その名も、ヴドヴァイゼルの英語読みである「バドワイザー」です。
バドワイザーの醸造会社は、すぐにこの名前を自国アメリカで商標登録されてしまいます。
そのため、元祖ともいうべきヴドヴァイゼル・ブドヴァルは、その名前のままアメリカ大陸に販売することができないという窮地に立たされました。
この商標問題は訴訟にまで発展します。
1900年代まで続いた訴訟は、二度にわたる合意を経てようやく沈静化。
チェコ側はアメリカ合衆国及びアメリカ合衆国保護領においてのみ、その商標権を放棄することになります。
一方アメリカも、ヨーロッパの主要国でバドワイザーの商標を使うことは今も認められていません。
チェコ有数のビールブランドの、意地と誇りを感じることができるエピソードです。
そんな動乱の歴史をくぐりぬいてきたブドヴァルは、ピルスナービールらしい黄金色とホップの華やかな香りが特徴。
ボヘミアは名水の宝庫とも言われ、このビールもチェコの地下320メートルから汲み上げられる良質な軟水です。
コーンスターチやハーブなど一切混ぜない、麦とホップと良質な水、この三つだけで造られるビールは苦味の効いた重厚な味わい。
ホップも高品質なザーツホップを使用しています。シンプルな原材料。
しかし、そのどれもが再高品質のものだけを集めて造られた、まさにプレミアムビールです。
強めのボディに、ふくよかなホップの薫りは爽快な飲み心地。
クリアな口当たりはキレがあります。喉越しもよく、ほどよい苦味も。
飲んだあとも、柔らかなホップと麦の香りの余韻を長く感じることができる味わい深い特徴があります。
ドライながらも濃厚な飲み心地で、どんな料理にでもあいますが、中でもチェコのソウルフードでもあるソーセージや肉料理との相性は抜群です。
チェコにはヴドヴァイゼル・ブドヴァルの工場があり、ガイド付きの工場見学も可能。
出来たての薫り高いブドヴァルを堪能できます。
味わいも歴史も製造工程も、どれをとっても奥深く楽しむことのできる、チェコだけでなく世界を代表するピルスナービールです。