ビールの歴史

仕事終わりのビールが最高の飲み物だという方もたくさんいるのではないでしょうか?
私たち日本人がこよなく愛するアルコールと言えば、やはり最初に挙がってくるのはビールだと思います。ですが、ビールがいつ生まれたのか、どのようにして生まれたのかという歴史まで知っているという方はとても少ないでしょう。そこで今回は、ビールの歴史というテーマで解説記事を書いていきます。歴史を知ることでよりビールを楽しめると思いますので、ぜひ読んでみてくださいね。

ビールが誕生したのっていつ?

ビールがいつ誕生したのかについては諸説ありますが、紀元前8,000年から4,000年にはすでに誕生していたのではないかという説が有力です。私たちが生まれるはるか昔から、ビールはたくさんの人に親しまれていたのですね。
みなさんは人類最初の文明が何か知っていますか?人類最初の文明は、メソポタミアで興ったシュメール文明だと言われています。そしてシュメール文明の時にはすでにビールは誕生していました。その証拠として、シュメールの人々が楔形文字を使って粘土板に描いたビール造りの様子が残っています。当時のビール造りは、麦を乾燥させて粉末状にしたものをパンに焼き上げ、パンを砕いて水を加えて自然に発酵させるという方法で行われていたようです。
メソポタミア以外でも、ビールは世界中で飲まれていました。紀元前3,000年ごろのエジプトでは、ナイル海岸で収穫された大麦を原料としたビールが人々の間で広く飲まれていました。他にも、アッカドやアッシリア、バビロニアなど古い文明遺跡にビールに関する描写があり、そこからビールは人々にとっては重要な飲み物だったということが推測できます。

『ハムラビ法典』とビール

紀元前1,700年代半ばに制定された、世界で初めての成文法『ハムラビ法典』の中には、ビールに関係する法律もあります。この時代には醸造所も世界各地に建設され、ビアホールなどのお店もできていました。『ハムラビ法典』で制定されているビールに関する罰則には以下のようなものがありました。
・ビールを水で薄めたものは、水の中に投げ込まれる。
・ビアホールで謀反の密議などをしているのを知った店主はすぐに届けなければいけない。もし届けなければ謀反の密議をした者と同罪を課す。
古代人にとって、ビールは単なる飲み物ではありませんでした。古代人にとってのビールとは、「神の恵みである神聖な飲み物」だったのです。そのため神聖なものを薄めるという行為は神への冒涜となり、許されぬ行為だったのです。

中世におけるビール

中世になると、修道院でより美味しいビールが造られるようになります。修道士や僧侶たちには知識人が多く、彼らは香味材である「グルート」を使ってビール造りを行う方法を考え出しました。また当時のビールは、栄養補給や医療にも活用されていたと言います。
11世紀後半になると、「グルート」の中でも「ホップ」を使用した場合に、ビールの品質が向上することがわかってきました。その結果、13世紀には修道院の「グルートビール」と都市の「ホップビール」の間で激しい競争が巻き起こっていました。
15世紀後半になると、ギルド制の定着も影響し、修道院よりも都市の方が力を持つようになります。その流れにより、ビールの醸造に関しても市民の手に移っていきます。ビールが都市で醸造される量が増えたことによって、より市民の口に運ばれる機会が増え、醸造技術も向上していきました。
ヨーロッパでビール大国といえば、ドイツを想像する人が多いのではないでしょうか?ドイツでは、1516年に「ビール純粋令」というものが出されました。これはビールの定義を世界で初めて決定したものであると言われており、内容は「大麦・ホップ・水の3つの原料以外は使用してはいけない」というものでした。「ビール純粋令」は、ビールの定義を決定し、品質維持向上に大きく貢献したものだと言えるでしょう。
大航海時代には、ビールは腐りやすい水の代わりに飲料用として用いられていました。今の常識ではとても考えられませんね。アメリカ大陸発見で有名なメイフラワー号には、400樽ものビールが水の代わりに積み込まれていたと言います。

ホップの歴史

中世におけるビールのところでホップが出てきたので、ここでホップの歴史についても簡単に紹介したいと思います。
ホップがいつ頃からビールに使われるようになったのかについては定かではありません。ヒップがいつ頃からビールに使われていたかについては複数の説があります。
ユダヤ教の経典『タルムード』の中にカスタという植物が出てくるのですが、これがホップであると判断した場合、紀元前600年ごろにはすでにビールにホップが使われていたことになります。
また『ホップ』の著者・ブラウンガルトは、メソポタミアの近くでポップが野生しているところはコーカサスであるとし、コーカサス地方には現在でもオセッテという民族が住んでおり、彼らが原始的な方法でビールを作っていることを著書で明らかにしています。
これらの事実から推測すると、ホップが初めてビール造りに用いられたのは紀元前1000年ごろだと推測できます。

近代ビールの発展に欠かせない4人の人物

私たちが手軽にビールを飲むことができているのは、ここで紹介する人物の影響が非常に大きいと言えます。ここからは近代ビールの発展に大きく貢献した人物を4人紹介したいと思います。

パスツール:「自然発生説」を否定

近代ビールを語る上で、パスツールは欠かせない人物であるといえます。パスツールは細菌学者で、生物は生物からのみ発生することを証明した人物です。パスツールがこのことを証明するまでは、アリストテレスが提唱した、生物が親なしで無生物から一挙に生まれることがあるという「自然発生説」が有力でした。
パスツールは、生物は生物のみから発生するという理論から、ぶどう酒の再発酵を防止するために低温殺菌法を発明しました。この方法はパストリゼーションとも呼ばれ、ビールが長時間変質しないでおくことを可能にしました。
さらに、ハンセンが酵母の純粋培養法を発明したのもパスツールの理論を応用しています。また消毒による衛生環境の改善なども、パスツールの殺菌から導き出されたものです。これらのことから、今日私たちが安定して美味しいビールを飲むことができているのは、パスツールのおかげだと言っても過言ではないでしょう。

ハンセン:純粋培養法の開発

ハンセンは、ビールの変質はパスツールが示したような細菌による変敗のほか、野生酵母によっても起こされることを発見しました。そこから優良ビール酵母を分離し、純粋培養法によるビール醸造法を開発しました。純粋培養法によって、人の手で安定したビールを醸造することが可能となりました。

リンデ:アンモニア冷凍庫を発明

またビールの普及に大きく貢献した人物にリンデがいます。リンデはアンモニア冷凍庫を発明した人物です。現在世界の主流となっているビールは、低温でじっくり時間をかけて発酵熟成させる必要があります。発酵熟成には適した温度があり、季節によっては発酵熟成が進まない時期がありました。リンデが発明したアンモニア冷凍庫のおかげで、四季を通してビールを醸造することが可能になり、ビールの品質を向上させることに繋がりました。

アベール:缶詰の原理を考案

私たちが今日手軽にビールを飲むことができているのは、缶ビールがあるからだと言えます。缶詰の原理を考案したのはアベールという人物で、缶ビールそのものは1935年にアメリカで生まれたと言われています。

このほかにも、近代ビールの発展に大きく貢献した人物はいますが、ここで紹介した4名の貢献度は非常に大きいものがあります。彼らに感謝してビールを楽しみたいですね。

ビールが日本にやってきたのは?

ビールが初めて日本にやってきたのは1860年で、イギリス船によってもたらされました。幕府の第一回遣米使節の一人である玉虫左太夫は、初めてビールを飲んだ感想として、「苦味ナレドモ口ヲ湿スニ足ル」という言葉を残しています。
その後1870年になると、アメリカ人のウィリアムコープランドによって、横浜の山手に日本で初めてのビール醸造所が作られました。醸造所が作られた当初は、居留地の外国人が主な顧客でしたが、やがて日本人にも飲まれるようになっていきます。1881年には、日本人の口に合うように作られたビールが発売されました。その後コープランドの醸造所は、キリンビールで有名な麒麟麦酒株式会社に引き継がれました。

ビール瓶の歴史

日本でビールが飲まれるようになった頃、お店では樽詰ビールと瓶詰ビールが売られていました。現在では瓶ビールの方が主流ですが、当時ガラス瓶が外国製でとても貴重なものであったため、瓶詰ビールはとても高価なものでした。
キリンビールは最初ビール瓶をドイツから輸入していましたが、1878年の秋に国産のビール瓶を開発しました。初期のビール瓶はくすんだ色で形も不恰好でしたが、大正時代になると壊れにくく洗いやすいなで肩のビール瓶が作られるようになりました。また明治末期に王冠が採用されるまでは、ワインと同様にコルクで瓶ビールの栓をしていました。

高価な飲み物から大衆の飲み物へ

1880年、日本で大瓶入りのビールは18銭で売られていました。当時もりそばが1杯1銭でしたので、瓶ビールがいかに高価なものであったかよくわかると思います。そのため、当時は一般家庭の晩酌でビールが飲まれることは滅多にありませんでした。
大正時代になると瓶ビールの価格は一気に下がり、カフェやビアホールなどで飲まれるようになりました。そして昭和初期には、徐々に家庭でも飲まれるようになっていきます。このようにしてビールは高級な飲み物から大衆の飲み物へと変わってきました。

まとめ

今回はビールの歴史について解説しました。私たちが普段何気なく飲んでいるビールですが、その歴史まで知っているという方はおそらくほとんどいないでしょう。今回の記事をファーストステップとして、ビールの歴史についてもっと深く学んでくださいね。

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