修道院で醸造されるトラピストビール。
中でもアルコール度数の高い独特な味わいを持つロシュフォールは、ベルギーにあるノートルダム・ドゥ・サン=レミ修道院で醸造されています。
その製造は三種類。それぞれ6、8、10と数字を冠していますが、これは醸造時の発酵に対する麦汁の比重をあらわしたもの。
初期比重によってアルコール度数が変わるため、数字が大きくなるほどアルコール度数も高くなります。
上面発酵でできる濃いブラウン色のビールは、コクがあり重みのある舌触り。
のど越しよりも、その香りと深い味わいをゆっくりと楽しみたい逸品です。
ロシュフォール6
ロシュフォール6は、アルコール度数7.5%ともっとも低く、香りもフルーティーで飲みやすいことが特徴。
麦芽の香りだけでなく、樽で熟成された赤ワインのような、酸味と深みがバランスよく混ざり合ったアロマが楽しめます。
他の二つに比べて味のボリュームや深みに欠ける分、その独特の香りや味わいをじっくり堪能できるのが魅力です。
しかし、三種類の中では年間の生産量がもっとも少なく、本場ベルギー国内での流通もごくわずか。
全体の1%の生産量という貴重なビールです。
ロシュフォール8
ロシュフォール8は、アルコール度数9.2%。
従来持っている特徴的な香りに加え、スパイシーな香りと、はちみつの甘い香りやコーヒーの焙煎の香りなど、さまざまな香りが深く絡み合う複雑な味わいが特徴のビールです。
その独特の香りの正体は、二次発酵時に投入するキャンディーシュガー。
濃いブラウンのビールは刺激的な香りとともに、チョコレートを思わせるまろやかな舌触りは、多くのファンを獲得しています。
ロシュフォール10
ロシュフォール10のアルコール度数は、最も高い11.3%。
そのためブランデーのような刺激的な辛みもあり、6の複雑な味わいがさらに深まっています。
二次発酵のときにキャンディーシュガーを入れる製法も6と同じですが、その液体の色は黒と見紛うほどの濃いブラウン。
濃厚で重たいボディは、このビールの魅力を最大限に引き立てています。
どれも、ゆっくりと味わって飲むのにぴったりのビール。
冷蔵庫で冷やしておけば、そのアルコールの刺激的な香りを楽しめますし、常温ならば複雑な香りをすみずみまで堪能することができます。
そんな癖のある、独特のビールの生みの親であるこの醸造所では、他のトラピストビール醸造所と同様に、その販売利益を修道院の活動や地域の貢献のために利用しています。
その年間製造量は約180万リットルにも上り、醸造所として高い能力を持っていますが、修道院ではこれ以上の生産を制限しています。
その理由は、修道院の活動資金には十分な生産量であることから。敬虔で厳格なサン=レミ修道院ならではの理由です。
そのほかにもこの修道院には質実剛健な気風が随所にみられ、ロシュフォールの製法や醸造所の公開を行わないなど、各地の修道院が築き上げたトラピストビールの歴史を色濃く残しています。