世界遺産が多く存在し、歴史的建造物も多いハンガリー。
ワイン造りの歴史も古く、栽培地区によってさまざまなタイプの特徴あるワインを多く産出しています。
今回は、ハンガリーのワイン造りの歴史や産地、中でも有名なトカイワインの特徴などについてご紹介します。
ハンガリーワインを楽しもう
ハンガリーワインと聞くと、世界三大貴腐ワインのトカイワインを連想する方が多いのではないでしょうか。
しかし、ハンガリーでは貴腐ワインのトカイワイン以外にも美味しいワインは数多く作られています。
ハンガリーのワインは、慎ましく上品さがあることからまさに「大人のワイン」。
22の栽培地区を持つハンガリーでは、それぞれの地区でワインのスタイルが異なりますので、産地ごとに違いを楽しむのも良いでしょう。
ハンガリーのワイン造りの歴史や産地について
ブドウ栽培が紀元前から行われており、東欧の国々の中でも長い歴史があるワイン名産国であるハンガリー。
ハンガリーは夏は乾燥期で暑く、冬は寒さが厳しいという大陸性気候です。
ハンガリーではワイン産地を大きく4つの地方に分けることができ、全部でおよそ10万ヘクタールもの土地を使っています。
1994年のワイン法によって、22の地域がブドウの産地として指定されています。
主要な産地としては、白ワインの生産が盛んなバラトン湖一帯やエゲル地方、トカイ盆地があります。
ハンガリーの産地とワインの特徴
ここからは、ハンガリーの主な産地とワインの特徴をご紹介します。
●パダチョニ
白ワインの名産地として知られるパダチョニで造られるワインは、バラトン湖周辺の栽培地区の中でも最高級と言われています。
パダチョニは非常に日当たりが良い土地であり、温暖な気候からブドウの生育を助け香り高い白ワインが特徴的。
「焼けつくよう」と表現されることがあるパダチョニワインですが、力強く芳醇でありながら上品さのあるワインが生産されています。
●エゲル
トカイと並ぶハンガリーの二大ワイン産地と呼ばれるエゲル。エゲルを代表するワインといえば、「牡牛の血」と訳される赤ワインの「エグリ・ピカベール」です。
16世紀のエゲルではオスマントルコと激しい戦いが繰り広げられていました。
兵士たちが士気を高めるために赤ワインを飲んでいたところ口元が赤く染まり、それを見たトルコ軍が牛の血を飲んでいると勘違いしたことからおびえて撤退したことが「エグリ・ピカベール」の名前の由来です。
「エグリ・ピカベール」は数種類のワインをブレンドして作られ、スパイシーで芳醇な香りが特徴的なワインとなります。
●トカイ
ハンガリーの赤ワインは地元の人々の努力で伝統的な存在ですが、ハンガリーワインで最も有名なのは白ワインのトカイワインです。
トカイワインは、世界三大貴腐ワインの一つとして有名です。
トカイはスロバキアとウクライナの国境に近い場所に位置する都市で、世界に誇るワイン産地としては豪華さにかけています。
ワインショップやワインを提供する居酒屋がいくつかありますが、トカイは観光客向けではありません。
しかし、甘口ワインの最高峰であるため、トカイワインという名称は多くの人に知られています。
トカイワインの特徴や価格について
トカイワインは、貴腐ブドウから造られます。
これはブドウの品種ではなく、貴腐菌が過熟した状態のことで、貴腐菌は世界の限られた場所でしか発生しません。
全てのブドウが貴腐化するわけではなく、房に付いている粒には貴腐化したものとしなかったものがあります。
貴腐化しなかったブドウは通常の白ワインとして製造されます。
貴腐ブドウだけで造ったワインは、ハチミツのように甘いので飲み物として適していません。
そこで、トカイワインでは貴腐化しなかった通常の白ワインをベースにブレンドして甘さを調整しています。
貴腐ブドウは水分が蒸発して糖度が高くなるため時間をかけて発酵するのですが、高い糖度と蜂蜜やフルーツジャムなどのような独特な香りが特徴的であり、世界的にも希少価値のあるデザートワインとして人気があります。
貴腐ブドウを使ったワインはフランスにもありますが、トカイワインは安いので富裕層でなくても高級ワインを楽しむことができます。
ちなみに、貴腐ブドウから造られていることからトカイワインは、ハングリー語で貴腐を意味するトカイアスーとも呼ばれています。