ワインといえば、フランスワインを連想する方も少なくないのでは。代表的なワイン産出国であり、数多くの高級ワインからリーズナブルなワインまでを生み出すフランス。

フランスワインの歴史は、古くは紀元前まで遡るとされています。

そんなフランスのワインには代表的な産地がいくつかあり、地域ごとによって特色や味わいに違いが出てきます。

今回は、フランスのワイン産地ごとの特徴に触れ、どのような違いがあるのかご紹介します。

 

フランスのワイン産地を徹底解説!産地ごとにどのような違いがあるのかチェックしよう

ワインの世界では、古くからワイン造りを行なっている国々を「旧世界」、ワイン造りの歴史がまだ新しい国々を「新世界」と呼んでいます。今回は旧世界のワイン大国であり、ワインの有名な産地であるフランスに焦点を当てて、産地ごとにどのような違いがあるのか解説していきたいと思います。

ワイン造りの歴史があるフランスのワインはどれもこだわりを持って作られているものです。今回の記事を通して、フランスのワインについて興味を持っていただけたら嬉しく思います。

フランスはイタリアに次ぐ世界2位のワイン生産量を誇ります。ワイン生産量は2位ですが、有名な産地が多くワイン好きの中ではフランスのワインをこよなく愛する方もたくさんいます。

今回紹介するフランスのワイン産地は全部で9地方あります。以下、それぞれ簡単に紹介していきます。

フランスワインの産地①:ボルドー

赤ワインの銘醸地として知られるボルドーには、市内を大きな3つの大きな川が流れています。(ドルドーニュ川、ガロンヌ川、ジロンド川)これらの川を境に、水持ちの良い粘土質の土壌が特徴の「右岸」と、水はけが非常に良い砂利質の土壌が特徴の「左岸」の2つの地域に分けられます。右岸では「メルロ」「カベルネ・フラン」を主体とした、力強さと上品な柔らかさを持つ赤ワインが生産されており、左岸では「カベルネ・ソーヴィニヨン」を主体とした、繊細かつ力強い赤ワインが生産されています。
ボルドーワインの最大の特徴は、複数のブドウ品種をブレンドして造られる、複雑で繊細な味わいです。この味わいが女性的な印象に感じられることから、ボルドーワインは「フランスワインの女王」と言われています。

ボルドーワインには「シャトー」が多い

ボルドーワインの造り手の多くには、「シャトー」という名前が付いています。シャトーとは、自社畑を持ち、ぶどうの栽培からワインの醸造まで担っている人を指します。シャトーは左岸を中心にボルドー全域に見られるスタイルです。シャトーの中には複数のブドウ品種が栽培できる自社畑を持ち、独自の比率でブレンドしてワインを造る人も多く見られます。

ボルドーワインの頂点「五大シャトー」

「五大シャトー」とは、1855年のパリ万国博覧会で始まったボルドー独自の格付け「グラン・クリュ」で第1級の称号を与えられた4つのシャトーと、1973年に昇格した「シャトー・ムートン・ロスチャイルド」の合計5つのワインを刺します。これらはボルドーワインの頂点とも呼ばれ、ボルドーワインの存在を引き上げる存在です。

【五大シャトー】
・「シャトー・ラフィット・ロートシルト」
ボルドー五大シャトーの筆頭ともいうべき存在で1、855年以来第1級の首位の座を維持し続けています。バランスのとれたエレガントな味わいで、気品にあふれています。

・「シャトー・ラトゥール」
毎年安定したワインを生むシャトーです。年月が経つほど良くなると賞賛され、長期熟成に強い荘厳な味わいが特徴です。

・「シャトー・ムートン・ロスチャイルド」
1973年に第二級から第1級へ昇格したワインです。ラベルを毎年その時代を代表する画家が手掛けており、コレクターに人気のワインです。

・「シャトー・マルゴー」
ボルドーワインの中でも、最も女性的なニュアンスが強いワインです。文豪ヘミングウェイが愛したワインとしても知られ、小説『失楽園』にも登場します。

・「シャトー・オー・ブリオン」
メドック地区以外から唯一選ばれたグラーヴ地区のシャトーです。

ボルドー名物「メドックマラソン」

メドックマラソンは、途中20を超える給水所でワインが振舞われる珍しいマラソン大会です。ワインの他にも本格的な料理が振舞われ、世界各地からワイン好きが集まるボルドーの恒例行事になっています。
ワイン好きならぜひ参加したいマラソン大会ですね!

知っておくと得?フランス赤ワインの特徴:ボルドー編

 

フランスワインの産地②:ブルゴーニュ

ブルゴーニュ地方はワインの聖地とも呼ばれている地域です。細分化された畑でブドウ栽培を行なっているケースがほとんどで、小規模生産者によるワイン造りが活発に行われています。世界的にも有名な「ロマネ・コンティ」は、この地域で造られるワインです。
ブルゴーニュワインは基本的に、白ワインなら「シャルドネ」赤ワインなら「ピノ・ノワール」を使用し、単一品種で造られることが多いです。旧世界のワインは複数のブドウを使用したブレンドワインが基本なので、ブルゴーニュワインはその中でも異質な存在だと言えるでしょう。

「ブルゴーニュ三大白ワイン」とは?

ブルゴーニュ地方は、白ワインが有名な地域です。その中でも特に有名なのが「ブルゴーニュ三大白ワイン」と呼ばれています。
ブルゴーニュ三大白ワインとは、以下の3つの産地で造られるのもので、世界的に人気があるワインとなっています。

モンラッシュ(コート・ド・ボーヌ地区)
ムルソー(コート・ド・ボーヌ地区)
コルトン・シャルルマーニュ

黄金の丘「コート・ドール」

「コート・ドール」とは、赤ワインで有名なコート・ド・ニュイ地区と、白ワインで有名なコート・ド・ボーヌ地区にまたがる丘陵地帯の呼び名です。ブルゴーニュで最も偉大なワインを生み出す産地として知られています。

知っておくと得?フランス赤ワインの特徴:ブルゴーニュ編

 

フランスワインの産地③:ボージョレ

ボージョレは、世界的に有名な新酒「ボージョレ・ヌーボー」の生産地であり、日本でも人気のあるワイン産地です。新酒のワインとして有名ですが、長期熟成の高級ワインの生産も行われており、さまざまなタイプのワインを楽しむことができる産地です。
ボージョレワインの最大の特徴は、「マセラシオン・カルボニック」という醸造方法を取り入れている点です。マセラシオン・カルボニックとは、ブドウを破砕せずステンレスタンクにそのまま入れて自然に発酵させる手法で、この醸造方法で造られたワインは、渋味や苦味がまろやかで飲みやすいワインに仕上がります。

「クリュ・デュ・ボージョレ」はボージョレの格付けトップ!

「クリュ・デュ・ボージョレ」とは、ボージョレの中でも特に品質の高いブドウを産出する区画のことで、長期熟成タイプのワインが多く生産されている区画のことです。現在では全部で10地区だけが「クリュ・デュ・ボージョレ」に認定されています。

ワインのテーマパーク「ル・アモー・デュ・ヴァン」

ボージョレには、「ル・アモー・デュ・ヴァン」と呼ばれるワインのテーマパーク&博物館があります。ワイン造りに関する歴史や製造工程、ブドウの種類、味の決め手となる土壌や天候など幅広くワインについて学ぶことができます。さらにワイン畑を散策して楽しむことができるため、世界中から多くのワイン好きが集まる場所となっています。

 

フランスワインの産地④:アルザス

アルザスは多様な地質が入り組んだ土地であるため、土壌よりも品種を重視したものが多くなっています。アルザスで造られるワインの約90%は白ワインであり、個性豊かな白ワインが揃っています。またオーガニックワインを手掛ける生産者が多く、中にはゆっくりと自然に任せて造る伝統的な造り手もいます。
アルザスワインは、フレッシュな酸味と果実味が生きた個性的な味わいが特徴のワインです。

アルザスの最高格付け「グラン・クリュ」

アルザスワインの最高格付けとして「グラン・クリュ」という認定があります。「グラン・クリュ」では、白ブドウの4品種に限定した単一品種のワインしか認められていません。「グラン・クリュ」で認められている4品種は以下の通りです。

リースリング
ゲヴェルツトラミネール
ピノ・グリ
ミュスカ

アルザスワインはドイツワインとそっくり?

アルザスはフランスの北東部の非常に寒い地域です。ライン川を挟んでドイツと国境を接しているから、リースリングなど栽培する品種が似ている、ボトルの型が似ているなどドイツワインと似た部分が多いのが特徴です。
しかし味わいは似ているわけではなく、ドイツワインが甘口主体なのに対してアルザスワインは辛口主体となっています。

解説!シャブリと他地域の白ワインとの違い:アルザス編

 

フランスワインの産地⑤:シャンパーニュ

シャンパーニュはスパークリングワインが有名な地域です。厳しい条件をクリアしたものだけがシャンパーニュと名乗ることができるので、基本的に質の低いシャンパーニュは存在しません。

【シャンパーニュと名乗るための条件】
・フランスのシャンパーニュ地方で造られていること。
・ブドウの品種は、シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエのいずれかであること。
・手摘みで収穫すること。
・瓶内二次発酵を行うこと。
・ガス圧が5気圧以上であること。
・規定の熟成期間を経過させること。

シャンパーニュワインの3つのグレード

シャンパーニュワインには3つのグレードが存在します。
1つ目が「ノンヴィンテージシャンパーニュ」と呼ばれるもので、一般的なシャンパーニュワインです。2つ目が「ヴィンテージシャンパーニュ(ミレジメ)」と呼ばれるもので、ブドウの出来が良かった年のみ生産されます。
上記2つに加えて覚えておきたいのが最上級のグレードである「プレステージシャンパーニュ」です。極上のブドウを使用し、造り手が威信をかけて造るシャンパーニュワインで、ドン・ペリニヨンなど有名なブランドも多いです。

「NM」「RM」と呼ばれる2タイプの造り手

シャンパーニュ地方には大きく2タイプの造り手が存在します。
1つはネゴシアン・マニビュラン(NM)と呼ばれる大手の生産者で、原料のブドウやワインの原酒を自社畑だけではなく他から仕入れて醸造しています。
もう1つはレコルタン・マニビュラン(RM)と呼ばれる小規模な生産者で、栽培から醸造までを全て自社で行うため、個性的な味わいのワインに仕上がります。
シャンパーニュワインは大手の造り手がほとんどですが、小規模の造り手も要チェックです。

 

フランスワインの産地⑥:ラングドッグ&ルーション

ラングドッグ&ルーション地方で造られるワインの大半は、気軽に楽しめるテーブルワインです。そのためチビチビと味わって飲むというより、仲間とパーっと飲む際にぴったりのワインだと言えます。
安くて美味しいワインがたくさんあるので、フランスワインの穴場的産地となっています。

生産量はフランスで1位!

ラングドッグ&ルーション地方はいずれも日照量に恵まれた地域で、ブドウ栽培に適した乾燥した気候を有しています。その気候を生かし、フランスワインの40%程度を生産しており、フランスで最も成長しているワイン産地としても注目を集めています。

酒精効果ワイン「VDN」

多彩なワインを生むラングドッグ&ルーション地方では、酒税強化ワインの生産も活発に行われています。中でも「ヴァン・ドゥ・ナチュレル(VDN)」はチョコレートとの愛師匠が抜群で、高い評価を受けている酒税強化ワインです。

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フランスワインの産地⑦:プロヴァンス

プロヴァンスは世界一のロゼ生産地とも称される地方です。フランスで最も古い歴史を持っており、辛口ロゼワインが有名なことで知られています。

フランスのロゼワイン生産量40%を占めています。プロヴァンスのロゼワインは、夏の暑い日にキリッと冷やして飲むのがおすすめで、料理にも合わせやすくあらゆる場面で愛飲されています。また有機栽培を取り入れているオーガニックワインの造り手も多く、隠れた名ワインもあるので注目すべき産地の一つだと言えます。

プロヴァンスワインの味わいに大きな影響を与えているのが、ミストラルと呼ばれる地方風です。ミストラルは大西洋から吹き込む西風がアルプス山脈に当たって吹き下ろし、冷たく激しい北風へと姿を変えたものです。
ミストラルには良い面も悪い面もあります。良い面としては空気を乾燥させブドウを病気から守ってくれること、悪い面としては気温が一気に低下することから起こる品質への影響があります。

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フランスワインの産地⑧:ロワール

ロワール地方は、歴史上の重要都市であるモンソロー、オルレアンなどが点在し、100を超える古城もあることから「フランスの庭」とも言われているワイン産地。

ロワールは日本の関東地方ほどもある広大な地域であり、同じロワール地方でも、気候や土壌、地形などがさまざまです。その結果、赤、白、ロゼ、スパークリングなどバラエティ豊かなワインを生み出しています。

またロワールは農産物に恵まれた地域であり、その素材を活かすためにワインはフレッシュで爽快な味わいのものが多くなっています。

ロワールの四大ロゼ

ロワールには、四大ロゼと呼ばれる4つのロゼワインがあります。それぞれ個性豊かで1度は味わってみたいロゼワインだと言えます。

【ロワールの四大ロゼ】
ロゼ・ダンジュー(甘口)
カベルネ・ダンジュー(甘口)
カベルネ・ド・ソーミュール(辛口)
ロゼ・ド・ロワール(辛口)

「シュール・リー」はロワールの特徴!

ロワール地方のペイナンテ地域では、シュール・リーという製法を用いたワイン造りが行われています。具体的には、発酵後に澱引きせず、ワインと澱をタンクの中で長期間接触させて造るという製法です。
シュール・リーを用いて造られたワインは、澱に含まれるうま味がワインの中に溶け込み、奥行きの味わいに仕上がります。淡白な魚介類との相性は抜群です。

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フランスワインの産地⑨:コート・デュ・ローヌ

フランスでボルドーに次いでワイン生産量を誇るローヌ地方の中でも、ローヌ全域を示すアペラシオンとして存在するのがコート・デュ・ローヌです。

南北に長いコート・デュ・ローヌは、北と南で全くスタイルの異なるワインが造られます。北部は日照量に恵まれており、単一品種のワインが主体です。一方南部は丘陵地帯が広がり栽培面積も広く、ブレンドワインが主体で、ローヌワインの生産の大半を担っています。

コート・デュ・ローヌの主なブドウ品種では、赤ワインではシラーやグルナッシュ、白ワインではヴィオニエやグルナッシュ・ブランがあります。

ローマ教皇ゆかりの産地

コート・デュ・ローヌで最も知名度が高いのが「シャトーヌフ・デュ・パプ」という産地です。シャトーヌフ・デュ・パプはフランス語で「法王の新しい城」という意味があり、ローマ教皇ヨハネス22世がこの地に館を構えたことによりワイン造りが活発になったという歴史があります。

珍しい赤ワイン「ヴァン・ド・パイユ」

コート・デュ・ローヌには、「ヴァン・ド・パイユ」という珍しい赤ワインがあります。これは収穫したブドウを藁の上で6週間以上かけて乾燥させ、水分を飛ばして糖度を凝縮させた後、ゆっくりと1年かけて発酵させ、さらに2年から5年かけて熟成させたものです。
手間ひまかけて造られる「ヴァン・ド・パイユ」は別名藁ワインと呼ばれ、フランスでは限られた地域でしか造られていません。

知っておくと得?フランス赤ワインの特徴:コート・デュ・ローヌ編

 

まとめ

今回は、フランスのワイン産地の特徴を解説しました。

フランスは世界的に見ても有名なワイン産地がたくさんあります。そのためフランスワインといってもさまざまなものが存在するのです。フランスのボルドーやブルゴーニュ、シャンパーニュなど地方ごとに、有名なワインやワインの風味などが異なってきます。

フランスワインをより知りたいという方は、今回紹介した産地のワインを飲み比べしてみてはどうでしょうか?きっと新しい発見があるはずです!

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ワインの産地とその特徴:フランス