ワインは古くからフランスやイタリアなどヨーロッパを中心に生産が行われてきました。
そんな中、近年では今までワイン造りが盛んでなかった国によるワイン生産に注目が集まっています。
ワインの世界では、古くからワイン生産が盛んに行われていた国を「旧世界」、近年ワイン造りが盛んに行われるようになった国を「新世界」と呼んで区別しています。
今回は「新世界」のワインに注目して、どのような国でどのような特徴を持ったワインが生産されているのか紹介したいと思います。
ワインに関する知識をより深めたい方はぜひチェックしてみてくださいね。
■アメリカで生産されるワインの話
アメリカはあらゆる項目で世界トップの数字を残している大国です。そんなアメリカでも近年ワイン造りが活発に行われており、新世界の中心的存在に成長しています。
アメリカワインのほとんどがカリフォルニア州で生産されており、その割合は9割にものぼります。
アメリカにおける主なワイン産地は、テーブルワインをメインに産出している「サウス・コースト」や「セントラル・コースト」ですが、北部には高級赤ワインで有名な「ナバ」や白ワインで有名な「ソノマ」など世界的な産地もあります。
アメリカワインのブドウ品種は主に「ジンファンデル」であり、色味が非常に濃く、果実の味わいがしっかりと感じられる骨太なワインが生産されています。
力強い味わいが特徴的なので、味の濃い料理やバーベキュースタイルの肉料理との相性が抜群です。
●アメリカワインの歴史
アメリカワインの始まりは1796年、ローマカトリック協会の修道士たちがミサ用にワインを造ったのがきっかけだと言われています。
その後、ゴールドラッシュによって人口が急増したことで、ワインの需要が一気に高まりました。
19世紀後半には、「カベルネ・ソーヴィニヨン」や「シャルドネ」などのヨーロッパ系ブドウ品種が導入され、ワイン産業が活発になりました。
ワイン造りが盛り上がっていた最中、1920年に禁酒法が施行されたことによりアメリカのワイン産業は大きな打撃を受けることになります。
その結果アメリカのワイン生産は一時的に衰退してしまいますが、禁酒法が解けると再び活発に行われるようになりました。
現在ではカリフォルニア大学にワイン醸造科ができるなど、新世界を代表する存在になっています。
●カリフォルニアワインが注目を集めたきっかけ
カリフォルニアワインが世界的に注目を集めたのは1976年のことでした。
イギリスで開催されたブラインドテイスティングという評論会で、名だたるワインが並ぶ中、無名のカリフォルニアワインが赤ワインと白ワインの両方で1位を獲得しました。
この出来事は「パリスの審判」と称され、これをきっかけにカリフォルニアワインの名前が世界に広まりました。
当時カリフォルニアワインは、酔うためだけの安価なワインという偏見を持たれていました。
また新世界のワインは旧世界のワインに勝つことはできないとも考えられていました。
パリスの審判をそういったイメージを払拭する大きな出来事だったと言えます。
●革命的アメリカワイン「オーパスワン」
アメリカのワインについて語る際、欠かせない存在が「オーパスワン」です。
「オーパスワン」はワイン好きであれば一度は聞いたことがある、カリフォルニアのナバで生まれた高級赤ワインです。
「オーパスワン」は、カリフォルニアの豊かなテロワールに、ボルドーの伝統的な醸造方法や技術を融合させて造られた革命的なワインです。
中には、新世界と旧世界のワイン造りの英知を結集した唯一無二のワインだと声を上げる人もいます。
「オーパスワン」は世に出るやいなや、世界的な評論家から絶賛され、価格が瞬く間に高騰しました。
現在では当時のスタイルを引き継ぎながら、より細部までブラッシュアップされたワイン造りに励んでいます。
■オーストラリアで生産されるワインの話
オーストラリアは世界でもトップの広大な面積を誇る国です。
日本とオーストラリアは、2015年に「経済連携協定」を結んでおり、2021年には関税がなくなります。
今後美味しいワインをより手軽に楽しめるようになるため、オーストラリアワインにはぜひ注目してくださいね。
●オーストラリアワインの中心は「シラーズ」
オーストラリアワインの産地は、主に比較的冷涼な南側です。代表的なブドウ品種は「シラーズ」です。
原産地フランスではエレガントな味わいを持つ「シラーズ」ですが、日照量の多いオーストラリアでは、果実味たっぷりのインパクトのあるスパイシーな味わいに仕上がります。
シラーズの他にも「カベルネ・ソーヴィニヨン」「シャルドネ」「ソーヴィニヨン・ブラン」などヨーロッパ系ブドウ品種を中心にバラエティ豊かなブドウが栽培されています。
最も南部に位置するタスマニア州では、「ピノ・ノワール」を高品質な赤ワインが世界的な評価を得ています。
●オーストラリアワインの歴史
オーストラリアワインの始まりは、1788年にアーサー・フィリップ大佐がブドウ樹をシドニーに植えたことがきっかけだと言われています。
その後本格的なブドウ畑「ハンター・ヴァレー」が立ち上がり、オーストラリア全土でワイン造りが活発になりました。
●「カスクワイン」の発祥地
カスクワインとは紙パックに入ったワインのことです。オーストラリアが発祥とされており、1965年には同国のワイン生産者が初めて特許を取得しています。
容量が大きく安価であるため、バーベキューのお供としてオーストラリア国内では欠かせない存在になっています。
■ニュージーランドで生産されるワインの話
ニュージーランドは季節による気温の差はどれほど激しくありませんが、1日の中に四季があると言われるほど1日の気温差が激しいのが特徴です。
新世界の中では珍しい冷涼な気候を生かしたワイン造りが行われており、南半球のドイツとも呼ばれています。
特徴的なテロワールによってブドウはゆっくりと熟し、豊かな果実味とスッキリとした美しい酸味を持つエレガントなワインが生まれています。
●ニュージーランドワインの主役「ソーヴィニヨン・ブラン」
20世紀末から急激な成長を遂げているニュージーランドワインは、新世界ワインの中でも特に注目を集めています。
ニュージーランドワインの主役は「ソーヴィニヨン・ブラン」というブドウ品種で造られるワインで、その中でも国内のワイン生産量のおよそ半分を占めるマールボロ地区で造られるものは別格と言われています。
ソーヴィニヨン・ブラン特有の爽やかなハーブ香にトロピカルフルーツのような果実味が見事に調和した味わいは、ヨーロッパのものと一線を画し、ソーヴィニヨン・ブランのお手本とまで言われています。
●幻の最高級ワイン「プロヴィダンス」
「プロヴィダンス」はニュージーランドの高級ワインとして確固たる地位を確立しています。
降水量が少なく日照時間の長いワイン造りに適している環境で栽培されるブドウによって、凝縮感のある上質なワインに仕上がります。
また除草剤や化学肥料を使用せず、丁寧に手摘みで収穫したブドウを使っているのも大きな魅力です。
生産量の少なさからプレミア化している「プロヴィダンス」は、一度飲んでみたいワインの1つだと言えますね。
■チリで生産されるワインの話
チリカベの愛称で知られるチリワインは、ハズレの少ないリーズナブルなワインとして人気を集めています。
日本のワイン輸入量第1位がチリワインであり、日本でのチリワインの人気は確固たる地位を築いていると言えます。
2019年からは経済提携協定により関税がかからなくなるため、今後ますます日本におけるチリワインの需要が高まることが予測されています。
●害虫フィロキセラからブドウを守ったテロワール
19世紀後半、ヨーロッパのワイン産地はフィロセキラによって深刻なダメージを受けました。
そんな中、唯一チリだけがフィロキセラから難を逃れることができました。チリはその特殊な気候や地形から、害虫の侵入を受けなかったとされています。
またフィロキセラによって絶滅したとされていたボルドー原産のブドウ品種「カルメネール」がチリで再発見され、現在ではチリの代表品種となっています。
●チリの高級ワイン
チリワインと言えば、リーズナブルでハズレの少ないワインですが近年有名ワイナリーとコラボした高級ワインも出現しています。
中でも「バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド」社による共同ワイン「アルマビバ」が有名です。
■アルゼンチンで生産されるワインの話
アンデス山脈の東側に位置するアルゼンチンは、ブドウ畑が標高800M〜1200Mほどの高い場所に作られることが多く、昼夜の寒暖差が激しく、日照量が多い環境でブドウ造りを行うことができます。
さらに灌漑にはアンデス山脈からの雪解け水を利用しており、これによりミネラルを豊富に含んだワインが生まれています。
●個性派ブドウ「マルベック」「トロンテス」
「マルベック」はアルゼンチンを代表する黒ブドウ品種です。
しっかりしたタンニンとクセの強い味わいが特徴ですが、ブレンドワインになることで味わいがガラッと変わり、カベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワールとブレンドし、豊満で力強い味わいの赤ワインが生み出されています。
「トロンテス」は白ワインに使われるアルゼンチンの土着品種です。マスカットに似た甘く華やかな香りと爽やかな酸味を持つ、上質な白ワインが生まれます。
●オーガニックワインの隠れた名産地
アルゼンチンはその気候から除草剤や殺虫剤を使わなくてもブドウが健康に育ち、環境に配慮した栽培が可能であるため、オーガニックワインの隠れた名産地となっています。
日本でも有名なワイナリー「ボデガ・ノートン」もその中の1つです。
■南アフリカで生産されるワインの話
南アフリカはワインビギナーにとって、ワイン生産国だというイメージがない国かもしれませんが、実はコストパフォーマンスに優れた良質なワインの産地として近年注目を集めています。
南アフリカでワイン生産が活発に行われるようになったのは、アパルトヘイトが廃止されてのことでした。
貿易の国際化が進み、2000年以降になるとワイナリーの数も急激に増えました。
現在は安価なワインが中心となっていますが、高価格帯の上質なワインが出てくるのも時間の問題だと言えるでしょう。
●南アフリカ独自の交配品種「ピノタージュ」
南アフリカ独自の交配品種である「ピノタージュ」は、ピノ・ノワールとサンソーを交配した黒ブドウです。
発育が早く、高い糖度を持ち、病害にも強いという特徴があります。幅広い料理に合わせることができるため、日本でも注目されている品種です。
●南アフリカワインに欠かせない存在
1918年に設立された「KWV(南アフリカブドウ栽培協同組合)」は、南アフリカワインに欠かせない存在になっています。
ワインの品質向上、輸出増進への働きかけ、独自品種の開発など、ワイン産業として南アフリカワインの成長を支えてきました。
その成果もあり、近年世界的なコンテストで評価を得る南アフリカワインも出てきています。
■タイで生産されるワインの話
温暖化の影響や醸造技術の発展などにより、近年タイでもワインの生産が行われるようになりました。
生産量はまだ少ないですが、クオリティの高いワインも続々と登場しており、今後注目していきたいワイン生産国だと言えるでしょう。
●「モンスーンバレー」「SPY」
「モンスーンバレー」は、東南アジア最大規模を誇るワイナリー「サイアム・ワイナリー」の代表銘柄です。
タイワインと言えばこれというほどポピュラーな存在になっており、ハーブやスパイスの効いたタイ料理との相性は抜群です。
「SPY」はワインベースのカクテルで女性から支持を得ています。
日本でも比較的手軽に入手できるので、タイを代表するアルコールドリンクとして覚えておきましょう。
■日本で生産されるワインの話
日本でもワインの生産が行われていることは皆さんも知っていると思います。
日本でワイン生産が行われるようになったのは明治時代になってからのことですが、戦国時代にはぶどう酒が馴染み始めており、かの織田信長も愛飲したという説もあります。
●「日本ワイン」と「国産ワイン」の違いとは?
「日本ワイン」は、日本で栽培されたブドウを使用し国内で造られたワイン、「国産ワイン」は海外から輸入したブドウや濃縮果汁などを使用し国内で造られたワインのことです。
日本はワイン大国ではなかったため、今まではワインに関する明確なルールがありませんでした。
しかし近年日本ワインのブランド価値を高める風潮が高まり、明確な基準が設けられるようになりました。
2018年10月より、この新しい基準が施行され、今まで以上に日本ワインの価値が高まったのは言うまでもありません。
●日本のワイン特区
現在日本には300近いワイナリーが存在しているのですが、特に北海道と長野にはたくさんのワイナリーが存在しています。
北海道と長野では共に「ワイン特区」を導入しており、小さな規模からでもワイナリーを立ち上げることができ、若い造り手が急激に増えています。
●甲州ワイン
日本を代表するブドウ品種と言えばやはり「甲州」です。
日本ワインによく使用されるブドウ品種で、技術の発展により軽やかで繊細な味わいを持つワインが生まれています。
和食や魚介との相性が抜群で、他のワインが敬遠する発酵系の食材とも合わせやすいのが大きな特徴だと言えます。
●「マスカット・ベーリー・A」
「マスカット・ベーリー・A」は日本独自のブドウ品種として世界中で知られています。
1927年、新潟のブドウ園で川上善兵衛が交配した品種で、アメリカ系のブドウ品種とヨーロッパ系のブドウ品種から生まれました。
甘い香りが特徴で、渋みが少ないチャーミングな味わいが特徴です。
■まとめ
今回はワイン造りの歴史が浅い「新世界」のワインを紹介していきました。
今回紹介したアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、アルゼンチン、南アフリカ、タイ、そして日本は今後ますますワイン生産国として発展していくことが予測される国々です。
フランスやイタリアなどワイン大国のワインも良いですが、新世界のワインもぜひ楽しんでみてくださいね。