赤ワイン用のブドウ品種であるタナ種をご存知でしょうか?
タナ種は強い生命力を持ち、豊かで力強いワインを造り出すとともに、高い長期熟成能力があります。
現在では世界各国で栽培されている品種であるため、タナ種が使われたワインを飲んだことがある方もいるでしょう。
今回は、赤ワイン用ブドウ品種「タナ」の特徴や、多くのワイン愛好家にタナで造られたワインが親しまれるようになった背景をご紹介します。
赤ワイン用ブドウ品種「タナ」とは
日本では、国内で生産されるものや海外から輸入されるものなど、数多くの種類のワインを飲むことができます。
それらのワインに使用されるブドウの品種にはさまざまなものがあり、代表的なものとしては赤ワインによく用いられるカベルネ・ソーヴィニヨンや、白ワインによく使われるシャルドネ、シャンパンの原料となるピノ・ノワールなどが広く知られています。
それらと比べると有名ではありませんが、タナという赤ワイン用ブドウ品種を使用している地域もあります。
タナとは、フランスの南西地方の固有品種であり、そこで生産されているものとしてはマディランという赤ワインが有名です。
タナはタンニンを語源としていると言われることからもわかるように、強い渋みを持つブドウの品種です。
ポリフェノールの含有量は他の赤ワインと比較すると、約2倍~4倍と言われています。
それを原料として作られるワインの魅力も、その深い渋みにあると言っていいでしょう。
ラズベリーの香りのような熟した果実の香りであり、強いタンニンと酸味の豊かな味わいが特徴であり、長期熟成向きのブドウ品種といえます。
タナの主な産地と品種の特徴
タナはピレネー山脈に近いフランスのバスク・ピレネー地方で主に栽培されています。
この地域が原産のタナですが、ヨーロッパの移民者によってウルグアイにもタナが持ち込まれるようになってからは、ウルグアイでも栽培されるようになりました。
現在では「ウルタナ」(=ウルグアイのタナ)と呼ばれるほどウルグアイで有名なブドウ品種となっています。
ウルグアイの後アルゼンチンにももたらされ、オーストラリアやブラジル、ボリビア、イタリア、アメリカなど世界中に広まりました。
タナは乾燥に弱い特性上、適度な水分量のある水はけのよい土壌で育ちやすいとされています。
また、熟すのが比較的遅い品種であることから、日照に恵まれた環境も必要条件です。
タナは、ラズベリーなどの熟した果実のような香りが特徴的で、渋みのある上品な味わいがします。
タナから造られるワインはタンニンの渋みが強いことから、他の品種とブレンドしてバランスを整えられることが多いです。
ウルグアイのタナとフランスのものと比べるとブラックベリーのフルーティな香り、よりライトボディで柔らかで上品なワインに仕上がります。
タナはマイナス評価から気品あるブドウ品種へ
タナから造られたワインは非常に色が濃く、アルコール度数も高めの深いコクのあるワインとなります。
ただ、タナの大きな特徴ともいえる強い渋みは、かつては魅力ではなくマイナスに働くものとされていました。
それを使用したワインも色合いが悪い、渋みがきつくて味が粗野である、何年も寝かせないとおいしく飲むことができないといったように、決して高い評価を受けるものではありませんでした。
しかし、製造技術の進歩や生産者たちのたゆまぬ努力により、そういった問題点は大きく改善されていきました。
抽出や熟成の技法を工夫することで、渋みを魅力として残しつつも丸みがあって飲みやすい味わいや、濃厚で美しい色合いを実現させることができるようになり、タナ種は気品あるブドウ品種として多くの愛好家に認められるものになったのです。
現在では、フランスのほかウルグアイや、オーストラリア、ブラジル、イタリア、アメリカなどの国々でも栽培が進められています。