秋の味覚と相性抜群!通はひやおろしを楽しむ

秋の味覚と相性抜群!通はひやおろしを楽しむ

日本酒には季節によって楽しみ方があるということをご存知でしょうか。

日本酒のネーミングを見てみると、「○○搾りたて」だとか、「○○ひやおろし」など日本酒に詳しくない方には、なにがなんだか分からないネーミングのものが存在していますね。

これらのネーミングは、食材に旬があるように日本酒の段階を示すものも多く、この季節、この時期にどのようにして飲むとおいしいといった指針となるものです。

そのひとつが「秋口から冬の到来まで」の9月から11月に独特の味わいを感じることができる「ひやおろし」という日本酒になります。

ここではひやおろしとは一体どんな日本酒なのか。

またひやおろしを楽しむためのコツなどをご紹介します。

ひやおろしとは

ひやおろしたち

photo by flickr

ひやおろしは、冬から春先の期間をかけて仕込まれる日本酒を春に搾っておき、秋までの期間に蔵などで貯蔵をしてから出荷される日本酒の種類です。

ひやおろしと表現することもあれば、「秋あがり」などと表現されることもあります。

こういった表現は、それぞれの地方や食文化の違いなどで呼び方はさまざまですが、どのような呼び方になっていたとしても、秋口まで貯蔵をしてから出荷された日本酒は、ひやおろしに分類されます。

ひやおろしとは、お酒を造る段階で、二度目の火入れを行わずに卸される日本酒のことをそう呼んでいます。

通常は冬に仕込まれて絞ったお酒を春以降に保存する場合には、火入れを一度行って貯蔵するのが一般的です。

夏が過ぎて外の気温が貯蔵庫の温度と同じくらいになったときに出荷されるひやおろし。

このひやおろしは、江戸時代に誕生したとされています。日本酒を常温の温度のことを指す「ひや」の状態で市場に「卸す」こと。

このために秋口に出荷される日本酒のことをひやおろしと呼ぶようになったわけです。

四季の違いによる日本酒の違い

冒頭でも紹介したように日本酒には食材と同様に旬と呼ばれる時期があり、春夏秋冬でそれぞれに特徴を持っているものです。

しぼりたて

まずは12月から2月下旬、3月中旬時期に出荷される「しぼりたて」です。

伝統的な酒造りを実践している酒蔵では、昔ながらの製法を使って冬の厳寒の時期にお酒を仕込む「寒造り」という方法を採用しています。

秋に収穫されたばかりの新米を使って仕込まれた新酒たちがどんどんとうぶ声を上げてできたときに搾ったものをそのまま瓶に詰める。

これこそがしぼりたてと呼ばれる日本酒です。

若々しく、まだ酵母の酸味が感じられるのが特徴で、大抵の場合には火入れをせず生酒のまま瓶詰をするのが一般的です。

春酒

3月中旬から5月の中旬にかけて出荷される日本酒を春酒と呼んだり、春のかすみ酒などと呼んでいます。

冬から春に季節が変わり、昼と夜の気温差がでて、空気中の水分が霧や霞となって空や景色がぼんやりとぼやける様を表現する季節の言葉が「かすみ」。

まるでこの言葉のような淡く、どこかぼんやりと儚さを感じるような日本酒がかすみ酒の特徴です。

新酒と表現されたり、一番しぼり、生酒、無ろ過などと明記されていることも多いのが春酒であり、明確な条件は設けられていません。

なめらかでしなやかな味わいと、辛口の仕上がりながらも、ほのかに感じる甘さを持つのが特徴のお酒です。

夏酒

夏の暑さを吹き飛ばしてくれる飲み物といえば、ビールと答える方は多いでしょうが、そんなビールにも負けないキンキンの状態で冷やして飲むとおいしい日本酒が夏酒と呼ばれるジャンルです。

5月中旬から8月の終わりまでに出荷される日本酒を夏酒と呼んでおり、明確な定義があるわけではありません。

ただし、どうしてもビールなど他のお酒に流れがちで、どうしても常温や燗で飲むイメージがある日本酒は夏場は敬遠される傾向がありました。

しかし各蔵が夏場でも美味しく飲める日本酒をと創意工夫を重ねて夏酒をどんどんと製造しています。

ブルーのラベルや夏を思わせるようなデザインの日本酒は、夏酒と判断して問題ないでしょう。

例えば冷やしてゴクゴクと飲めるようにアルコール度数を通常の日本酒よりも低くしてあったり、爽快感を感じられるようにシュワシュワの炭酸を入れ、スパークリング日本酒にしていたり、生酒で原酒として販売し、ロックで飲むことを推奨したりしています。

このように夏酒には各蔵元のさまざまなアプローチが見られる日本酒のジャンルといえるのです。

火入れの回数による日本酒の違い

出荷時期の違いの他にも、日本酒の種類は火入れの回数によっても違いがでてきます。

一般的な日本酒は、腐敗防止等の目的で火入れという処理を行うのが一般的です。通常は火入れを2回行ってから出荷されます。

しかし、「ひやおろし」は搾られた後に貯蔵中に品質が落ちないように一度だけ火入れを行い、出荷する前の火入れは行わないというのが一般的です。

「生酒」は火入れを一切行うことなく、搾ったままの状態の日本酒のことを言います。

次に生貯蔵と呼ばれる日本酒ですが、火入れをせず瓶詰をして貯蔵をし、出荷をする前に一度火入れをして出荷されるという工程を踏んだ日本酒のことです。

次に生詰め酒と呼ばれる日本酒ですが、仕込みをして瓶詰めをする前に一度火入れをします。その後に瓶に詰めて貯蔵をし、出荷時期になったら火入れを行うことなく出荷したものを生詰め酒と呼ばれるものになります。

そして一般の日本酒は触れているとおり、瓶詰めの前に火入れをし、瓶に詰めてから貯蔵をして寝かせます。

その後、出荷時期になると火入れを再び行って出荷となります。

日本酒のラベルを見ると、「しぼりたて 原酒」などのさまざまな表記がされているものが多く、日本酒の知識がない方にとっては、何が何だか分からない状態になることも多いと思います。

しかしこれらの名称は、出荷時期や貯蔵期間の違いであったり、火入れという製造工程がどのように行われているかを明記してくれているのです。

それぞれに個性がありますので、どのようにして造られた日本酒がご自身の好みなのかを探してみましょう。

ひやおろしの特徴は

ひやおろし飲み比べ

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ひやおろし最大の特徴は、火入れを一度行って長期間貯蔵をした日本酒だということです。

秋に獲れた新米をその年の冬に仕込み、しぼったままの状態で卸した「しぼりたて」や「生酒」は、フレッシュな若々しい味わいがあります。

一方でひやおろしは、秋に収穫した新米を仕込み、火入れを行った状態で貯蔵をするわけです。

飲むまでには、一年近くの時間を有することになります。時間によっては、程よい熟成が進んでいることが多いですから、しぼりたての際に感じる雑味のようなものが取れて、味わいにまろやかさを感じられるようになります。

しぼりたてを「新人」とするなら、ひやおろしは百戦錬磨のベテランといった表現が似合うかもしれません。

均整の取れた味わいに深さとコクを味わうことができるのがひやおろしの特徴といえるでしょう。

ひやおろしをより楽しむためのコツ

新政六號ひやおろし

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ひやおろしが火入れをした後、貯蔵庫で寝かせられ、ひと夏を過ごし熟柿を重ねた日本酒であることが分かりました。

このような特徴があるひやおろしを楽しむためには、ちょっとしたコツを知っておく必要があります。

ひやおろしが解禁され、市場を賑やかにしてくれるのは、一般的に毎年9月から11月の間になります。

二度目の火入れを敢えてせず、夏の間「ひや」の状態で貯蔵されて熟成の期間を設けられているひやおろしですが、9月から11月という3ヵ月の間でも十分に味わいに変化が見られるのは当然です。

9月の時期に出荷されるひやおろしは、熟成されていないお酒の良さでもあり、弱点でもある粗さや苦みが、夏を過ごすことによってゆっくりと取り除かれているため、熟成されつくした濃醇な味わいというよりは、比較的に飲みやすく仕上がっており、穏やかな味わいが特徴となります。

この9月に出荷されるひやおろしは、ラベルなどに表記こそありませんが、「夏越し酒(なごしざけ)」と呼ばれます。

まだ残暑が続く9月ですから、みぞれ酒や冷酒としていただくという楽しみ方もおすすめです。

一方で同じひやおろしでもギリギリまで寝かせた11月に出荷されるものは、3ヵ月の間にも熟成が進んでおり、旨味が増してより濃醇な味わいを強く感じられる仕上がりになっています。

このように同じひやおろしと言っても、9月ものと11月ものとでは、味わいに大きな違いを感じることができるのです。

この11月のひやおろしを「晩秋旨酒」と呼んでおり、熟成が進み、深みや旨みがこれでもかというくらいに色濃く表現されます。

サンマやマツタケなどの秋の食材にはもちろん、しょうゆや味噌をベースにした鍋料理などの冬の食材などにベストなひやおろしが晩秋旨酒といえます。

やはりぬる燗でいただくのがおすすめの日本酒です。

そして丁度9月と11月の間である10月に出荷されるひやおろしにも名前は存在しています。

これを「秋出し一番酒」と呼んでいます。厚さが和らぎ、一年の中でももっとも過ごしやすく心地よい気候になると言われている10月に販売される日本酒は、夏越し酒と比較して熟成が進んでいます。

しかし、熟成が進みコクや香りが濃厚になっているのかといえば、特別に濃いということではなく、風味や喉越し、香りや味わいといった全ての要素がバランスよく整えられた日本酒に仕上がっているものが多いです。

バランスが秀逸であるため、飲むシチュエーションによって飲み方を変えるという楽しみ方がベスト。

例えば10月でも少し暑さを感じるような日であれば、冷やの状態で楽しむ。逆に秋雨が降ったりして肌寒さを日であれば、ぬる燗にして楽しむなど飲み方に大きな幅があるひやおろしが秋出し一番なのです。

秋口の贅沢として月が変わるごと特徴が変わるひやおろしを味わって、その違いを確かめてみるのも一興ですね。

ひやおろしは「お燗」がおすすめ

焼きおにぎりとぬる燗

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ひやおろしというと、ひやで卸されたのだから、ひやの状態で飲むのが一番と思っている方がいらっしゃいます。

ひと夏寝かされることで、雑味が取れて滑らかさや複雑さが増すことになり、旨味も乗ってコクが出てくるという特徴を持ちます。

冷酒のままいただくよりも、お燗にするとより味わいや香りを引き立たせることができるのでおすすめです。

特に香りが一番際立つと言われているぬる燗の状態で飲むのがひやおろしの一番の味わい方と言われています。

温度でいえば40度ほどの温度がぬる燗になりますので、よりひやおろしを美味しい状態で楽しみたいのであれば、覚えておくとよいでしょう。

おすすめのひやおろしは

来福

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全国には1500以上の酒蔵があり、ほとんどの酒蔵で「ひやおろし」を醸しています。好きな銘柄がある方なら、その銘柄のひやおろしを飲むことをおすすめしますが、特にないという方には、代表的なひやおろしをご紹介しますので、是非お試し下さい。

浦霞 ひやおろし 特別純米

日本酒どころとしても知られる宮城県に蔵元がある株式会社佐浦が送り出す銘柄が浦霞(うらがすみ)。

ササニシキやひとめぼれを原料に使うことで知られていますが、ひやおろしがおいしいことでも有名な蔵元です。

浦霞 ひやおろし特別純米は、9月に販売する夏越し酒になります。程よく熟された特別純米は、米の味わいが広がり、ササニシキならではの旨みを感じられる一本に仕上がっています。

雪の茅舎 ひやおろし 純米吟醸

こちらも米どころ、酒どころとして知られる秋田県の由利本荘市にある蔵元齋彌酒造店が醸するひやおろしになります。

雪の茅舎という銘柄の特徴は、素材にいろいろなものをプラスして高めていく酒造りではなく、逆に無駄なものを徹底的に排除し、引き算をしていくことで日本酒本来の旨みを表現するといった酒造りを行う日本酒になります。

純米吟醸の他にも、純米吟醸でありながらも山廃でもあるという「ひやおろし 秘伝山廃 純米吟醸」などは一度は味わっていただきた至高の一本です。

〆張鶴 純米吟醸 越淡麗

酒造米のパラダイスともいわれる新潟県の宮尾酒造が送り出す〆張鶴のひやおろしが、純米吟醸 越淡麗です。

ひやおろしという名前はついてはいませんが、10月に販売される限定販売商品となっているため、秋出し一番酒になります。

淡麗甘口の酒といえば、〆張鶴ともいわれるほど有名な日本酒であり、バランスが取れた秋出し一番の特徴を押さえつつも、キレのある味わいを感じることができます。

秋だからこそ楽しめるひやおろしをご堪能あれ

いかがでしたか。

ひやおろしというラベルは見たことがあるけれど、一体どういう日本酒なのか分からないという方の悩みは解決できたことでしょう。

熟成された秋の愉しみ「ひやおろし」を秋や冬の味覚とご一緒に堪能してみてはいかがでしょうか。










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