
お酒の前にウコンエキスドリンク、翌日の昼食はカレーライス、と決めている肝臓思いやりさん。活性酸素対策から認知症予防にまで使えるから、毎日ウコンサプリを飲むことにしているアンチエイジングまっしぐらさん…。
こんなにも愛されているウコンですが、一時期は「ウコンは効果なし」との噂もありました。
そういえば、飲み会前にウコンを飲んでも効いているような効いていないような、と感じることもなきにしにもあらず…。
そんな「ウコン効かないんじゃないか騒動」から、はや3年が経ちました。
今回は、最近のウコンの立ち位置はどのように変化したのか、本当は役に立っているのかいないのか、酒飲みとして心配になって調べてみました。
スーパーサイエンス「アーユルヴェーダ」の昔から使われてきたウコンの効果
先史時代※に発祥したとされるインドの伝統的医学アーユルヴェーダ。文字もない時代に生まれた施術法で、長い歳月をかけて、口から口へと伝承されていました。
※先史時代とは、約500万年前〜6千年前までの期間を指します。
ウコンの予防医学効果を認めたアーユルヴェーダとは
アーユルヴェーダとはサンスクリット語のアーユル「生命」とヴェーダ「真理」の複合語で、
「長寿のための知識」を意味するスーパー健康管理システム
「アーユルヴェーダなんて聞いた事がない」な方でもヨガ、瞑想、断食、デトックスなどはご存知ですよね。
これらの現代でも人気の健康法、美容法、アンチエイジングなどの理念は、アーユルヴェーダによって伝えられてきたのです。
アーユルヴェーダでは植物、動物、ミネラルなどを用いた療法がありますが、お酒好きにも嬉しい「アルコール飲料も用いる」療法もあります。
アーユルヴェーダではお酒も健康法の1つ
アーユルヴェーダではおすすめのお酒が数種類紹介されていますが、その中には米粉を加えて発酵させたお酒もあります。これって日本酒もアーユルヴェーダに通じるものがあるってことでしょうか♪
アーユルヴェーダでは「アルコールは少量でも体に悪い」なんてことは言っていません。飲みたい時に我慢する方が余程心と体に悪影響を及ぼすと分かっているからです。
気が遠くなるほどの太古の昔から人間の身体と精神の健康を支えてきたアーユルヴェーダ。そんな偉大なアーユルヴェーダの中で予防医学や治療に使われていたのがウコン(ターメリック=インドサフラン)です。
ウコン=ターメリックに数%のみ含まれるクルクミンの効果
日本では「ウコン」との名称で親しまれていますが、英語名は「ターメリック」。さて、両者に違いはあるのでしょうか?
ウコン、ターメリック、クルクミンの違い
ウコンには50以上もの種類が存在します。
ウコンの語源は「鬱金(ウッコン)」ですが、春ウコンや紫ウコンなども含む総称であるウコンの中でも、秋ウコンは鮮やかなオレンジ色がかった黄金色。したがって秋ウコンがターメリックに近いとされています。
ターメリックは苦味が少なく、ポリフェノール※の一種である薬効成分「クルクミン」が豊富。クルクミンはウコン中に最大5%含まれるとされ、私たちも大好きなカレーの黄金色を作り出す素なのです。
※ポリフェノールには活性酸素などの有害物質を無害な物質に変える抗酸化作用があります。
ウコンの効果
日本では二日酔い予防として有名なウコンですが、その他にも注目すべき効果があります。
- 心臓病
- アルツハイマー
- 喘息
- 脱毛症
- 関節リウマチ
以上のように強力な抗酸化成分も含まれているので「老化のプロセスを遅らせる」ともてはやされていましたが、2017年にウコン効果に疑問を突きつけるレビューが有名誌に発表されました。
ウコンに効果なし
このレビューは今までのウコン効果の研究に対して真っ向から対峙し、否定しています。研究者の1人は「すべての病気を治すことができると信じるなんて危険だ」とまで述べています。
ウコンを信奉する研究者たちはウコンに含まれるクルクミンを薬剤にするために数多くの研究発表をしましたが、2009年以降には15件の記事は撤回されて、数十件の記事が訂正されたことも明らかにしています。
そして、「ウコンのクルクミンは不安定なので生物学的に利用できない」と決めつけました。
このレビューで、日本でも「ウコン効果なし論」が発生したと思われます。
また、国立衛生研究所(米国)でも、
- アーユルヴェーダ療法による治療が効果的であることを証明する臨床的レビューが少ない
- 薬草、鉱物が含まれているため西洋薬と併用すると相互作用が出やすい
- 鉛と水銀が高濃度で含まれているものもあるので、血中濃度が上昇することもある
との理由で、アーユルヴェーダで治療する場合は医師との相談が必要、と注意を喚起しています。
では、なぜウコン効果は信じられてきたのか
ヨガ好きでアーユルヴェーダ的生活に憧れるウコン信奉者としては、なんとも悲しい発表ばかり…。今までアーユルヴェーダを信頼してきたのに、とガックリきます。では、アーユルヴェーダに対峙する西洋医学は完璧なのでしょうか。
西洋医学に対峙するウコン効果
しかし、古くから治療薬として用いられてきたウコンには上記の危険性は少なく、抗炎症剤、抗酸化剤、抗菌剤、肝保護剤、免疫刺激剤、防腐剤、抗変異原性として使われてきた長い歴史があります。
健康を蝕む病原菌を排除するだけではなく、心も浄化して精神も正常に保つとされています。
ウコンに否定的なレビューを読んだ学者からも「ウコンは解明されるには複雑な物質だから」との同情的見解があるように、臨床的に証明されていないからと言って、むげに却下されていいものでしょうか。
しかし、簡易的ながらBBCがウコンについて面白い実験をしているのでご紹介します。
BBCがウコンで人体実験!効果を確認
BBCでは100人のボランティアを募り、6週間の実験を行いました。
その内容は、
- 毎日小さじ1杯のウコン粉末を食べるグループ
- 1と同じ量が含まれるウコンのサプリを摂るグループ
- プラセボ錠剤を摂るグループ
に分けて酸化ストレス※の量を測ったものです。
※酸化ストレスは動脈硬化、高血圧、真性糖尿病、虚血性疾患、悪性腫瘍などの生活習慣病の病因に関与しています。一般的に酸化ストレスは有害、と思われていますが、体内で重要な役割も果たしているので「酸化力が抗酸化システムを超える状態」と捉える見方が一般的です。
酸化ストレスは3つのグループとも同じレベルでしたが、DNA解析をしたところ、1のグループに変化が見られました。それは、
うつ病、不安、喘息、湿疹、ガンのリスクに関連した遺伝子の活性が変化
していたことです。
BBCでは、この状況でウコンが私たちの健康に対して正として働いているのか、負として働いているのかを判断するのは時期尚早だとしています。
しかし、実際にウコンが伝統的に上記のリスクの改善をもたらしているという報告もあるので、ウコンはやはり有益だった、とも捉えても良い実験とも思える、としています。
ちなみに1のグループは粉末ウコンをそのまま食べていたのではなく、様々な料理に使っていました。多分、オイルで炒めたり黒コショウなどの香辛料と一緒に調理していたと思われます。レシピは多分、イギリス人が大好きなカレー!
BBCでも〆の一文に、
if you needed it, is a good excuse to have a curry!
と付け加えているので、やはり飲む前のウコン、翌日のカレー、は正しいかも…♪と気分がよくなったところで、さらに調べてみると「ウコンは腸活にも効果的」
とのレビュー発見!
しかもちゃんと臨床実験済みの研究です。
ウコン効果のパラドックス解明!?腸内微生物叢の構成を変えて疾患軽減
「腸は第二の脳」と言われている通り、ただ栄養分を吸収したり排出するだけの働きをしているわけではありません。
1gにつき100億から1兆個の細菌が含まれ、そして腸全体では100種類の細菌が100兆個以上も存在するとされる腸。
ウコンが腸内細菌にどのような影響を及ぼすのかを調べた研究では、
ウコンが腸内細菌数の増加に関与している
事が認められています。そして、ウコンの腸内細菌への影響が全身に影響を及ぼすことを示唆する、との結論になっています。
ウコンが健康にいい、との十分な確証ではありませんが、この研究は、
胃腸の健康が全身の健康に影響を及ぼす
と思っている人にとっては大いにうなずけるポイントだと思われます。
ウコンは肝臓にも効果あり
酒好きとして最も気になることは、ウコンの肝臓への影響。飲む前のウコンは、果たしてちゃんと肝臓に働きかけているのでしょうか。
これに関しては、ヒトを対象とした研究結果があるのでご紹介します。
この研究は、通常のクルクミンよりも27倍もの高吸収率を誇るクルクミンを用いて行われました。その結果、
飲酒30分前に成人男性に高吸収型クルクミンを飲んでもらった結果、飲んでいない人よりも有意に血中アセトアルデヒド※濃度が抑えられた
との嬉しい報告が得られています。
※アセトアルデヒドは二日酔いの原因とされています。お酒を飲むとアルコールは肝臓で分解されてアセトアルデヒドになりますが、お酒の飲み過ぎで分解が追いつかなくなると過酸化水素が発生し、酸化ストレスの原因となります。アセトアルデヒドには発ガン性もあるとされています。国が推奨するお酒の適量は、日本酒なら1合、ワインなら200㎖です。
通常、ウコンのクルクミンは体内での消化吸収が悪いので黒コショウ成分であるピペリンなどを添加して用いられますが、ここではピペリンなしです。
では、最近物忘れが多くなった、とお嘆きの方に関心がありそうなアルツハイマー病に対してのウコン効果はどうなっているのでしょうか。
インドにはアルツハイマーが少ないのはウコン効果?
クルクミンはアルツハイマーの原因となるアミロイドβプラークの脳内蓄積を妨げるとの説があり、ウコンを多量に食べるインドではアルツハイマー患者は少ないなどと言われていますが、疑問視する研究が多いようです。
動物や容器内での研究は多いのですが、ヒトでの臨床試験結果がないからです。
しかし、上記ウコンと肝臓の件でご紹介した高吸収型クルクミンは、実際にヒトで検証されました。
ウコン効果とアルツハイマーの関連は?
臨床試験は、40名の非認知症中高年者(51~84歳)を2つのグループに分けて高吸収型クルクミンカプセルとプラセボカプセルを18か月間飲んでもらう、との方法で行われました。その結果、高吸収型クルクミンカプセルを摂ったグループから、以下の効果を確認しています。
- 脳の視床下部へのアミロイドベータ、タウタンパク質の結合が抑制される
- 認知機能の一部である記憶力(言語記憶、視覚記憶)の維持に役立つ
そして、この実験結果は米国での臨床試験登録(Clinicaltrials.gov)に登録され、その後査読付き論文として高齢者精神医学の雑誌にも掲載されました。
さて臨床試験で用いられたウコンは一般のウコンとは違い、高吸収型※クルクミンです。
※一般的にはそのままのウコンは消化吸収されにくい、という欠点がありますが、最近の研究では「消化されなくても腸内細菌を活性化」とする見解が一般的なため、その目的のために摂取してもいいかもしれません。
どうしてもウコンのクルクミンを効率的に摂取したい方には、高吸収型クルクミンがいいかもしれません。
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現状お酒をたくさん飲まないといけない時にだけセラクルミンを飲んでます。お酒を飲んでいる間は特に効果は見られませんが、翌朝は全く違います。頭痛、吐き気などがかなり抑えられます、普通に動けます。助かってます
高価なサプリはいらない人に、ウコン+黒コショウで効果アップ
ウコンに含まれるクルクミンは吸収されずにすぐに排出される傾向があります。その欠点をなくすため、黒コショウに含まれるピペリン※を組み合わせたところ、血清クルクミン濃度は1時間以内で高くなったとの事です。
ウコンと ピペリン(黒コショウより抽出したもの)を併用することで、ラットもヒトも摂取後1〜2時間でクルクミンの血中濃度が増加しています。
※ピペリンにはてんかん治療に使われる薬品の代謝にも影響する可能性があるので注意が必要です。

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まとめ:ウコンには効果だけではなく副作用があることも知っておきましょう
米国国立衛生研究所ではウコンに鉛などの重金属が含まれていることがあると注意を喚起していますが、国産のウコンはどうなのでしょうか。
そこで、日本でのウコンの重金属含有量についての記事を探したところ、静岡県が独自にウコンについての詳細な研究発表をしている記事が目につきました。
その記事によると、
- 市販のウコン食品(錠剤、ドリンク、お茶など)のクルクミン含有量を調べたところ、銘柄によっては約10倍の差があった
- 消化と吸収にも大きな差異が認められた
- 残留農薬や重金属は含まれていなかった
としています。
そして、ウコンサプリ等を買う前に成分含有量、消化と吸収などのチェックを怠らないように、と推奨しています。
クルクミンは病理学ではメリットがあるとされていますが、それはラボでは純粋で添加物のないクルクミンを用いているからです。しかし、市販のウコンサプリには様々な濃度のクルクミン、添加物で構成されていることもあるのでしっかりとラベルを見て、不審な場合は購入しないでください。
また、ウコンは抗凝固薬、抗血小板薬、制酸薬、および化学療法や血圧の薬を飲んでいる人には影響がある、とされています。妊娠、授乳中も避けた方がいいとの記述もあるのでご注意ください。
日本では二日酔い対策や肝臓デトックスに人気のウコンですが、アーユルヴェーダでは「適切な用量、適切な時間、健康的な食物と一緒に、個人の能力に応じて摂取」の制限付きであることをくれぐれもお忘れなく!
・Kathryn M. Nelson et al.「The Essential Medicinal Chemistry of Curcumin」ACS Publications
・「Ayurvedic Medicine: In Depth」National Center for Complementary and Integrative Health
・「Does turmeric really help protect us from cancer?」BBC
・Toshikazu YOSHIKAWA et al.「What Is Oxidative Stress?」日本医師会
・森本達也 ほか「食品成分による心不全治療の可能性」J-STAGE
・「Turmeric and dementia」Alzheimer’s Society
・Raphael P. Luber et al. 「Turmeric Induced Liver Injury: A Report of Two Cases」Hindawi