
日本酒を買う前に確認したい精米歩合。精米歩合とは磨かれた(削られた)酒造用の白米と、もともとの姿である玄米の重量の割合のことです。
今回は、
- 精米歩合とは何か
- 高精米歩合を実現した日本酒
- 99%の磨きを実現した驚異の日本酒
- 低精米歩合の日本酒
についてご説明します。
「精米歩合」ってどんな意味?
日本酒のラベルでこんな表記を見たことはありませんか?
原材料名 | 米(国産)、米麹(国産米) |
使用原料米 | 国産米100% |
精米歩合 | 50% |
アルコール分 | 15度 |
上から3番目に記載されている数値が精米歩合です。この精米歩合で、日本酒を作る際にどれだけお米が磨かれたかがわかるんです。
精米歩合の測り方は以下の通り。
白米重量÷玄米重量×100
例を挙げると、もともと100kgあった玄米を磨くことで精米後は50kgになった場合、精米歩合は50%になり、大吟醸のお酒と称して良い、というわけです。
一般家庭で食べるお米の精米歩合は92%と言われているので、サイズ的にも私たちが食べているお米の約半分に削られているのですね!
精米が作る日本酒の味
では、お米を削ることで日本酒にどのような影響があるのでしょうか。
玄米の表面は糠(果皮と種皮)で覆われており、その内側にはタンパク質と脂肪を含む胚乳があります。これらを残したまま日本酒を作ると、発酵が進みすぎることがあります。
また、タンパク質のアミノ酸や脂肪酸で雑味やひね香(日本酒を貯蔵している時に発生する不快な臭い)が発生します。
それを避けるために時間をかけてお米を磨くのです。磨かれたお米は仁丹の粒サイズになることも!
お米が小さな真珠のように輝くまで削って磨いて、デンプン質だけになったお米で作られた日本酒は、
- かぐわしい吟醸香が醸し出される
- 雑味やくどさのない、すっきりとした味わい
- 優れた旨みと酸味のバランス
などの特徴を持ちます。
日本酒造りには数多くの工程があるのですが、精米がいかに大切であるかがよくわかりますね!
精米歩合で分けられる特定名称酒の区分
精米歩合で分けた日本酒の名称は以下の表のようになります。
純米酒
アルコール無添加 |
精米歩合 |
本醸造酒
アルコール(10%以内)添加 |
純米大吟醸 | 50%以下 | 大吟醸 |
純米吟醸・特別純米 | 60%以下 | 吟醸・特別本醸造 |
70%以下 | 本醸造 | |
純米酒 | 精米歩合なし |
「国税庁:清酒の製法品質表示基準の概要」より筆者作成
上記は「特定名称酒」と呼ばれ、それら以外の日本酒は「普通酒」となります。
磨き上げた純米大吟醸の【精米にかける時間】
例えば、日本のみではなく海外でも評判の高い獺祭(だっさい)の純米大吟醸磨き二割三分。つまり23%の精米歩合です。これだけお米を磨くための日数は7日間。時間にして168時間かかります。
なぜこれだけの時間がかかるのか、というと摩擦熱によってお米が砕けないようにゆっくりと磨く必要があるからです。
お米の中心部には日本酒造りに必要なデンプン質「心白」という部分があります。心白は柔らかい部分で、スピードのある精米方法ではお米の中の水分が蒸発して心白が壊れる恐れがあります。
それを防ぐためにゆっくりと精米しますが、精米の難しさはそれだけではありません、
途中で精米機が止まったりすると米の温度が下がり、急激に蒸発する水分のせいでお米が壊れることもあるのです。
だから職人さんが徹夜をしてお米を見守る必要もあります。
驚きの高精米歩合!純米大吟醸おすすめ5選
獺祭が精米歩合23%の日本酒を作った時には話題になったものですが、現在では獺祭を超える高精米歩合の日本酒が続々と作られています。
ここでは獺祭の精米歩合を超え、味も香りの磨き抜かれた純米吟醸酒を精米歩合順にご紹介します。
日頃は普通酒を飲んでいても、特別な時のためにお家に常備しておいてはいかがでしょうか。
1. 袋吊り雫、精米歩合18%でおすすめ【蓬莱 超ドSの酒 純米大吟醸】渡辺酒造店
どきっとする命名の日本酒の特徴は「袋吊り雫」と「早瓶火入れ」。
袋吊り雫とは、木綿で造った酒袋にもろみを詰めた後、口を縛って吊るして濾す方法。圧力をかけないので重力だけが頼り。袋からは雫がタラタラと落ちてくる、時間も手間もかかる古式酒造法を用いています。
火入れも早瓶火入れ(しぼりたての鮮度を出来るだけ保つためタンクでの火入れは行わず、瓶に詰めた後に湯せんにかける事)、その後0℃で低温貯蔵。しぼりたてのフレッシュな味が生きており、米の風味を失わず、雑味もなく幅のあるふくよかな旨味を楽しめます。
原料米は爽やかな旨味を作る山田錦。
雫取りした蓬莱 超ドSの酒はとてもデリケートです。保管は必ず6度以下の冷蔵庫で!
分類 | 純米大吟醸 |
商品名読み方 | ほうらい ちょうどえすのさけ |
原料米 | 山田錦 |
精米歩合 | 18% |
アルコール度数 | 16度 |
日本酒度 | 0 |
酸度 | 1.1 |
内容量 | 720ml |
味 | やや辛口 |
おすすめの飲み方 | 冷蔵庫から出して10分後 |
蓬莱 超ドSの酒 純米大吟醸を詳しく見る |
2. 品評会で日本一をとった精米歩合8%もおすすめ【来福 純米大吟醸超精米】 来福酒造
原料米は茨城県で産出される酒造好適米「ひたち錦」。透明感がありすっきりした味わいを作るひたち錦は玄米が大粒、タンパク質量が少ない、心白(お米の中心にあるデンプン質)が大きいことが特徴です。
このひたち錦の特徴を生かして、水を一切加えていない純米大吟醸が来福 超精米。精米歩合が8%ということは、お米がビーズよりも小さく磨かれた、という事。だからこそ味わえる洗練された繊細な味とフルーティな吟醸香を楽しめます。
2016年には最高の日本酒を決める「SAKE COMPETITION 2016 Super Premium部門」で1位を獲得!
1度ならず何度も味わいたい日本酒の1本です。
分類 | 純米大吟醸 |
商品名読み方 | らいふく |
原料米 | ひたち錦 |
精米歩合 | 8% |
アルコール度数 | 17度 |
日本酒度 | 0 |
酸度 | 1.3 |
内容量 | 720ml |
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3. 工夫した麹で旨味たっぷり!精米歩合7.4%もおすすめ【亀の甲 寿亀 神韻 純米大吟醸】田中酒造場
酒米「亀の尾」を使い豊かな味わいの純米吟醸酒の磨きは、今年7.4。亀の尾は酒造適正米ではありますが、コシヒカリやササニシキを先祖とする幻のお米。出来上がった日本酒の風味はすがすがしく、品のある吟醸香が特徴とされています。
昨年は7.6%で話題となりましたが、今年はさらに7.4%にまで磨き上げ、さらに香り高くすっきりした辛口を実現。
精米歩合が低くなるほど味を薄く感じ、日本酒の個性がなくなってしまうというデメリットも、麹の製法を変えることでクリアしています。
9月15日に限定300本が出荷された寿亀神韻。気になる方は急いで購入しましょう!
分類 | 純米大吟醸 |
商品名読み方 | かめのこう ことぶきかめ しんいん |
原料米 | 亀の尾 |
精米歩合 | 7.4% |
アルコール度数 | 16〜17度 |
内容量 | 720ml |
味 | やや辛口 |
亀の甲 寿亀 神韻 純米大吟醸を詳しく見る |
4. 福山雅治さんおすすめの精米歩合7%【残響 SUPER7 純米大吟醸】新澤醸造店
日本酒好きのミュージシャンである福山雅治さんが名付けた残響。グラミー賞のレセプションパーティーで使用されたことでも有名です。
残響には磨き9%、8%がありますが、今回ご紹介するのは磨き7%の純米大吟醸。
香りはモモやメロンを思わせるほどフルーティ。味は繊細の一言に尽きますが、口に含んだ時にはお米のふっくらとした旨味も感じられ、上質の肉や海産物の味も引き立てます。
同じ蔵元の銘柄の一つである特別純米酒「伯楽星」はANA国際線ファーストクラスでサービスされています。
140年にわたる日本酒造りの技と味が国際的にも認められている蔵元が醸す「残響 SUPER7」。出荷本数は限られているので、早めに手に入れたいものです。
分類 | 純米大吟醸 |
商品名読み方 | ざんきょう すーぱーせぶん |
原料米 | 蔵の華 |
精米歩合 | 7% |
アルコール度数 | 16度 |
内容量 | 720ml |
残響 SUPER7 純米大吟醸を詳しく見る |
5. 究極の精米歩合1%純米大吟醸は超おすすめ【光明】楯の川酒造
日本では例のない精米歩合1%の純米大吟醸「光明」。2017年に発売されて僅か3ヶ月で完売したというニュースは、日本酒ファンにとって驚きと手にはいらなかった悔しさがあったのではないでしょうか。
1%に磨かれたお米のサイズは、数の子の卵の粒と同じ小ささ。究極の1%の日本酒を味わってみたかった人も多いはず…。
契約栽培米を自家精米し、1本1本の品質に違いが出ないように原料管理に最大の気を配ることで完成した磨き1%光明。その味わいは、フルーツで例えるなら酸味を弱めたライチのよう…。1800時間をかけて磨き抜いた光明には甘い爽やかさがあり、飲んでしばらくするとお米のふくいくとした旨味が口の中にふわっと広がります。
昨年2017年、光明は10月1日に発売されました。去年、手に入れることができなくて悔しかった人は急ぎましょう。世界限定150本販売の光明、ギリギリ間に合うかもしれませんよ♪
分類 | 純米大吟醸 |
商品名読み方 | こうみょう |
原料米 | 出羽燦々 |
精米歩合 | 1% |
アルコール度数 | 15度 |
日本酒度 | −2 |
酸度 | 1.4 |
内容量 | 720ml |
おすすめの飲み方 | 5℃に冷やして |
純米大吟醸 光明を詳しく見る |
216,000円超えも!大吟醸はなぜ高い
さて、極限までお米を削って作られた純米大吟醸をご紹介しましたが、価格は当然のことながら高めです。
「品評会に出すレベルの大吟醸とはいえ、なぜこんなに高価なの?」
とため息が出てしまいませんか?
北雪 大吟醸 YK35雫酒
チタンゴールド
216,000円 (1800ml)北雪酒造(新潟)
チタンゴールドの容器自体が194,250円もするらしい!?(笑) pic.twitter.com/rmoLo5wp1p— 古代進⚓WARP(◀︎市川自粛)‼️ (@newkodai_warp) October 29, 2015
確かに大吟醸は旨いが高い!
その中でも山田錦を精米歩合35%に磨いた「北雪 大吟醸 YK35 雫酒チタンゴールド」は純米大吟醸では有りませんが、日本で一番高額です。そのお値段はなんと216,000円!
精米歩合が50%以下の大吟醸が高価になる理由は、
・お米を磨くために、摩擦力で壊れない良質のお米(酒造好適米)を使わなくてはならない。だからお米代がかかる
※日本酒の価格の70%はお米にかかる費用です(*)。
・磨けば磨くほどお米のサイズは小さくなるので、使うお米の量がますます増える
・お米を磨くための精米時間が長くなり、電気代などのコストが大きくなる
などが挙げられます。
「北雪 大吟醸 YK35 雫酒チタンゴールド」は上記に加えて、日本酒を数十年熟成させることが可能な純チタン製容器を使っていることで、日本で最高のお値段となっているのです。
私には到底手が出ない金額の大吟醸ですが、熟成後の味には興味津々!
お金に余裕がある方は、こんな使い方はいかがでしょうか。
- 我が子が生まれた時に購入して結婚する時まで熟成。晴れての結婚式で皆の前で封を開けて味わう、なんておしゃれですよね。
- また結婚式で我が子に「北雪 大吟醸 YK35 雫酒チタンゴールド」をプレゼントして、「この日本酒を末長く二人で熟成させてください」なんて言うのもいいかも知れません!
まとめ:精米歩合数値が多い日本酒は雑味だらけなのか?
ここまで精米歩合数値が少ない大吟醸をご紹介してきました。では、精米歩合が70%以上の普通酒は飲むに値しないのでしょうか。
お米は削った方が雑味が少なくなるからこそ、精米歩合◯%と言う表示を頼りに日本酒を選んでいる人は多いものです。
精米歩合数値が少ない日本酒のすっきり味に慣れた舌には、パック酒や居酒屋で飲む普通酒はどっしりとした味、という印象があるかも知れません。
でも、酒質を上げる努力を惜しまず価格をリーズナブルに抑えて、晩酌にも料理の食中酒としても飲める「掘り出し物的な普通酒」を造っている蔵元も存在します。
例えば、徳島県の三芳菊酒造の「 WILD-SIDE 等外米無濾過生原酒袋吊り雫酒1800ml」の価格は2750円。パイナップルを思わせる甘酸っぱい飲み口でキレがあり、後味もすっきりしています。
驚いたことに原料米は山田錦。等級外米(等外米)を使っているので普通酒扱いです。精米歩合は70%。
そのほか人気が高い普通酒は超辛口の越乃景虎や普通酒の最高峰と言われる鴨鶴でも見つけることができます。
確かに精米歩合数値が少ない特定名称酒はスルリと喉を通る爽快さとキレがあります。でも、お米の個性がない、と感じる方には普通酒という選択もアリなのです。
次回の記事は、普通酒の魅力に迫ってみますので、ご高覧いただければ幸いです!
参考資料: