福島 酒 大七

B級グルメブームにより、喜多方ラーメンや会津のソースカツ丼。ふくしま餃子といったものが広く知られるようになり、高い評価を受けた福島県。

実は都道府県における日本酒の生産量では全国第7位と47都道府県の中でも、上位に食い込んでおり、その上で全国新酒鑑評会の金賞受賞数は、2012年から2017年まで5年連続で1位という快挙を成し遂げている日本酒どころです。

日本酒で一番おいしい市販酒を決める大会である「サケ・コンペティション」では、2017年に6部門中4部門で6点もの銘柄がGOLDを受賞しています。

蔵元の技を競う舞台と市販酒の舞台の両方で高い評価を受けているのが福島の日本酒。

そんな福島の日本酒の中でおすすめの日本酒をここではご紹介します。

福島の日本酒の歩み

福島 酒 飛露喜

福島の日本酒づくりの歴史は、400年前まで遡ります。江戸時代に酒造りのピークを迎えたという事実があり、会津藩領内だけでも300を超える酒蔵が存在したという記録が残っています。

酒造りのきっかけになったのは、江戸時代初期に名君として名高い星名正之公が、近江から杜氏を呼び寄せ酒造りをスタートさせたことから始まりました。

時を経て随分と淘汰されてしまったものの、酒造りの伝統は福島の酒造りのレベルを常に向上させており、現代においても淘汰はされてしまったものの、66もの蔵元が残り、高い品質の日本酒造りを続けている状況です。

福島の日本酒といっても、バラエティにひとくくりにできないことも福島の日本酒の大きな特徴といえます。

というのも、ふくしまは越後山脈と奥羽山脈に挟まれた雪深いエリアとしても知られている会津エリア。

阿武隈高地と奥羽山脈に挟まれた比較的に温暖な気候である中通り。そして阿武隈高地から太平洋側に位置している浜通りの3つのエリアに分かれています。

ただの地理的な違いではなく、この3エリアは気候も違えば文化も違っており、それぞれのエリアに存在する酒蔵が独自のコンセプトを持って日本酒造りを行っているのです。

それぞれのエリアがそれぞれの長所を活かした日本酒を造っており、福島の日本酒と一括りにできるほどの共通点はありません。

それこそが福島の日本酒づくりの歴史であり、福島の日本酒がバラエティに富んでいる理由なのです。

福島の日本酒の特徴

福島 酒 大七

新潟、長野、兵庫に次ぐ66もの酒蔵を有する福島ですが、特徴は歩みの部分でも触れたとおり、3つの大きなエリアに分かれ、文化や気候も違っていることから、一概には表現できません。

原料である米の風味が口いっぱいに広がるような旨味の強い日本酒もあれば、円熟してまろやかな表現をする日本酒も存在していますし、切れ味の鋭いシャープなのどごしを持つ日本酒も存在しています。

このため、福島の日本酒の特徴は、バラエティの豊富さと言わざるを得ません。

一言では語り切れず、一括りにすることができないことこそ、福島の日本酒の特徴といえるのです。

とはいえ3つのエリアの共通点が全くないとは言えません。どのエリアも酒造りに適した条件を備えており、ワインの世界でいうところのフランスに似ています。

フランスでは、ボルドー、ブルゴーニュといった地方によっての特徴がありますが、福島は日本酒の世界で同じような特徴を持っており、世界的な名醸造地であり、その品質はハイレベルといえます。

日本酒に食、そして文化に恵まれた特徴を持っているのが福島という土地なのです。

福島でおすすめの日本酒7選

福島 酒 奈良萬

飛露喜 特別純米無濾過生原酒

淡麗辛口一辺倒だった当時の日本酒業界において、真逆のジャンルである無濾過生原酒という新しいジャンルを切り開いたのが福島を代表とする廣木酒造本店です。

江戸時代中期に創業し、地元密着を掲げて経営をしていた酒蔵でしたが、杜氏の引退と9代目の誕生で経営方針を一新したことから生まれたお酒が飛露喜です。

飛露喜が売れに売れ、全国の日本酒ファンに生原酒という新しいジャンルに目覚めさせたというのは、日本酒業界では非常に有名な話。

無濾過生原酒というのは、搾ったままの原酒に対して水を加えることなく、ろ過や熱処理といった加工を一切行わず、生のままに瓶詰めをした日本酒ということです。

濃厚な原料の米の旨みとコクを保ちつつも、搾りたてを実感できるフレッシュな味わいが口内に広がる感覚は、好きな人ならクセになる体験といえます。

特別純米の生詰は、月一度に店頭で販売される恒例行事であり、毎月日本酒ファンが行列を作るほどに福島では名物の光景となったことも、飛露喜の名前を広めたきっかけになりました。

メーカー 合資会社 廣木酒造本店
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大七  生酛(きもと)純米

宝暦2年(1752年)という非常に歴史のある大七酒造が生み出したフラッグシップ商品である大七。

全商品が生酛づくりという長年の伝統を守り続けている酒蔵です。生酛づくりとは、現存している酒造りの手法の中でも、最も伝統的とされる古い手法であり、大変な労力を必要とする酒造りになります。

手間が掛かるため、時代の変化とともにさまざまな手法が誕生し、山廃仕込みや速醸元などが生まれました。

しかし、新しい技術が開発されるにつれ、古き良き伝統的な技法が見直され、手間暇は掛かるものの、米本来の魅力を十分に発揮できる技法として見直され、生酛づくりに立ち返る酒蔵も増えてきています。

大七酒造独自の超扁平精米手法で磨かれた精米でしか実現できないとされる米の豊かな旨味と深いコク。

酸味と辛みが絶妙に絡むバランスの良さとクリーミーさは福島を代表する貫禄の一本といえるでしょう。

生酛づくり特有のクリーム系の香と余韻に心地よい旨味と酸味を感じる仕上がりになっています。

メーカー 大七酒造株式会社
ホームページ https://www.daishichi.com/
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奈良萬 純米中垂れ無濾過生原酒

原料は酒造好適米として高評価されている地元産の五百万石を使用しており、酵母も福島で開発されたうつくしま酵母を使用しており、まさに地元産にこだわって造られた日本酒が奈良萬 純米中垂れ無濾過生原酒です。

マスカットを思わせる柑橘系のフルーツのような香りと、濃醇でありながらまったりとした口当たりが特徴の一本に仕上がっています。

口に含むと口いっぱいに米の旨みと風味が広がり、まろやかなのど越しを感じた後に敢えて残している苦みが襲ってくる。

奈良出身の蔵元の祖先である萬次郎さんがいつしか奈良萬と略されて呼ばれたことから、一見すると関係ない福島の日本酒の銘柄として名付けられているというユニークなエピソードも持っている日本酒です。

蔵元は喜多方ラーメンで有名な喜多方に立地しており、明治10年(1877年)に創業した夢心酒造です。

メーカー 夢心酒造株式会社
ホームページ http://www.yumegokoro.com/
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寫樂(しゃらく)純愛仕込 純米吟醸 初しぼり

昭和30年(1955年)に創業した宮泉銘醸は、米、酒、人を愛し、誰からも愛される酒を目指すというコンセプトの元、真摯に日本酒づくりを行っている酒蔵です。

もともとは宮泉というフラッグシップ商品を製造・販売していましたが、同じ会津若松エリアに立地していた東山酒造が廃業に伴い、蔵元の意思を引き継いで、寫樂の銘柄を引き継いだという歴史があります。

市販酒で一番おいしい日本酒を決める「サケ・コンペティション2014」において純米酒・純米吟醸酒部門で堂々のナンバーワンを獲得した一本。

純愛仕込みというのは、特別な仕込みではなく、宮泉酒造のコンセプトである誰からも愛される酒というものから名付けられた商品ネーミングになります。

純米吟醸初しぼりは、落ち着いた吟醸香が上り立ち、口に入れると果実を思わせるような爽やかで甘い風味が広がります。

香りも味わいも濃厚でありながらキレが良く、絶妙なバランスを持った福島の日本酒です。

メーカー 宮泉銘醸株式会社
ホームページ http://www.miyaizumi.co.jp/
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末廣 純米吟醸

福島の日本酒ではスタンダードな福島産の五百万石を原料に使用しており、フルーティーでナチュラルな香りを持った日本酒になります。

まろやかな酸味の中に微妙な甘みを感じるバランスの良い味わいになっており、すべるように通過するのど越しが心地よさを感じさせる余韻をもたらしてくれます。

末廣酒造は嘉永3年(1850年)創業の超老舗蔵元ですが、全国新酒鑑評会では20回以上の金賞受賞歴がある技術力の高い蔵元として有名です。

酒蔵の社会科見学なども積極的に行っており、スイーツがおいしいと評判の酒造カフェが評判になっていることでも話題になっています。

メーカー 末廣酒造株式会社
ホームページ https://www.sake-suehiro.jp/
Amazon Amazon末廣はこちら

会津娘 純米

福島の地元民の中で、日本酒の定番といえば、会津娘と返ってくるほどにメジャーな日本酒が会津娘です。

会津娘の中でも日本酒をあまり知らない方でも会津娘のポテンシャルを感じられるのが純米です。

会津産の五百万石を吟醸酒の条件をクリアした60%ほどにも磨ききったのが会津娘 純米です。

吟醸酒ではありませんから、独特の吟醸香のようなものはなく、香織は控えめになっており、口当たりも滑らかな状態に仕上がっています。

造り込みましたといった感じがなく素朴でありながら、飾らない日本酒といった表現がぴったりの日本酒に仕上がっています。

土産土法を守った酒造りをモットーにしている高橋庄作酒造は明治初期に創業していますが、会津の魂を受け継ぐ仁の心を持った酒蔵といえます。

幕末から再三の戦火に襲われ、消失と再生を繰り返しながらも、酒造りをやめることのない高橋庄作酒造店は、思わず肩入れしたくなる酒造店といえるでしょう。

メーカー 高橋庄作酒造店
ホームページ http://aizumusume.a.la9.jp/

槽搾り 純米火入れ オレンジの天明

甘味とうまみ、そして酸味という日本酒の重要三大味覚のバランスを考えて、銘柄単位ではなく一本の個性を大事にして醸している食中酒の最高峰とも呼べるのが天明です。

柔らかくみずみずしい飲み口でありながら、南洋のフルーツをイメージできるような香りをまとった一本。

槽搾り(ふねしぼり)というのは、搾り方ひとつで味わいが変わるとされている日本酒づくりにおいて重要とされる搾り方に槽を利用するやり方です。

木材などで造られた細く長い酒槽に醪(もろみ)を入れた酒袋を何層にも重ねて押し蓋のような状態にして絞り出す方法を槽搾りといいますが、そうやって造られたのが槽搾り 純米火入れ オレンジの天明です。

搾りたてのフレッシュさと、ピュアでほどよく感じられる甘さ、更に若々しい酸味がミックスされた透明感溢れる日本酒になります。

メーカー 曙酒造合資会社
ホームページ https://akebono-syuzou.com/
Amazon Amazonオレンジの天明

福島の日本酒の入手方法は

スマホを使う女性

福島の日本酒の入手方法ですが、一般的な酒卸業者や酒販店の場合には、限定商品などの入手は難しいといえます。

購入を考える前に試飲をしたいと考えるのは当然ですが、1本1本取り寄せていたら、時間も労力もコストもかかって仕方がありません。

そこで便利なのは、福島の日本酒を置いている飲食店などの情報を網羅している「福の酒マップ」というサイトを参考にすることです。

福島の日本酒を置いている飲食店を検索できるだけではなく、ソムリエの田崎真也氏だったり、酒場放浪記で有名な吉田類氏のコメントなども紹介されています。

気に入った銘柄をまとめて試飲できる酒蔵の検索や直取引で仕入れる方法なども紹介されており、非常に便利です。

高品質でバリエーションの多い福島の日本酒をお試しあれ

福島の日本酒を飲んでみようと話す男性

福島県は酒蔵の数も多く、大きく分けられる3エリアによって、気候も文化も異なるため、バリエーションが豊富な日本酒を味わうことができるエリアです。

特に食中酒としての評価が高い銘柄が多く、その品質は全国新酒鑑評会での金賞受賞数やサケ・コンペティション受賞歴などを見ても国内最高レベルにあるといえます。

独特の技法を使ったり、地元産の材料にこだわったり、老舗酒蔵が多いにも関わらず、新しい技術開発などに積極的に取り組む隠れた日本酒大国福島の日本酒を是非試してみてはいかがでしょうか。