大阪 道頓堀

江戸時代には「天下の台所」とも呼ばれ、日本全国から各地のおいしいものが集まったという歴史を持つ「食の街」大阪。

おいしい食べ物がある場所には、必ずおいしい日本酒も存在していて当然ですね。

酒づくりの本場である兵庫と京都を除き、関西地方は日本酒造りが初めて公式に行われたという記録が残っている日本酒の原点である奈良県を有していることから、古くから日本酒造りに携わっており、伝統に基づいた酒造りを行っている地域ともいえます。

日本酒は江戸時代に入り、やっと庶民のものという身近な存在になりましたが、それ以前までは神社に奉納するために製造されたいたことが多く、古い神社仏閣を有する関西エリアでは、神社の古文書に残っていた製法を復活させて製造している蔵元も見られる他とか一線を画した地域でもあるのです。

食い倒れの街、大阪の日本酒の中でもおすすめの7本をご紹介します。

大阪の日本酒のあゆみ

大阪の酒蔵

日本酒は高度経済成長期からビールやワインといった他のアルコール飲料に押され、人気に翳りを見せた時代がありました。

しかし地酒が全国各地で造られ、大阪も例に漏れず全国的に評価の高い日本酒造りに取り組んでいる現状です。

大阪は江戸時代前期である元禄の頃には、全国有数の酒の生産地として知られていました。

大阪の酒造りのスタートは、天野山金剛寺と言われており、室町時代に公家や武家、僧侶などの支配者階級に対して天野酒の名称で納めていたことが始まりとされています。

後に戦国時代を制した豊臣秀吉も、大坂に居を構えてこの天野酒をこよなく愛したという逸話も残っています。

天野酒に関しては、江戸時代中期ごろになると造られなくなったものの、近年とある醸造家が復活をさせ、現代では大阪を代表とする銘柄となっています。

室町時代は京都や奈良といったところが高級酒を造る場所として認められており、それ以外の地域で造られた酒は「田舎酒」と呼ばれて格下に扱われていました。

その田舎酒の中でも大阪で人気を博したのが富田(現高槻市)や池田の酒。元禄の世になると、奈良の和州南都の酒が第一となり、それに次いで銘酒と評価されたのが伊丹、池田、富田などの「摂津の酒」と当時の記録に残っています。

江戸時代に入り、浪花の街が経済的にも政治的にもその地位を確立すると、食の好みの変化や輸送の便宜なども重なって池田や伊丹の酒が全盛期を迎えます。

特に伊丹の酒は伊丹諸白と呼ばれ、江戸積酒として発展をしていき、江戸の街で大好評となりました。

大阪の日本酒の特徴

大阪 道頓堀

食文化に合わせて発展をしてきた大阪の日本酒は、食中酒など料理に合わせて活きる酒という特徴があります。

というのも、大阪は全国でも有名な酒どころとして知られる灘、伏見に挟まれていおるため、日本酒の産地としてのイメージが薄く、下り酒の製造を主にして灘と伏見とでは別の路線を辿った経緯があるからです。

濃醇辛口の傾向が強くみられる灘(兵庫の酒)、濃醇甘口の傾向が強くみられる伏見(京都)の酒とは違い、すっきりとした飲み口の中に確かな主張を感じられる淡麗旨口と呼ばれる特徴を持っています。

このタイプの日本酒は、料理をさらに美味しくするとともに、合わせる料理によっていっそう旨さが際立つ日本酒が大阪の日本酒の特徴です。

大阪でおすすめの日本酒7選

大阪 道頓堀

秋鹿 入魂之一滴 純米大吟醸 無濾過雫酒

秋鹿といえば、大阪を代表とする銘柄であり、全国の日本酒ファンにも人気が高い日本酒になります。

米作りから酒造りを行っているいわゆる「シャトー型酒造」として知られている秋鹿酒造が蔵元です。

しかも原料として利用する酒米は、無農薬栽培にこだわって栽培されており、純米酒にこだわりを持って酒造りを行っています。

入魂之一滴 純米大吟醸は、通常は圧をかけて搾りだすという作業をして瓶詰めするのですが、雫採りという方法で、醪の自重だけで滴ってくる日本酒を瓶詰めにするといった非常に手間のかかる製法で造られています。

香は穏やかで口に含むと米の旨みをしっかりと感じられる一本となっており、入魂の一滴という名前に恥じることのない高い酒質を誇る逸品です。

焼き魚や刺身といった魚料理にマッチする食中酒として人気の高い純米酒です。

自分の飲みたいお酒を自分で栽培したお米で作るというシンプルながら非常に困難なコンセプトを掲げる秋鹿酒造。

生産量がもともと少ないため、なかなか目にする機会はないと思いますが、見つけたら即買いの一本といえるでしょう。

メーカー 秋鹿酒造 有限会社
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呉春 特吟

兵庫県の灘が酒どころとして認知されるまで、酒どころの名を欲しいままにしていたのは実は大阪の池田でした。その池田に立地して、当時の伝統を重んじて造られた日本酒が呉春です。

呉春は日本を代表する作家、谷崎潤一郎が最も愛した酒としても有名です。蔵元は江戸中期の元禄年間の創業であり、普通酒、本醸造酒、特別吟醸酒の3種類の製造と、9月~12月のひやおろし、しぼりたての大吟醸酒のみを製造している蔵元です。

中でも特吟は最上級の赤磐雄町を50%精米し、じっくりと低温醗酵させて米の旨みを十分に引き出した吟醸酒になります。

瓶詰めした後低温貯蔵庫でじっくりと寝かせてから出荷をする日本酒なので、熟成の利いた深いコクを感じるバランスの取れた一本に仕上がっています。

メーカー 呉春株式会社
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利休梅 静香 純米吟醸

蔵元は文政9年(1826年)に創業の大門酒造です。若い頃に世界中を放浪した経験があるという変わり種の6代目蔵元が自ら杜氏を務めており、利休梅は清水ケ谷の湧き水を仕込み水に使用し、兵庫県産の山田錦を100%使用した日本酒です。

静香 純米吟醸は、柔らかな吟醸香を持ちながら、すっきりとしたシャープな味わいを持つ純米吟醸酒に仕上がっています。

どんな食事にも合う食中酒として高い評価を受けており、合わせる料理によって姿を変える変幻自在な一本ともいえるでしょう。

交野が原の豊かな自然は酒造りに最適な地として知られており、その自然の美しさはその昔、枕草子が風情を称えて歌を詠ったほどです。

メーカー 大門酒造株式会社
ホームページ https://www.daimonbrewery.com/index.php

天野酒 純米大吟醸 天游

蔵元は1718年創業の西條合資会社で、300年もの歴史を持つ蔵元です。自家精米した酒造好適米を使用しており、南部杜氏が伝統の技を守り醸しています。

前述に紹介したとおり、その昔、豊臣秀吉も愛飲したと言われる伝説の天野酒を復活させた蔵元でもあります。

通常の日本酒の他にも、僧房酒の復刻版の製造や、バウムクーヘン、葛餅といったスイーツの製造販売も行っているやり手の蔵元です。

最高級の特S山田錦を50%まで丹念に磨き上げ、徹底的に米の旨みを追求したバランスの良い純米大吟醸酒が天游になります。

爽やかな香りを持ち、さっぱりとした後味でありながらも、蔵の持ち味であるコクの深さはしっかりと残すという絶妙な仕事が詰まった一本です。

メーカー 西條合資会社
ホームページ http://amanosake.com/
Amazon Amazon天游 天野酒はこちら

三輪福 純米大吟醸

蔵元は文政元年(1818年)という歴史のあるだんじりで有名な岸和田に立地している井坂酒造場です。

山田錦を45%にまで磨き上げ、グラスに注いだ時にも、口に含んだ時にも極上の吟醸香を放つ丁寧に仕込みが施された純米大吟醸酒が三輪福 純米大吟醸になります。

銘柄の由来は、酒の神様として有名な奈良県の三輪神社から特別に、井坂酒造場が「三輪」の名前を使用することを許されており、大変縁起の良い名前だからと名付けられました。

昔ながらの手作りにこだわって酒本来の米の旨みを大切にしている蔵元であり、他にも「だんじり」という銘柄を取り扱っており、三輪福とともに井坂酒造場の看板商品となっています。

メーカー 井坂酒造場
ホームページ なし

國乃長 大吟醸

蔵元は文政5年(1822年)創業の壽酒造株式会社で、摂津富田の伝統の酒造りを守る蔵元でもあります。

決して大きな蔵元ではありませんが、國乃長を筆頭とする清酒はもちろん、地ビールや焼酎の製造も行っています。

伝統を真持ばかりではなく、独自に開発した新技術と摂津富田の伝統技術を組み合わせることで、新しい酒造りを積極的に行っている大阪でも注目の蔵元といえるでしょう。

國乃長 大吟醸は、兵庫県産山田錦を50%にまで磨き上げて仕込んだ大吟醸酒になります。

熟成したまろやかでありながら深い味わいを持つ一本に仕上がっており、和食なら煮物や焼き物と相性がバツグンとされ、懐石料理屋を筆頭に老舗料亭に好かれる日本酒です。

マリネやチーズといった食べ物との相性も良く、金と黒で構成されたラベルデザインも高級感を感じさせるため、贈り物としても最適です。

メーカー 壽酒造株式会社
ホームページ http://www.kuninocho.jp/
Amazon Amazon國乃長はこちら

片野桜 山廃仕込純米酒 無濾過生原酒

500石という小さな酒蔵ではありますが、江戸時代末期に創業し、生駒山系の伏流水と南部杜氏と蔵人が一体となって酒造りを行っている山野酒造が蔵元です。

日本酒の約8割は特定名所酒であり、その内の4割が原酒という原酒にこだわりを持って酒造りを行っている蔵元の一本が片野桜 山廃仕込純米酒 無濾過生原酒になります。

平均精米歩合は57%と米を磨きあげ、高品質な日本酒を最良の状態で消費者の元に届けることをモットーとする蔵元が魂を込めて醸する一本は、米の旨みとその後に追いかけてくる酸味が絶妙なバランスが取れていると評価されています。

生原酒は一般的な日本酒とは違い、もろみを搾った後に割水は加えません。このためアルコール分が高いままになっており、一般的な飲み方としては氷を入れてロックで楽しんだり、ハイボールにしたり、ライムやジュースなどで割ったりして楽しむ方が多くいらっしゃいます。

しかしこの片野桜 山廃仕込純米酒 無濾過生原酒は、ぬる燗でも美味しく飲める一本として高い評価を受けています。

全国新酒鑑評会では10年で7度の金賞を受賞しており、小規模な蔵元ながら全国的に注目が集まる大阪を代表する蔵元になっているといえるでしょう。

メーカー 山野酒造株式会社
ホームページ http://katanosakura.com/

大阪の日本酒の入手方法は

大阪のお好み焼き

大阪の日本酒を入手する方法としては、欲しい銘柄が決まっているのであれば、インターネットで検索をすれば、取り扱っている酒問屋の通販サイトなどで購入することが可能です。

生産量自体が少ない日本酒の場合には、誰もが知っているような通販サイトでは、見つけられたとしてもプレミア価格での購入を迫られることになります。

定価で購入したいという場合には、飲食店卸を行っている酒販店を利用したり、多さkの日本酒を扱っている飲食店を紹介しているウェブサイトなどを利用して、試飲がてらに食事を楽しみに行くこともおすすめの方法です。

大阪の日本酒は、兵庫や京都という全国的にメジャーな酒どころが近場に存在しているため、流通量としてはそこまで全国に広がっているわけではありません。

このため蔵元も地元などの信頼のおける飲食店や卸問屋にしか卸さないといった経営方針を取っていることも珍しくありませんので、地道に探していくことをおすすめします。

また食中酒として高いクオリティを持っているため、個人で購入をして自宅で楽しむというよりも、ベストな料理を提供してくれる飲食店で楽しむ方が、大阪の日本酒が持っているポテンシャルを十分に堪能することができるでしょう。

食中酒としてベストな大阪の日本酒を美味しいグルメとともに

大阪の日本酒を美味しいグルメとともに、と話す女性

兵庫の灘と、京都の伏見という日本を代表する酒どころに挟まれた土地である大阪。

全国的有名な蔵元は少ないですし、小規模な蔵元が多いエリアですが、富田、池田といった歴史のある酒どころには現在も古くからの伝統を重んじて醸する立派な蔵元がこだわりを持って酒造りに取り組んでいます。

江戸時代は天下の台所と呼ばれ、現在でも食い倒れの街として食に関しての要求レベルが高い街には、それに見合った美味しい酒が沢山集まっています。

最高の食事をよりおいしくしてくれる特徴を持つ大阪の日本酒を最高の料理とともに是非堪能してみてはいかがでしょうか。