
「きょうかい酵母」や「蔵付き酵母」が使われることが多い日本酒。しかし、それら以外にもお米をアルコール発酵させる酵母が自然界に存在します。それが「花酵母」です。
花酵母は東京農業大学が花の蜜からの酵母分離に成功して以来、現在では30を超える花酵母が日本酒造りに利用されています。
花酵母は発酵能力に優れ、味・香りとも華やかで旨みのある個性的な日本酒を作り出しますが、それ以上に特徴的なのが「花言葉」を持っていること。
多くの蔵が使っているきょうかい系酵母や蔵付き酵母などでは表せない柔らかなイメージがあるので、花束代わりに花酵母日本酒をプレゼントするのもステキです。
また、花には「花の日」があるので、それぞれの花の日に生まれた方へのプレゼントにも最適です。
花より団子、という言葉もありますが、「花より日本酒派」の方にも喜ばれるに違いありません。
今回は、
- 花酵母とは
- 花酵母の特徴
- 花酵母の種類
- 各種花酵母を使った日本酒銘柄
をご紹介します。
日本酒用花酵母発見の第一声「すげぇ酵母が花から取れた!」
東京農業大学短期大学部には「醸造学科・酒類学研究室」があります。
そこで1998年に中田久保(なかた・ひさやす)名誉教授※が、初めて花から酵母の分離に成功されました。その後、様々な花の酵母を使った日本酒は、30以上の酒造メーカーで醸造されています。
※中田名誉教授は日本酒蔵元のご出身。また、黒糖からも黒糖酵母を分離され、泡盛業界にも貢献されています。
原田醸造所の蔵元が中田教授から連絡が会ったのは平成13年。「すげぇ酵母が花から取れた!使ってみないか!」と言われて、研究室へ急ぎ、そこで花酵母を使った日本酒を試飲。途端に体に電流が走ったのです。
日本酒販売量が低迷していて、酒造全体が元気のない時期に「日本酒にはまだこれだけの可能性が残っていたのか」と感激し、その後はアベリアやベゴニアなどの花酵母で、日々新しい日本酒にチャレンジしています。
原田醸造所だけではありません。現在では多くの酒造が花酵母に新たな日本酒の可能性を見出しているのです。
『花酵母日本酒』の特徴
お米がアルコール発酵するためには酵母の力が必要です。
現在の日本酒造りで使われる酵母の主流は日本醸造協会のきょうかい系酵母ですが、中田教授が自然界に存在する酵母を分離することに成功して以来、それぞれの花から分離した花酵母は各々が個性ある香りと味わいを創り出します。
そんな花酵母を分離するためには困難も伴います。
①花の命は短い
一般的に花は開花してから散るまでの期間が短いので、酵母にとっては安定して生育できる場所とは言えません。だから、花から酵母を分離培養できたとしても、それはラッキーとしか言いようがないほど難しいこととされてきました。
②花酵母はもろみに弱い
花酵母をうまく培養して日本酒発酵に用いようとしても、花酵母は麹が作り出す酸に弱いので、発酵力も弱くなる傾向があります。
③花酵母の特徴を出すための手間がかかる
酸に弱い花酵母の持ち味を十分に発揮してもらうためには、香りを逃さないため低温でゆっくりと時間をかけて発酵させる、などの時間や労力が必要になります。
上記の条件をクリアして、やっと出来上がる花酵母日本酒ですが、従来の酵母で造られた日本酒とはどのような違いがあるのでしょうか。
花酵母日本酒のメリット
花酵母のネガティブな特徴を挙げましたが、花酵母日本酒には、今までの日本酒にはない素晴らしい特徴があります。
酒造側のメリット
- 花酵母を使って発酵させることで、酵母の特徴が明確に日本酒に現れる
- 他の酵母を使った日本酒とは個別化された味わいの日本酒ができる
- 蔵としての特性を表せる
最近では、すべての日本酒を花酵母で造る「全量花酵母蔵※」も存在しています。
※原田酒造場(岐阜)、天吹(あまぶき)酒造(佐賀)、西飯田酒造店(長野)。全量ではありませんが、花酵母日本酒を造っている酒造は30蔵以上になります。
日本酒ファン側のメリット
- 花酵母で造られた日本酒は個性が明確に現れるので、料理に合わせて最適な日本酒を選べる
- 食べたい料理との最高のマリアージュで食事を楽しむことができる
『日本酒の酵母の種類』についてはこちら↓
主な花酵母の種類と特徴一覧表
下記の表に、各花酵母が持つ香りと味わいの特徴をまとめました。
- 🍎🍈はりんごやメロンのような(甘い香り:カプロン酸エチル)の香りの日本酒
- 🍌はバナナのような香り(爽やかな香り:酢酸イソアミル)の日本酒
- 🍏はリンゴ酸をたっぷり含んでいる日本酒
※「味わい」は平均的なものです。例外もあるので、その場合はご容赦下さい。
花酵母 | 香りと酸 | 味わい |
アベリア | 🍎🍈🍏 | 中口から辛口 |
イチゴ | 🍏 | 中口からやや甘口 |
オシロイバナ | 🍎🍈 | 中口からやや甘口 |
月下美人 | 🍏 | 中口からやや甘口 |
シャクナゲ | 🍌 | 大辛口 |
なでしこ | 🍎🍈 | 中口からやや甘口 |
ひまわり | 🍎🍈🍌🍏 | 中口から辛口 |
ベゴニア | 🍌 | 辛口 |
マリーゴールド | 🍏 | 辛口 |
りんご | 🍎🍈🍏 | やや辛口 |
ローズバイン(ツルばら) | 🍎🍌 | 辛口 |
以上の花酵母以外にも、コスモス、キンモクセイ、菊、桜、カトレア、ツツジ、椿、ハマナス、ナデシコ、芙蓉、白山風露、紫陽花、ダリア、りんどう、フジの花など、続々花酵母を発見中♪
主な花酵母日本酒の「花の日」と「花言葉」
花はそれぞれ「花の日」や「花言葉」を持っています。
その花の酵母を使った日本酒を誕生日プレゼントにしたり、相手に伝えたい花言葉を持った花酵母日本酒でご自分の想いを伝えてはいかがでしょうか。
お中元やお歳暮、慶事などの贈答品に使われる事が多い日本酒ですが、花酵母日本酒がせっかく登場したのですから、新しい日本酒コミュニケーションライフを始めましょう!
日本酒に使われている花酵母のすべてではありませんが、有名な花酵母日本酒の花の日、花言葉、味の特徴と銘柄をご紹介します。
① 花酵母「ハマナス」:あなたに惹かれています
- 花酵母ハマナスの花の日:7月5日、9月7日
- 花酵母ハマナスの花言葉:あなたの魅力にひかれます、悲しいほどの美しさ
- 花酵母ハマナスの味わい:華やかな花とわずかなパイナップルの香り。柔らかくてスッキリした甘みとコク
皇后陛下雅子さま(55)ゆかりの新潟県村上市の大洋酒造では、雅子様の御即位を記念し、皇后さまのお印(しるし)として、村上市の市の花「ハマナス」の酵母を使って約2年がかりで慶祝酒「雪華光(せっかこう)大洋盛」を完成させています。
女性にも飲みやすく、さらりとした透明感のある味わいとのことで、予約が殺到して在庫が「完売」状態となった時期もあったほどの大人気の花酵母日本酒です。
再販の可能性もあるので、新皇后様をお祝いしつつお口に花を咲かせましょう♪
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『雪華光 大洋盛』についてはこちら
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② 花酵母「雪椿」:いつもあなたのことを見守っています
- 花酵母雪椿の花の日:1月2日、1月27日
- 花酵母雪椿の花言葉:慎み深さ、控えめな愛情
- 花酵母雪椿の味わい:爽やかでフレッシュな香り、やや甘口ながらスッキリした酸味
新潟県の県の木に指定されている雪椿。
耐寒性に優れているとは言え、豪雪地帯でじっと寒さに耐え忍びながら鮮やかに花を咲かせる雪椿には、誰もがはっと目を奪われる美しさがあります。
雪椿には「謙虚な美徳」という花言葉もあるので、 縁の下の力持ち的な、人の目につかないけれど人のため会社のために苦労や努力をする人にプレゼントしてはいかがでしょうか。きっと「自分のことをわかっていてくれたのだな」と感激されます。
雪椿の花酵母を使った「越乃雪椿 純米吟醸」は「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2018」で金賞を受賞しています。しかも、2012〜2018年まで7年連続で受賞もしている銘柄!旨口白ワインのようなスッキリ感とさらりとした飲みごごちで、きっと皆さんの「お気に入りの一本」になることでしょう。
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『越乃雪椿 純米吟醸 花』についてはこちら
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③ 花酵母「さくら(ソメイヨシノ)」:あなたって本当に優雅で美しい!
- 花酵母サクラの花の日:3月21日、4月1日
- 花酵母サクラの花言葉:純潔、優れた美人、精神美
- 花酵母サクラの味わい:ほんのりとした華やかな香り
秋田県の美郷町で春の訪れを告げる吉野桜。
日本人がもっとも好むとされる桜の花から採取した花酵母で造った純米大吟醸はとってもフルーティー!見かけとは違ってほんのりとした旨味まで持ち合わせています。
柔らかなピンクのデザインボトルはスタイリッシュでクールな印象。スッキリ淡麗な味わいだから、いつも颯爽と仕事をこなす憧れの女性へのプレゼントにもぴったりです。
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『奥清水 純米大吟醸 桜酵母 ミサトヨシノデザインボトル』についてはこちら
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④ 花酵母「アベリア」:あなたは強運の持ち主。だからきっと上手くいく!
- 花酵母アベリアの花の日:7月7日
- 花酵母アベリアの花言葉:強運
- 花酵母アベリアの味わい:バランスある味わいとワインを思わせる甘い香り
女の子にプレゼントしたら喜ばれること請け合いの、かわいいボトルデザインの日本酒。彼には「明日のプレゼンはきっと大丈夫だよ」の背中押し代わりにも使えそう!
落ち込んだ時「頑張れ、わたし」と自分を応援する、あなた自身へのプレゼントにもどうぞ。
「久寿玉」は甘い香りながら最後にはキレの良さもある日本酒。金箔がキラッと光っている日本酒で、最強の自分になれそうな予感がしてきます。
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『花酵母アベリアの日本酒』についてはこちら
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⑤ 花酵母「イチゴ」:あなたならきっとステキな家庭が築けるよ!
- 花酵母イチゴの花の日:3月31日、4月13日
- 花酵母イチゴの花言葉:幸福な家庭
- 花酵母イチゴの味わい:イチゴそのもの香り、適度なリンゴ酸味
イチゴ生産量日本一の栃木県にある白相酒造は、花酵母イチゴで日本酒を醸しています。
特徴は「あ、イチゴだ」とすぐにわかるようにうっすらと赤く色づいている事。
しかし、これはポリフェノールの一種であるアントシアニンの為せる技。抗酸化作用で活性酸素を取り除いてくれて、美味しい上にアンチエイジング効果も期待できます。
フルーティーでワインみたいな赤い日本酒は、美意識高い女子へのプレゼントにも◎
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『花酵母イチゴの日本酒』についてはこちら
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⑥ 花酵母「オシロイバナ」:臆病な私だけど思い切って告白しちゃいます
- 花酵母オシロイバナの花の日:7月28日、8月1日、8月2日、8月23日
- 花酵母オシロイバナの花言葉:恋を疑う、臆病、怖がり
- 花酵母オシロイバナの味わい:フルフレーバーで柔らかな味わいと爽やかな酸味でさっぱり味
私たちは「赤い糸」で繋がれている、なんて自分から言うのは勇気が要りますよね。でも、笑四季の「赤い糸」ならすんなりとお相手に渡せるのでは?
そんなあなたはちっとも臆病な人ではないでしょうが、恥ずかしげに渡してみましょう。
艶やかな立香と印象に残る甘さをもつ「赤い糸」は、あなたとお相手の絆をもっと深めてくれる事でしょう。
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『花酵母オシロイバナの日本酒』についてはこちら
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⑦ 花酵母「月下美人」:一度だけでもお逢いしたい…
- 花酵母月下美人の花の日:7月19日、8月23日、10月29日
- 花酵母月下美人の花言葉:艶やかな美人、はかない恋、秘めた情熱、ただ一度でもいいから逢いたい
- 花酵母月下美人の味わい:落ち着いた香りと心地よい酸味
月夜にたった一夜だけ、艶やかな姿を見せ、翌朝には悲しくも萎れてしまう月下美人。
そのはかない美しさをどうしてもっと長く鑑賞させてくれないの?と悲しくなるほどのゴージャスさも兼ね備えている花です。
ここでご紹介したいのは、月下美人の花酵母とワイン酵母をブレンドした純米酒。
精米歩合80%でも、驚きのさらりとした飲み口。どんな料理にも合いやすく、心地よい酸味も感じられます。
https://www.instagram.com/p/BnC-cBolueA/?utm_source=ig_web_copy_link
『月下美人の花酵母×ワイン酵母の純米酒』についてはこちら
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⑧ 花酵母「マリーゴールド」:あなたへの愛は変わりません
- 花酵母マリーゴールドの花の日:6月5日、7月18日、8月20日、9月2日※この日は黄色のマリーゴールドに限ります。
- 花酵母マリーゴールドの花言葉:勇者、可憐な愛情、真心
- 花酵母マリーゴールドの味わい:落ち着いた香りと心地よい酸味
マリーゴールドの花言葉には「健康」も含まれますが、嫉妬や絶望なども意味します。プレゼントする時には「あなたの健康がうらやましいくらいです。今後も今まで通り体に気をつけて頑張って」などと添えたほうがいいかもしれません。
花酵母マリーゴールドで造った日本酒の特徴は、酸味が強くキレがあること。フワッとした香りも楽しめます。特に鍋料理に最適で、常温から熱燗までの広い温度帯をサポートします。
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『燗上がり純米酒』についてはこちら
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⑨ 花酵母「コスモス」:変わることなくあなたを想っています
- 花酵母コスモスの花の日:赤10月4日、10月6日、ピンク9月5日、10月22日
- 花酵母コスモスの花言葉:乙女の純血、愛情
- 花酵母コスモスの味わい:軽いお米の旨味ときりりとした酸味
岩手県・川村酒造の「酉与右衛門よえもん 秋桜コスモス ひやおろし純米吟醸」は酒造好適米「吟ぎんが」を50%精米して造った純米酒です。秋までじっくりと寝かせた、年に一度のひやおろし。冷酒から人肌までの温度で楽しめます。
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『酉与右衛門よえもん 秋桜コスモス ひやおろし純米吟醸』についてはこちら
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⑩花酵母「アジサイ」:辛抱強くあなたを待っています
- アジサイ花酵母の花の日:6月3日、
- アジサイ酵母の花言葉:忍耐強い愛情、移り気、無常
- アジサイ酵母の味わい:爽やかな酸味、高級な白ワインの風味
母の日と言えばカーネーション。しかし最近ではアジサイを贈る人が増えているんです。
その理由は、アジサイの持つ豪華さ。お母さんに「ありがとう」の気持ちが伝わりやすいからかもしれませんね。また、小さな花が密集しているように見えるアジサイに「家族団欒」のイメージを重ねている人も多いからなのでしょう。
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『アジサイ花酵母 あしがり郷 月の歌』についてはこちら
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花からのメッセージをいただきながら飲もう「花酵母日本酒」
花酵母日本酒は日本酒の中ではまだ少数派。プレゼントすれば驚いてくれるし、おしゃれな花柄ボトルが多いので女性にも喜んでもらえます。
日本酒に使われた花酵母の花言葉で想いや感謝の気持ちを伝えると、相手の方に強い印象を持っていただける、というメリットもあります。
ありきたりの日本酒を贈るのは避けたい人や、今まで花酵母日本酒の存在は知ってはいてもなかなか手が出せなかった皆さんも、自分へのプレゼントにしてはいかがでしょう。
花の香りが鼻から抜けて、その後にやってくる日本酒としての味わいが楽しくて、きっと夢中になりますよ♪
男同士のプレゼントには『 金升酒造 純米大吟醸【初花】』がおすすめ!
今までご紹介してきました「花酵母で造られた日本酒」は、男性から女性へ、あるいは女性から上司やお友達へ、を想定してご紹介してきました。
しかし、男性も同性の上司や先輩へ感謝の気持ちを込めて日本酒をプレゼントしたい方も多いことでしょう。
そんな方におすすめなのは、戦争の物資不足で日本酒の製造を中止した後に、幾多の危機を乗り越えて見事返り咲いた日本酒です。
往年大人気を博した復活酒「初花 純米大吟醸酒」は、自社栽培の越淡麗を用いた酒蔵の最高峰とも言える日本酒です。
原料にこだわる「初花 大吟醸酒」にはふくよかで豊潤な旨味と程よい酸味があり、一口飲むたびに至福のひと時をしみじみ感じられる、新潟が世界に誇る日本酒です。
ラベルデザインは、今やJポップアートワークに欠かせないデザイナー「木村豊」さん!
辛酸を舐めた方に心からの拍手を送りたい時や、退院した方へのさらなる励ましのプレゼントとして最適かと思われます。