
兵庫県は日本三大杜氏のひとつであり、その日本酒造りの高い技術力で日本中から引っ張りだこだった丹波杜氏発祥の地として知られています。
国内にある名水の中でも、トップクラスの呼び声が高い西宮の宮水があったり、日本一と称される酒造好適米である山田錦の産地として有名です。
おいしい水と独特の気候。古くから磨かれてきた杜氏の技術と最高の米という酒造りに関して最良の条件が整っている地域でおいしい酒が生まれないはずがありません。
そこでここでは兵庫県の日本酒の中でも、おすすめの日本酒を7つご紹介します。
兵庫県の日本酒のあゆみ
兵庫県は日本酒どころとして全国的に有名ですが、「兵庫五国」と呼ばれ、各エリアごとに異なる文化や酒造りを行っていることまでご存知の方は多くないでしょう。
ひとつは日本酒のふるさとと称される播磨です。約1300年前に編纂されたとされる播磨国風土記には、神様にお供えしたご飯にカビが生えてきたので、それでお酒を造り、神様に献上したという一節があります。
これが日本で初めて麹を使って製造された日本酒の始まりであり、現在に続く日本酒の祖ともいわれるものです。
そして灘の生一本で有名な生粋の純米酒が生まれたエリアとしても知られているのが、灘五郷です。
江戸時代以降は、日本酒の一大生産地として全国に名を知られるようになり、酒造りに適した酒米と水、杜氏の技、寒造りに最適とされる六甲おろしが吹く環境ど銘酒を造る条件が整っています。
日本最大の清酒生産量を誇っている酒造エリアとして現在でも栄え続けています。
山陰の麒麟児の異名を持つ戦国武将、山中鹿之助幸盛の子供とされる新六幸元が1600年ごろに醸造法を確立し、清酒発祥の地として発展したのが伊丹です。
それまで酒といえば濁酒が主流でしたが、洗練された透明な澄酒は当時たちどころに全国に広がり、大ヒットしたという歴史があります。
そして兵庫県には、丹波杜氏に匹敵する但馬杜氏発祥の地である丹波と但馬の2つのエリアが存在します。
日本酒造りの最高責任者である杜氏は、酒蔵の味を決定する重要ポストであり、酒蔵の中で誰よりも知識と技術を持っている存在でなければなりません。
独自の技術と酒造りの知識を持つ丹波と但馬は四大杜氏として重宝され、現在に至るまで銘酒を醸するさまざまな技術を継承しているとされています。
兵庫県の日本酒の特徴
兵庫県は日本酒の生産量の約30%を占めており、新潟と並び日本一の酒どころとして有名です。
100種類以上もあるとされている酒米の中でも、全国の蔵元がこぞって使用する王様とされているのが山田錦。
誕生から80年以上も経過しているのに王座を譲ることなく利用されており、生誕の地である兵庫県産の山田錦は別格の酒米と評価されています。
大吟醸酒や吟醸酒と呼ばれる高級酒を製造するのに山田錦の存在は欠かせないとさえ言われている存在です。
兵庫五国と称されるように兵庫県の日本酒の特徴は、エリアごとに違っており、一概に特徴を示すことは難しいですが、山田錦の産地である灘エリアの日本酒は、濃醇辛口という特徴を持っており、その味わいから「男酒」と表現されるほどです。
男酒は口当たりが荒々しく、酸味が効いている辛口の日本酒であり、硬水を短期間で発酵させて醸された酒。
非常に飲みごたえを感じることから、日本酒好きにはたまらない日本酒らしい日本酒を男酒と呼んでいるのです。
各エリアで違った特徴があり、バラエティに富んだ日本酒を味わうことができることも、兵庫県の日本酒の大きな特徴といえるでしょう。
兵庫県でおすすめの日本酒7選
剣菱 瑞穂 黒松剣菱
原料には兵庫県産の山田錦を使った特別純米酒が瑞穂 黒松剣菱です。剣菱は兵庫県を代表する銘柄の代表格といえるでしょう。
普通の日本酒の製造工程のように仕込みから熟成を経て、搾るといったことは行いません。
2年以上っ熟成させた日本酒を厳選し、1本の酒としてブレンドして造るという方法を取った独特の日本酒が黒松剣菱。
剣菱はもともとコクがある日本酒として知られていますが、円熟味がプラスされ、華やかな余韻を残しながらも後味を引きすぎないキレの良さを持った一本に仕上がっています。
飲むたびに新たな発見をもたらしてくれるという特別純米は、兵庫県の日本酒で飲んでおきたい一本といえるでしょう。
蔵元の剣菱酒造は、1505年創業であり、実に500年以上の歴史を持った日本でも最古の部類に属する酒蔵です。
甑という古くから使用されている道具を使った蒸米や麹蓋を使った製麹など、古き良き伝統を守って造られる酒造りは、出来上がるお酒の味を変えないためのこだわりであり、手作業でなければ実現できないと手間暇を惜しみません。
精米歩合については、毎年酒米の出来に合わせて変更されるため、敢えて商品ラベルへの表示をしないという特徴も持っています。
メーカー | 剣菱酒造 株式会社 |
ホームページ | http://www.kenbishi.co.jp/ |
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六甲の雫 大吟醸
原料には兵庫県産の山田錦をふんだんに利用し、40%という高精米で磨き上げたこだわりの素材を使用。
六甲山の伏流水を使用し、1月から2月という厳寒の時期に仕込む「寒造り」という手法を用いて造られた最高の素材と最高峰の技術を惜しみなく用いた大吟醸酒が六甲の雫 大吟醸です。
雪解け水を思わせるような清冽とした味わいと山田錦特有の華やかな吟醸香を楽しむことができます。
フルーティーな香りと柔らかい甘さを感じる大吟醸酒ですから、女性にも人気が高い日本酒として広く知られています。
蔵元は1808年創業の株式会社小山本家酒造灘浜福鶴蔵。特定名称酒のみを醸すると言われており、高精白での酒造りにこだわりをみせる酒蔵です。
平成7年に起こった阪神淡路大震災の影響で、仕込み蔵が全壊してしまったものの、酒蔵見学ができる設備を持つ新蔵を新設して再開を果たした過去があります。
それまでは株式会社 浜福鶴銘醸という会社名でしたが、平成25年にはグループ会社である小山本家酒造と合併をして現在の名前になりました。
メーカー | 株式会社小山本家酒造灘浜福鶴蔵 |
ホームページ | https://www.hamafukutsuru.co.jp/ |
Amazon | Amazon灘浜福鶴蔵 |
白鷹 純米吟醸 超特選
兵庫県産山田錦の中でも、特A地域で栽培された高品質なもののみを原料に使用し、60%という高精米で真珠のように磨き上げて使用しています。
仕込み水には自社が保有している宮水井戸から湧き出ている「宮水」を使用。日本が誇る酒米山田錦の最高級米と天下の名水と謳われる宮水の相性は抜群です。
灘伝統の杜氏の手による生酛づくりの技法を用いて醸する純米吟醸酒は、吟醸酒ならではの深見のある味わいと、豊かに広がるコクを表現しています。
酒通であればあるほどに白鷹にハマってしまうという一本であり、冷酒はもちろん燗酒でも愉しむことができる飲み幅の広さも魅力です。
蔵元は白鷹株式会社。伊勢神宮に御料酒を奉納している伝統と由緒正しい酒蔵です。銘柄と社名でもある白鷹というのは、千年に一度現れる霊鳥が由来になっています。
実直な酒造りと品質第一をモットーにする信頼のおける蔵元です。
メーカー | 白鷹 株式会社 |
ホームページ | https://hakutaka.jp/ |
Amazon | Amazon白鷹はこちら |
金盃 大吟醸 生酒
他の蔵よりも先に四季醸造やマイクロフィルターといった先端技術を使用した生酒の製造に取り組んでいた先進的な蔵元である金盃酒造が送り出した一本が金盃 大吟醸 生酒です。
銘柄と会社名になっている金盃とは、古代中国で皇帝から下賜される品物の中で、最も権威のあった品物が金の盃であったことから、至高の品質のお酒ということで名付けられました。
原料には山田錦を100%使用。精米歩合は40%という高精米で仕込まれています。日本酒の醸造工程では、普通は火入れという工程を踏むものですが、金盃は前述でも紹介したマイクロフィルターを使用することで、腐敗と品質劣化の元になる成分を全て除去するという工程を取り入れています。
これによって火入れの工程を経なくても、高い品質で腐敗の心配のない生の日本酒の味わいを実現することに成功したのです。
生酒ならではの豊かな香りを持ったうえで、どこか爽やかさを感じる味わいが楽しめる一本に仕上がっています。
メーカー | 金盃酒造 株式会社 |
ホームページ | http://www.kinpai.co.jp/ |
櫻正宗 焼稀 生一本
原料には兵庫県産山田錦を100%使用。自前の蔵の単一醸造場で醸造した純米酒にしか与えられない生一本と呼ばれる日本酒が櫻正宗 焼稀 生一本です。
この名前にある焼稀というのは、その昔、櫻正宗の上等酒には、「稀」という焼き印が押されていたことから、いつからは櫻正宗の上等酒を「焼稀」と呼ばれるようになりました。
現在では櫻正宗の中にも、焼稀よりももっと上等ランクのものがあり、上等酒よりもランクの落ちるレギュラーランクの日本酒として位置づけられていますが、上ランクよりも負けない味が楽しめるという銘柄になります。
蔵元は櫻正宗株式会社で創業から400年以上の歴史を持ち、酵母の元祖ともいわれる協会一号酵母が造られた由緒正しい蔵元です。
焼稀の他にも、神戸が世界に誇る名物である神戸牛との相性だけを考えて造られたボンズ・ウェル・ウィズ・ビーフ、使用する原料のお米にこだわりを持って造られたコウノトリ育むお酒など、老舗ながらも新しいアプローチを行っている蔵元としても有名です。
メーカー | 櫻正宗 株式会社 |
ホームページ | http://www.sakuramasamune.co.jp/ |
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沢の鶴 純米酒 山田錦
神戸が誇る日本一ともいわれる山田錦を55%、敢えて一般米を45%ブレンドして使用している「米だけで造る酒」が沢の鶴 純米酒 山田錦です。
副原料は一切使用せxず、山田錦で造ってみようという実験的なコンセプトのもとで造られた沢の鶴が純米酒 山田錦。
敢えて一般米をブレンドするのは、山田錦の繊細な味わいが一般米をブレンドすることで際立つことが判明したため。
このため100%の山田錦使用の日本酒とは別の味わいを引き出すことに成功した一本です。
上品で穏やかな香りはそのままに、旨味とふくらみを持たせた辛口の日本酒に仕上がっています。
蔵元は300年以上の歴史を持つ沢の鶴株式会社で、全国的にもその名を知られている灘の大蔵元のひとつです。
日本酒づくりも実験的で革新的なアプローチをするような姿勢を見せていますが、インターネット社会になり、HPを上手に利用して日本酒を使用した料理や、日本酒に合う肴の紹介。
また杜氏代行からの挑戦状と題したクイズなどの企画を行っており、老舗ながらユーモアの溢れる酒蔵運営を行っている蔵元として人気になっています。
メーカー | 沢の鶴 株式会社 |
ホームページ | http://www.sawanotsuru.co.jp/site/ |
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日本盛 超特選 惣花
「日本盛は良いお酒」というCMは有名で、全国にその名を知られている灘の大蔵元のひとつが日本盛株式会社。
その創業はなんと1505年であり、500年以上も酒造りを行っている蔵元です。宮内庁御用達の酒として採用された歴史もあり、宮中の儀式などにも使用されている格式の高い日本酒として有名です。
紹介する超特選惣花は、厳選した酒米を55%まで精米し、日本盛特有の惣花酵母を使って丹念に造り上げた一本。
甘い、酸っぱい、辛い、苦い、渋いといった日本酒では大事とされる5つの味覚がバランスよく感じられる純米吟醸酒に仕上がっています。
メーカー | 日本盛 株式会社 |
ホームページ | http://www.nihonsakari.co.jp/index.shtml |
Amazon | Amazon日本盛 |
兵庫県の日本酒を手に入れるためには
日本一ともいえる酒どころの神戸の日本酒ですから、インターネット通販サイトや日本酒専門の卸業者のサイトなどで、簡単に手に入れられる環境にはなっています。
しかしながら、限定酒などを手に入れたい場合には、圧倒的な品ぞろえとキャンペーン情報なども豊富に手に入れることができる業務用酒販店のサイトなどを利用することをおすすめします。
そうすればメーカー協賛のキャンペーンなどにも参加するチャンスができ、勉強会や試飲会などにも参加できるチャンスが生まれます。
日本一の酒どころの酒を飲まずして日本酒は語れない
古くから歴史のある兵庫県の日本酒は、伝統の技術と最高品質の原料、仕込み水を手に入れることができる日本一の酒どころの名にふさわしい高品質な日本酒が揃っています。
日本一ともいえる酒どころの日本酒を口にせずに日本酒のことは語れません。「本物」の日本酒を兵庫の名物と一緒に味わってみてはいかがでしょうか。