米

私たちが普段の生活で食べているお米にはたくさんの種類があります。

ブランド米で言えば、コシヒカリ、ひとめぼれ、あきたこまちなどがありますし、地域で作られているご当地米を合わせると非常に多くの種類があることがわかります。

今回のテーマは「酒米」です。酒米とは簡単に言えば、日本酒造り専用に開発されたお米の品種です。

酒米にどのような種類があるのか、酒米と私たちが普段食べているお米にはどのような違いがあるのか、気になる方はぜひチェックしてみて下さいね。

 

酒米の歴史を抑えておこう!

日本酒とお米

日本酒造り専用のお米である酒米はいつ頃生まれたのでしょうか?まずは酒米がいつの時代に誕生したのかについて解説していきます。

酒米の開発が行われ始めたのは、江戸時代だと言われています。

江戸時代において、民間の篤農家たちが優良な個体の選抜を行い、さらに地方からさまざまな品種を取り寄せ、米の品種改良を進めていました。

明治時代に入ると品種改良の技術が進歩し、「雄町」「神力」「愛国」「亀の尾」など優れた食用の在来品種が開発されていきます。

この中で特に米作りに向いていた「雄町」を代表とするいくつかの品種が酒造りへの適性が高かったため、徐々に酒造り専用米として存在していくことになります。

その後、品種改良が進められ現在では100以上の酒米の品種が全国各地で生み出されています。

近年育成されたすべての酒米品種は、「雄町」「亀の尾」「八反」「山田穂」を祖先品種としており、今後さらに酒米の品種が生み出されていくことが予想されます。

酒米が生まれた背景には、より美味しい日本酒を造りたいという醸造家たちの強い思いがあります。

全国各地にはたくさんの酒米があるため、酒米に注目して日本酒を嗜むとより日本酒の深い世界へと浸ることができるでしょう。

 

酒米の品種にはどういったものがあるのだろう?

稲穂

酒米は正式名称を「酒造好適米」と言い、日本酒づくりに適した性質を持つ酒造専用の米品種です。

では具体的に酒米にはどういったものがあるのでしょうか?ここからは日本各地で生産されている酒米の種類にスポットを当てて詳しく解説していきます。

2017年時点、日本全国で107銘柄ものの酒米が栽培されており、その全てを紹介することはできませんので、ここでは生産量トップ10の銘柄を紹介していきます。

●第1位:山田錦(兵庫県)

2017年度の生産量は37,500トンと圧倒的な差を付けて1位の生産量を誇ります。

酒米の王様とも呼ばれ、醸造適正に優れていることから大吟醸酒から純米酒まで幅広く製造できます。

日本全国で山田錦を使用した酒造りが行われていますが、兵庫県産のものは別格です。

●第2位:五百万石(新潟県)

2017年度の生産量は19,000トンで、山田錦には遠く及びませんがそれでも3位以下に大きな差を付け堂々の第2位となっています。

酒質はさっぱりしており、淡麗辛口ブームの立役者になった酒米です。また低精米でも吟醸酒の酒質になれるポテンシャルを持った優れた酒米です。

●第3位:美山錦(長野県)

美山錦は寒い地域でも育てやすい酒米で、長野県以外でも東方地域の多くで主要な酒米になっています。

素朴な酒質で料理の味わいを壊すことがないため、食中酒として人気の高い酒米です。

●第4位:雄町(岡山県)

雄町は江戸時代末期に鳥取の大山山麓で発見された原生品種です。

山田錦よりも高価であることからなかなか飲む機会はありませんが、濃醇なうまみと甘みが特徴で人気の高い酒米です。

●第5位:秋田酒こまち(秋田県)

米所秋田県を代表する酒米です。秋田県が開発した品種で、雪解け水のような透明感とシャープな甘みが特徴です。

純米酒から大吟醸酒まで対応できる幅広さも、生産量が多くなっている理由だと言えます。

●第6位:八反錦1号(広島県)

広島吟醸造りに向いた酒米として広島県が開発しました。八反錦1号を使用した日本酒は、きれいな味の膨らみが感じられる仕上がりになります。

広島県ではもちろん、他の県でも非常に人気のある酒米になっています。

●第7位:ひとごこち(長野県)

長野県を代表する美山錦に引けを取らない酒米で、新美山錦と呼ばれることもあります。

大粒で心白も大きく、寒い地域でも育ち収穫量も多いことから、酒米としての高いポテンシャルが伺えます。数ある特定名称酒の中でも、吟醸酒に最適だと言われています。

●第8位:出羽燦々(山形県)

出羽燦々は、山形県が美山錦を母稲として開発した酒米です。吟醸造りに適しており、やわらかで味幅のある日本酒に仕上がります。

出羽燦々の中でも基準を満たしているものには、DEWA33マークが品質の証として付けられています。

●第9位:吟風(北海道)

八反錦を北海道でも作れるように品種改良して開発されたのが吟風です。

寒い地域で栽培される酒米に特有の軽快さがあり、北海道を代表する酒米になっています。

●第10位:越淡麗(新潟県)

越淡麗は、山田錦と五百万石という2大酒米を交配し、大吟醸酒用に開発した酒米です。

山田錦の膨らみのある味わいと、五百万石のすっきりとした味わいを併せ持ち、近年非常に人気が高まっている酒米です。

 

山田錦と五百万石で酒米生産量の全体の5割を占めており、両者が日本を代表する酒米だということがわかります。

先ほどお話ししたように、日本には全部で100を超える酒米があり、地域でしか味わえない日本酒もたくさんあります。

生産量が多い酒米で造られた日本酒を味わうのも良いですが、各地域で独自に開発され、生産者の思いが詰まった酒米で造られた日本酒もぜひ味わってみてくださいね。

 

酒米とご飯として食べるお米にはどのような違いがあるのだろう?

炊き立てのご飯

日本酒は米と米麹、水だけを原料とするお酒ですので、米の良し悪しがお酒の味を決めるといっても過言ではありません。

日本酒造りには先ほど紹介したような、酒米と呼ばれる日本酒造り専用の米を使用していますが、果たして酒米と私たちが毎日食べるお米はどのように違うのでしょうか?

私たちが日々食しているお米のブランドには、コシヒカリ、ササニシキ、ひとめぼれ、あきたこまちなどがありますね。これらのお米はしっかりと甘みと粘りがあり非常に美味しいお米です。

そのためブランド米を酒造りに活用することで、美味しいお酒が完成すると考えるのが普通ですが、実は食べて美味しいお米は酒造りに最適ではないのです。

ご飯として食べるお米を酒造りに使っていることもありますが、大吟醸酒など高級なお酒はほとんどが専用の酒米で造られています。

ではどうして食べて美味しいお米は酒造りに最適ではないのでしょうか?その答えは「心白」というものにあります。

酒米と心白の大事な関係性とは?

酒造りにはご飯として食べるお米も使われていますが、特定名称酒など価値の高いお酒には酒専用に開発された大粒で「心白」を持ったお米が使われています。

心白とは、米の中心部にある白くて透明な部分のことです。心白にはデンプン質が多く含まれており、隙間が多くあるため、麹菌が繁殖しやすいという特徴があります。

一方、心白の外側はタンパク質や脂質を多く含み、雑味が出やすいという特徴があります。

つまり心白部分は米作りに最適ですが、心白の外側は酒質を落としてしまう原因になると言えます。

大吟醸酒など高価なお酒になればなるほど、心白の外側を十分に削り、心白部分のみを贅沢に使用した酒造りが行われているのです。

ご飯として食べるお米にも心白はありますが、酒米と比較するとごくわずかです。

酒米が酒造りに最適な理由は、心白が豊富に含まれており、心白を使用した酒造りができるからなのです。

 

まとめ

酒米に着目して日本酒を選んでみようと話す農家の女性

私たちが普段食べているお米を原料としている日本酒もありますが、特定名称酒など高価な日本酒の場合には、「酒米」と呼ばれる酒造り専用のお米が原料として使われています。

「酒米」は米の粒が大きく、心白部分が大きいという特徴があり、美味しい日本酒を造ることができる要素が詰まっています。

酒米に着目して日本酒を選んでみると、新しい発見があることでしょう。