山形 日本酒 十四代

山形といえば、東北に位置する雪国でサクランボや、玉こんにゃく、芋煮などが思い浮かぶ方は多いものですが、忘れてはならないのが山形県の日本酒の存在です。

約4000平方キロにも及ぶとされる広い庄内平野で栽培される美味しいお米。そして四方を囲む山々から流れる雪解け水と日本酒造りに必要な美味しい米と美味しい水に恵まれた山形で、うまい酒が造れないわけがありません。

山形県内では実に54もの蔵元が日本酒造りに精を出しており、全国新酒鑑評会の金賞受賞点数では常に上位を争うほどの日本酒どころです。

ここでは山形の日本酒についての歴史や特徴、またおすすめしたい7本をご紹介いたします。

山形の日本酒の歴史

山形 日本酒 十四代

山形の日本酒は意外なことにほんの30年ほど前までは、全国では無名の存在でした。

というのも県内に存在していた蔵元は、いずれも小規模なものであり、主に地元の方向けの日常酒を製造してきたからです。

このため全国各地の銘酒どころと呼ばれるエリアから、多くの日本酒が集まってくる首都圏や関西圏などの大量消費エリアでは、山形の日本酒は魅力に乏しいと映ってしまうのは、仕方のないことでした。

全国での知名度は低くとも、地元民は地元の蔵元の日本酒を愛し、よく飲まれていたため、そこまで問題ではありませんでした。

しかし1970年代に入り、焼酎やウイスキーなどの他の商品に押され、普通酒が全く売れなくなってしまいました。

ここから各蔵元が普通酒ではなく、上質で付加価値の高い日本酒造りに舵を切ったわけです。

また、蔵元が加盟する山形県酒造組合が技術水準のアップを目的として、山形県が運用する県立の機関である山形県工業技術センターが指導を行い、山形県研醸会を立ち上げ、醸造技術の向上と蔵人の人材育成を行い始めました。

これは民と官ががっちりとタッグを組んで、山形県の日本酒造りを守っていこうとした全国でも珍しい出来事であり、山形県の日本酒造りには欠かせない歴史です。

山形の日本酒の特徴

山形 日本酒 出羽桜

山形県の日本酒の特徴は、米と酵母、水の全てを山形オリジナルで揃えた純米吟醸酒の開発や、民官一体となって磨いた優れた技術力で醸造されており、高い酒質を誇っているということです。

名峰から流れ出る豊かな水とそれらに育まれた大地が最良の米を産出してくれます。

そして厳寒期の澄み切った空気と白銀の雪に囲まれ、美味しい米が酒へと醸し出す。鑑評会や各種コンクールにおいて、全国有数の金賞受賞回数を誇り、吟醸王国山形の名を欲しいままにしているのも納得です。

特筆すべきは、2016年に山形県の清酒が国税庁によって地理的表示GⅠ「山形」の指定を受けたことです。

GⅠとは、農産物や酒類など、地域に育まれたブランドを保護するために設立し、知的財産権のひとつとして保護される制度ですが、清酒が都道府県単位で指定されたのは日本国内で山形が初めてになります。

淡麗辛口が全盛だった1990年代中頃に、フルーティー吟醸香とゆたかな米の旨味を併せ持った甘口の吟醸酒が山形から誕生し、一気に山形の日本酒が世間から注目を集めました。

吟醸酒の比率が上がったことによって、豊かな香りを持った地元産の米を原料にして活かした濃醇な味わいを持った日本酒が多くなっており、現在の山形の日本酒の特徴といえます。

おすすめの山形県の日本酒7選

山形 日本酒 白露垂珠

十四代 本丸 秘伝玉返し本醸造

これまで「淡麗」「辛口」「純米」一辺倒だった日本酒マーケットを激震させるほどのインパクトを持った一本が十四代の登場でした。

今や日本全国に広まった十四代の先駆けとなった本商品は、幻となってしまいました。

当時2200円の定価で販売されたこのお酒は、本醸造とは思えないようなフルーティーかつ芳醇な味わいを持っており、全国の蔵人や飲食業界人を唸らせたほど。

現在でもオークションなどで購入は可能ですが、20倍以上もの価格もしている状況です。

他にも十四代はプレミア価格がつく日本一高い日本酒としても知られており、最高傑作とされる純米大吟醸龍泉は、数十万円のプレミア価格がつけられているほどで入手は最も困難とされています。

蔵元は元和元年(1615年)に創業した老舗の高木酒造で、十四代が生まれるまでは朝日鷹の銘柄がフラッグシップ商品でした。

高木酒造十五代目で天才と名高い高木顕統が十四代を生み出し、現在の高木酒造のフラッグシップ商品となっています。

十四代には七垂二十貫、別撰、特吟、純米中取などさまざまな銘柄がありますが、あまりの人気にどれも入手困難であり、口にできれば運が良いと言える日本酒です。

メーカー 高木酒造株式会社
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出羽桜 桜花吟醸

山形を代表する定番の日本酒といえば出羽桜と言われるほどに有名な銘柄。

ふくよかでフルーティーな吟醸香と、淡麗で爽快な味わいを持っており、吟醸ブームを作ったと評価されている至極の一本です。

1980年に販売されて以来、長年に渡り高い人気を誇っており、高級化粧品の香りサンプルとしても用いられています。

吟醸を世界の言葉にをモットーとして吟醸酒造りに日々邁進している出羽桜酒造は、明治25年(1892年)に創業。

1997年という早い段階で海外への輸出事業も展開しており、現在では全世界25か国以上で出羽桜を堪能することができる日本を代表する「Japanese SAKE」といえます。

喘鳴日本酒鑑評会でグランプリ獲得など、日本国内はもちろん、外国での評価も高い一本です。

メーカー 出羽桜酒造株式会社
ホームページ http://www.dewazakura.co.jp
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白露垂珠 特選純米酒

地元の酒米であり、全国の酒蔵が愛用する美山錦。その美山錦と出羽賛燦々を掛け合わせた原料を使い、出羽三山の深層水を仕込み水に山形酵母を使って仕込まれた純米酒が白露垂珠 特選純米酒です。

氷温に近い低温でじっくりと丁寧に1年という長きに渡って低温熟成された後に出荷される純米酒は、ほんのりの香るフルーティーな香りと上品な甘みと酸味が広がる後味が特徴的です。

ワイングラスでおいしい日本酒アワード2015において金賞を獲得した特選純米であり、晩酌にはぴったりの一本といえるでしょう。

蔵元は安政5年(1858年)の創業した竹の露合資会社です。本商品の「白露垂珠」というのは、中国唐時代に活躍した李白が「汲めども尽きぬ自然の美しさ」に感動して作った詩から名前を取って命名されました。

メーカー 竹の露合資会社
ホームページ https://www.takenotsuyu.com/
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出羽の雪 雪 純米

酒業で380年、元和元年に創業した渡會本店(わたらいほんてん)が蔵元であり、米どころとして有名な庄内は鶴岡に立地している酒蔵が製造しているのが出羽の雪。

出羽の雪は、日本名門酒会がプロデュースを行っている日々の食卓をハッピーにしてくれる「ウチ飲み純米酒」というシリーズ商品の一本です。

山形県産の美山錦と、出羽きらりという二つのお米をブレンドして原料として利用。

吟醸酒とは違った華やかな香りと、ハツラツという表現がぴったりな口当たりが雪 純米の特徴です。

雪 純米の他にも、山形県産の酒造好適米として全国に人気がある雪女神で造られた出羽の雪 雪女神仕込みなども人気が高い銘柄です。

メーカー 株式会社渡會本店
ホームページ http://www.dewanoyuki.com/
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上喜元 純米 出羽の里

上喜元は、酒田市に残った唯一の蔵元として知られる酒田酒造が製造する銘柄です。

純米 出羽の里の出羽の里とは、山形を代表する酒造好適米の名前になります。

特徴はお米の中心にある白く不透明な部分のことを指す心白が大きいため、精米をそこまで多く行わなくても良質な日本酒造りが可能になるとされており、多くの蔵元に重宝されています。

この出羽の里の個性を十二分に発揮してくれたと評判なのが、本商品である上喜元 純米 出羽の里になります。

精米はたった2割であるにも関わらず、サラリと飲みやすくすっきりとした味わいの純米酒に仕上がっています。

社長自らが杜氏も務めており、全国新酒鑑評会の金賞常連蔵としても有名です。

メーカー 酒田酒造株式会社
ホームページ なし
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山形正宗 辛口純米

フルーティーな日本酒造りによって業界に革命を起こした山形酒ですが、一線を画す辛口タイプの日本酒も個性豊かな商品が沢山存在しています。

その中の一本が山形正宗 辛口純米です。定番の純米酒であり、口に含んだ瞬間に豊かなお米の旨味が広がり、後味はシャープに仕上げられています。

販売から10年以上も経っているのに、飲食店での需要が高く山形正宗の中でも一番の売り上げを記録しているのが辛口純米です。

食事を引き立ててくれる至極の一本として、山形のみならず多くの飲食店に求められる、まさに黒子のような純米酒。

蔵元は明治31年(1898年)創業の水戸部酒造。水戸部酒造では伝統的な手法にこだわった純米づくりにこだわりを持っており、奥羽山系の特徴であるミネラルをたっぷりと含んだ伏流水を仕込み水として使用しています。

硬度はなんと120度。軟水が多いとされる日本では珍しい硬い水を仕込み水にすることこそが、山形正宗オリジナルともいうべきシャープな切れ味をもたらしてくれているのです。

メーカー 株式会社水戸部酒造
ホームページ http://www.mitobesake.com/
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くどき上手 純米吟醸

明治8年(1875年)創業の亀の井酒造が蔵元であるくどき上手も山形を代表とする日本酒の一つです。

出羽三山で有名な羽黒山の門前に立地しており、出羽三山の自然の恵みを上手に活用した酒造りを行っています。

銘柄の由来は戦国時代を生き抜き、大きな勢力を持つまでになった戦国武将からヒントを得て名付けられました。

戦で勝つだけではなく、誠心誠意説き伏せることこそ、本当の戦上手であり、手の届きそうもない高貴な人物でさえ、心を解くことで自分のものになる。

すなわり心を溶かすように人々を魅了する日本酒たれということで、くどき上手という名前が付けられました。

酸の少ない酵母を使って上品な味と香りを実現。米の旨味を十分に感じられる味わいは山形酒の筆頭ともいえる一本です。

味や香りはもちろんですが、インパクトのあるネーミングと浮世絵を使用したラベルデザインが評判を呼び、瞬く間に全国区の日本酒へと成長を遂げました。

またくどき上手の従来のイメージからは全く想像ができない超辛口吟醸酒も販売しており、「くどき上手 ばくれん 吟醸酒 超辛口+20」も本商品同様に話題になっている一本です。

メーカー 亀の井酒造株式会社
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山形の日本酒の入手方法は

山形 日本酒 出羽ノ雪

山形県の日本酒を入手する方法ですが、他のエリアと変わらずインターネット通販などで簡単に購入することが可能な状況です。

また人気の高い銘柄であれば、特約店を見つけてメールマガジン登録などをしておくと、より簡単に入手をすることが可能になるでしょう。

しかしここでご紹介したように「十四代」に関しては、非常に入手が困難になっています。

期間限定酒の場合でも10万円を越えるプレミア価格がついており、なかなか一般の方には手が出せない金額といえるでしょう。

贈答用と考えてもあまりに高額であるため、逆に贈答相手に気を遣わせることになってしまうレベルの一本です。

特に日本酒の知識などが十分でない方は、お手頃な価格帯の日本酒から始めることをおすすめします。

しのぎを削ったハイクオリティの山形の日本酒をぜひ

山形 日本酒 くどき上手

いかがでしたか。

それまでは淡麗辛口がほとんどだった日本酒の世界に一石を投じ、革命を起こしたともいえるのが十四代を筆頭にする山形酒の存在です。

現在のようにさまざまなタイプの日本酒が全国で造られ、新しい日本酒を口にできるのも、山形県で起こった日本酒の革命のお陰といっても過言ではありません。

山形の蔵元の中には、注文の殺到や古くからの付き合いを大事にしたいということからホームページを作っていないところも多く存在しています。

こういった蔵元が製造している日本酒を手に入れることは難しいですが、山形の日本酒が現在の業界をリードしていることに間違いはありません。

50を超える蔵元があり、日々切磋琢磨をしながら造られている山形の日本酒を一度口にしてみてはいかがでしょうか。