ワイングラス

海外での日本酒人気はうなぎ登り!それなのに、なぜかしょぼんとしている国内の日本酒…。

このまま行けば日本酒は海外中心の飲み物になってしまうのでは、と少々気がかりです。

海外での日本酒人気の原因は、「健康的な和食の海外普及に伴い日本酒も好まれるようになったから」という理由付けをよく見かけますが、それだけでは納得がいきません。

また、日本での日本酒の衰退は、「イメージが悪い(おじさん臭い)」「度数が高い」などが原因とされていますが、こちらも納得がいきません。

そこで今回の記事では、

  • なぜ日本では日本酒離れする人がいるのか
  • 海外のワイングラス老舗が8年の歳月を費やして作ったグラスはなぜ日本酒を旨くするのか

を検証してみました。

【日本酒とワイングラス】日本酒が吟醸香を得るまでの歴史

 

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Sake Sommelier Associationさん(@sakesommeliers)がシェアした投稿 – 2019年 2月月9日午後7時00分PST

現代の日本酒には、飲む前、飲む時、飲んだ後に感じる様々な吟醸香があります。

しかし、もともと日本酒が庶民に普及しはじめた江戸時代には吟醸酒はまだ存在しなかったため、枡や盃、おちょこ、ぐい飲みで十分でした。

本格的吟醸香を持つ日本酒は1968年から

 

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Sakeさん(@nihonsyu.w)がシェアした投稿 – 2019年 6月月22日午後8時41分PDT

江戸時代の終わり頃の酒樽の図や焼印雛型に「吟造」の文字が記されている事実はありますが、今の吟醸酒とは別の意味で使われていました。

明治40年(1907年)からは「きょうかい1号酵母」が頒布されましたが、醸された日本酒の味は、

  • 穀物と麹の匂い
  • 口当たりから切れるまで重量感のある強い酸
  • 米の旨味は感じられない
  • 現代の繊細で洗練された味とは対極にある味

と称されています。

この頃の日本酒を飲む酒器は、匂いを感じない、クッと飲んで酸を感じないようにするおちょこやぐい飲みが最適です。

その後、日本酒に吟醸香が加わったのは大正時代(1912年〜1926年)末期。そのころに実用化された「きょうかい4号酵母」、「きょうかい5号酵母」で初めて吟醸香を持った日本酒が生まれた、とされています。

さらに、昭和28年(1953年)に「きょうかい9号酵母」が発見され、以前からあった高度な精米技術のおかげもあって、昭和43年(1968年)ころからもっと華やかな吟醸香を持つ日本酒が全国的に造られるようになったのです。

 

「きょうかい酵母」についてはこちら

🍶日本酒メディア

🔸歴史その4~明治時代から大正時代🔸

国立醸造試験所は鑑評会で優秀な成績を収めた酒蔵の酵母を培養して頒布しています。いわゆる「きょうかい酵母」がスタートしたのです。現代でもこの「きょうかい酵母」は、安定して良質のお酒を造ることができるとあって、多くの酒蔵で広く活用されています…。

吟醸酒ブームが起こったのは1980年から

 

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Aika Sakagami 坂上愛佳 ひめままさん(@aika_sakagami)がシェアした投稿 – 2019年 6月月28日午前7時39分PDT

1980年代以降は日本全国がまさに吟醸酒ブーム!

メロンのような香りを放つ「静岡酵母(HD-1)」や、派手な香りを持ち、口の中でデリシャスリンゴの香りがふわっと広がるも「アルプス酵母」も出現しました。

最近では薔薇の品種である「プリンセス・ミチコ」から花酵母を分離した日本酒も話題になっています。

プリンセス・ミチコはフローラルの豊かな香りがいっぱい♪甘いフルーツを口の中にいっぱい含んでいる時のような幸せな気分になれる日本酒に仕上がっています。
*「プリンセス・ミチコ」とは、1966年、当時皇后であられた美智子様にイギリスから献呈された薔薇の名前です。

そんな日本酒たちが持つ様々な香りと味わいを、本当に私たちは100%堪能できているのでしょうか。

【日本酒とワイングラス】吟醸酒ブームに遅れをとった日本伝統の酒器たち

日本酒 徳利 おちょこ

枡やおちょこ、ぐい飲みは日本が誇る美しい伝統的な酒器ではあります。しかし残念ながら、これらは日本酒に「吟醸香」という美しい価値がつく前の時代の酒器なので、現代の香り高い日本酒には合っていないのかもしれません。

酒ソムリエの授業でも日本酒がワイングラスに注がれるようになり、日本国首相でさえワイングラスで祝杯をあげる現在、日本伝統の酒器は現代の日本酒を真に味わうための器、とは言い切れない気がします。

ワイングラスでこそ引き立つ、日本酒の香り

ワイングラス

吟醸香とは、各酒造が酒造りの技を高めることで生まれた日本酒独特の「えも言われぬ芳香」です。

吟醸香(ぎんじょうこう)…日本酒を一口含めば、リンゴ、パイナップル、洋梨、バナナ、メロンのような芳香を、最低でも4回は楽しめます。

  • 上立香(うわだちか)…日本酒を口に含む前に鼻腔で感じる香り
  • 含み香(ふくみか)…日本酒を口に含んだ時に口中から鼻に抜けていく香り
  • 吟香(ぎんか)…日本酒を喉に送り出す時に感じられる香り。吟醸香と同じ意味合いで使われる
  • 返り香(かえりか)…日本酒を飲み込んだ後に、鼻から抜けるように感じられる香り

飲む前、飲んでいる最中、飲んだ後も続くフルーティーで上品な香り…。

日本酒の吟醸香は、海外で日本酒がもてはやされている大きな理由の1つなのですが、この香りはおちょこやぐい飲みではなく、ワイングラスを用いることで楽しむことができます

【日本酒とワイングラス】従来の酒器では日本酒を味わえない理由

このように何通りでも楽しめる繊細な香りを持つ日本酒を、吟醸香が存在しない時代から使われてきた酒器で飲んでいては、現代人のさらなる日本酒離れを起こす恐れがあります。

その理由を以下にまとめてみました。

「枡酒」で吟醸香に木の匂いがミックス

枡酒

枡酒を飲む機会は減ってきましたが、今でも角打ちなどでは枡で日本酒を提供したり、おめでたい式典で樽酒を振舞う時に枡を使うことはあります。

 

「角打ち」についてはこちら

🍶日本酒メディア

🔸安い・上手い・種類も豊富!東京【日本酒角打ち】おすすめ8店🔸

今回の酒はどんな味だろう、とワクワクして家まで我慢できない人たちが酒屋で増えたことから、酒屋の隅で四角の枡で飲んでもらっていたのです。なので、「角打ち」の「角」は枡のこと、「打つ」は飲むという意味になります…

最近でこそガラス製の枡も売っていますが、ほとんどが杉や檜で作られており、これに日本酒を注ぐと素材の木の香りが移ることもあります。これは木香(きか)と呼ばれる匂いでリラックス効果がある、とされています。

しかし、鑑評会などではせっかくの吟醸香を台無しにする「木香臭(きがしゅう)」として、マイナス評価を受けることもあります。

枡は洗うのに手がかかるため「枡の角から飲まずに直線の部分に口をつけて飲むように」と言われることがありますが、ほとんどの方が飲みやすい角部分に口をつけて飲んでいます。

実は角は洗いにくく汚れが残ることもあり、この汚れで日本酒の味が変わってしまうことも…。

日本酒をすする「もっきり」で吟醸香に無感覚

日本酒をすする「もっきり」で吟醸香に無感覚

もっきりとは枡にガラスコップを入れて、そのコップに向けて日本酒をなみなみと注いだものです。

当然、表面張力で盛り上がった日本酒を飲むために口をコップに近づけてズルッとすする、お行儀のいいスタイルで飲むことになります。

これでは、吟醸香どころかせっかくの上立香や含み香も感じられません。しかも、飲むスタイルだって味のうち。これではせっかくの高級酒を飲んでいる意味がないような…。

また、コップから溢れるほどの日本酒を注ぐので、最終的には枡酒と同じく枡から日本酒を飲むことになり、上記でご説明した通り、吟醸香とは違った匂いになりがちです。

ざらつく「陶器のぐい飲み」で際立つアルコール臭

ざらつく「陶器のぐい飲み」で際立つアルコール臭と話す女性

また、粘土層を素材として作られた陶器のぐい飲みは肌の目が荒く、吸水(酒)率も10%ほどあります。

これは、日本酒の繊細な旨味や香りを吸い取り、飲んだ時に口の中ではアルコールだけを強調する酒になり、味も水っぽくなる原因にもなります。

デザインは素晴らしい「ガラス、おちょこ、盃」

日本酒をつぐ

なぜ、日本酒のカップはこんなに小さいの?日本人でさえそう思うのですから、海外でおちょこを出された人たちはもっと不思議がっているはず。おちょこで日本酒を出されるとショットグラスと勘違いして、日本酒をキュッと飲み干してしまう「もったいない人」もいます。

中には「ちびちび飲んでいると飲みすぎを防げるからおちょこがいい」と思っている方もいらっしゃいますが、実は昔、おちょこは人間関係の潤滑剤としての働きもありました。

ちびちびどころか、頻繁に日本酒を「差しつ差されつ」していくことで人間関係も深まっていく、という古き良き時代のコミュニケーションの名残りですね。

冷酒

「陶器のおちょこが悪いなら、ガラスや磁器のおちょこならいいのでは」と思う方もいらっしゃるでしょうが、何と言ってもおちょこは少量のキャパシティしかないのでたびたび注ぐのが面倒。

また、なみなみと注がれるので香りを楽しむ暇もありません。さっさと飲まないと「俺の酒が飲めないのか」なんて江戸時代にワープしたかのようなトラブルを引き起こす可能性もあるかも…。

日本酒 おちょこ

それ以上に日本酒にとって不利益になることは、昨今の日本酒の大きな特徴の1つである吟醸香を楽しめないこと。

容器に鼻が入り込む形のワイングラスと違い、リム(縁、グラスの開口部)と鼻の間に空間があるおちょこではほんの少しの香りしか楽しめません。これではせっかく杜氏の苦労も水の泡…。

【日本酒とワイングラス】日本の研究者が香りを科学的に証明

日本の伝統的な酒器はそれは美しく、毎日でもおちょこで飲んでいたいくらい見とれてしまいます。しかし、ワイングラスが香りを楽しむためには最適であることは、実験によっても証明されています。

東京医科歯科大学の三林浩二研究室が、ワイングラスに注がれたワインから放出されるアルコールガスの可視化に成功したのです。

 

 

※このワイングラスはリーデル社製です。

ストレートタイプよりワイングラスが香りに最適という結果

 

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Raquel Royers | Wine Bloggerさん(@watchmesip)がシェアした投稿 – 2018年10月月27日午前8時38分PDT

13℃のワインが注がれたワイングラスのエタノールはリング状の蒸気パターンを示しています。また、ワインの温度を上げたグラスでは、エタノールはグラスの表面全体を覆っています。

※ここで「エタノールって何?」と疑問に思う方は、以下の引用文をご参照ください。

アルコール,エタノール,エチルアルコール,酒精とそれぞれ呼び方は違いますが同じものです.「アルコール」は広義には,エチルアルコール,メチルアルコール,プロピルアルコールなどのアルコール類の総称です.しかし,一般的にはアルコールといえば,エチルアルコールをさします.「エチルアルコール」は国際化学命名法の呼び名で,「エタノール」は慣用名,「酒精」は日本語名称です.

出典:一般社団法人アルコール協会「アルコール,エタノール,エチルアルコール,酒精の違いは?

この実験が意味しているのは、室温のワインをワイングラスで飲むとリング状のエタノール蒸気がリム周辺に出現して、グラス中央部分のアルコール濃度が下がる。ということは、エタノールの干渉なしにワインの香りを楽しむことが可能である、ということです。

この実験は、ワイングラスの形は香り高いお酒を楽しむために洗練されたデザインであることを証明しています

ちなみに実験の動画右側のワイングラスのワインは熱燗の半分程度の温度で24℃ですが、エタノールがグラス開口部全体を覆っています。「熱燗は目にしみるからイヤ」という人の気持ちも理解できますね。

日本伝統酒器の構造

 

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Alehandro Wine Officialさん(@alehandro_wine_official)がシェアした投稿 – 2017年 1月月20日午前2時38分PST

ワイングラスとは逆に、盃のようにリムが外側に開いたマティーニグラスや、ぐい飲みとおちょこのようなストレートグラスではリング状の蒸気パターンは出現しませんでした。すなわち、これらのグラスは香りを楽しむためにはふさわしくない、ということになります。

「香りはダメでも日本酒の味は楽しめるじゃないの」とおっしゃる方は、風邪をひいて鼻が詰まった時のことを思い出してみてください。多分「何を食べても味がしない」状況だったのではありませんか?

目隠をして鼻をつまんで牛肉を食べると、6割の人が牛肉だとわからなかった、という事例もあります。つまり、香りがあるからこそ正確に味わえるのです。

伝統の酒器を利用することで古きを懐かしむノスタルジーは美しい。

しかし、香りを堪能できない酒器を使い続ければ、日本酒の素晴らしい味を堪能できないので日本酒から遠ざかる人が増えていくのも当然と言えます。

松井:当時は、日本酒の酒器といえば主に陶器の盃、猪口(ちょこ)でした。これでは、華やかな香りが魅力の吟醸酒の特長が生かされません。またこれが若い人の日本酒への興味を削いでいた気もします。

福光:吟醸酒が注目されていた時でさえ、冷酒用のグラスは適したものがありませんでした。陶器の猪口や盃をそのままガラス製にしただけのものはありましたが。香りも取れない酒器で飲んでいても、日本酒の良さは伝わりませんよね

出典:華やかな香りを楽しむ リーデル 『大吟醸』 グラス|連載第2回

*福光氏は金沢の老舗酒蔵「福光屋」の福光松太郎氏、松井氏も福光屋の松井圭三氏)

時代が変われば日本酒の品質も向上していきます。酒器だって変革の時期にきているのかもしれません。

【日本酒とワイングラス】「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」

 

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DHC 酒造さん(@dhc_shuzou)がシェアした投稿 – 2019年 5月月15日午前7時16分PDT

2011年に発足した「ワイングラスでおいしい日本酒アワード 」。そのコンセプトは、以下の文章に端的に表現されています。

<ワイングラスはその形状から、日本の伝統的な酒器ではつかみきれなかった繊細な香りまでも感じさせてくれます

また、底面まで見えるグラス形状により、微妙な色付きや粘性をも感じられるようになったのです。

同じ日本酒を猪口からワイングラスに移しただけでも、誰もが違いを感じられるほど味わいが変わります

出典:ワイングラスでおいしい日本酒アワード

そうかな?と思われる方は、フランスはブルゴーニュのピノ・ノワールをおちょこに注いで飲んでみてください。

そこに、ピノ・ノワール特有の華やかで濃艶な香りは漂っていますか?

答えはNoです。

ピノ・ノワールが持つベリーやチェリー、スパイシーさがミックスされた複雑な香りは、ワイングラスに注いでこそふんわりと花開くものなのです。

その原因は、ワイングラスが持つ「香りを咲かせるような曲線と空間」の存在にあります

【日本酒とワイングラス】日本酒にワイングラスをおすすめする理由

同じ事が、現代の吟醸香溢れる日本酒にも言えます。

ワイングラスは、

  • うすはりで得られる繊細な口当たり
  • 日本酒が注がれる様を見て楽しめる透明感
  • ボウル(グラス本体)とリムの比率を変える事で違いを楽しめる香りの強弱

など、日本酒が持つデリケートな味と吟醸香を楽しむためには最適の器です。

日本酒は、ぐいぐい飲んで「ただ酔うだけ」のお酒ではなくなっているのです。

 

 

もし、ぐい飲みや間違った日本酒グラスで大吟醸を飲んでいるのなら、それは、

最先端のサウンドシステムを備えていながら、安いスピーカーで聴いているようなもの

最高の音響機器を持っているなら、それにふさわしい最高級のスピーカーを使って聴くべきです

では、いったいどのようなワイングラスが日本酒にふさわしいのでしょうか。

【日本酒とワイングラス】日本酒にぴったり寄り添うワイングラスの形とは

テーブルの上のお酒

 日本酒が持つ複雑な吟醸香を十分に引き出すためには、「ワイングラスならどれでも良い」というわけではありません

ワイングラスの開口部とボウルの直径の比率がカギ

ワイングラスの開口部とボウルの直径の比率がカギと話す女性

まず見ておきたいのは、グラスのリムの直径とボウルの一番大きい部分の直径比率。

これはグラスの直径、高さ、リムが異なる5つのグラスを比較した「Impact of wine glasses for sensory evaluation」という実験研究からわかった事実です。

この結果、香りが一番高かったグラスはリースリングタイプと、ボウルが広くリムのすぼまりが緩いタイプ。しかも、その形は全く異なっているにも関わらず香りの強度は同じであった、としています。

ワイングラス

一番香りの開き具合が少なかったのは、よく見かけるこのタイプのワイングラス⬆️。小さなボウルを持ち、比較的ワイドなリムのグラスには注意したほうがいいかもしれません。

では、具体的にどのワイングラスが日本酒におすすめなのでしょうか。

【日本酒とワイングラス】「リーデル(Riedel)」社製、日本酒用グラス登場!

 

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Gamboroneさん(@gamborone)がシェアした投稿 – 2019年 7月月3日午前6時27分PDT

ワイングラス1つを作るためにもワークショップを開催。ワイン生産者の様々な意見を参考にして徹底したワイングラス作りを目指すことで有名なオーストリアのワイングラスメーカー「リーデル」

この、創業260年の名門ブランドが、なんと日本酒のためにグラスを作りました。

ワイングラス専門のリーデルは「日本酒をいかにして飲むべきか」という未知の分野に真っ向から取り組んでいます

【日本酒とワイングラス】日本酒のエレガントさを嗜むための「大吟醸グラス」と「純米グラス」

そして、ようやく今までの酒器では出しきれなかった香りと味わい、贅沢な時の流れを感じたい人のための「大吟醸酒用グラス」と「純米酒用グラス」が開発されました。

リーデル大吟醸グラス

 

 

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Atsushi Fukushimaさん(@r2c)がシェアした投稿 – 2019年 2月月22日午前5時39分PST

2000年、リーデルは酒造と協力して大吟醸の特徴を際立たせるための「大吟醸グラス」を完成。

そこには陶器や磁器、枡で飲んだ時のようなアルコール刺激や水っぽさはなく、厚めのリムで唇が半開きになることもありません。

薄くて滑らかなリムはグラスに唇をつけた瞬間から、研ぎ澄まされて洗練された大吟醸の味わいをじっくりと楽しませてくれます

リーデル大吟醸グラスの特徴

この大吟醸グラスの開発のために、リーデル社はプロトタイプ100種類を最初に作ることから開始。それから60種類を選択し、その後大吟醸のテイスティングへと進み、最終的にやっと37種類の形状まで絞りこんだ、という気が遠くなるようなプロセスを踏んでいます。

その後、多くの蔵元や日本酒専門家の意見を聞いて6種類のグラスまで絞り、さらに45の各蔵元に6種のグラスを送り、200人以上の専門家も動員して、またテイスティングを繰り返す…。開発から2年後、最終的にやっとゴーサインが出たデザインです。

そこまで徹底してグラスを作ったリーデル。日本酒に対して深い敬意を抱かないとできる技ではありません

ボディに滑らかな曲線を持った大吟醸グラスは、その膨らみの僅かな差で香りの立ち方が違ってくる、という危険もはらんでいました。しかし、ようやく完成した大吟醸グラスは大吟醸の繊細な味わいと独特のフレーバーを見事に引き出すことに成功しています。

リーデル大吟醸グラスを使った日本酒の飲み方

 

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SAKURAさん(@sakurita0125)がシェアした投稿 – 2018年 6月月13日午後11時02分PDT

  1. ボディの一番膨らみのある部分の下あたりまで吟醸酒を注ぎます。くれぐれも、なみなみと注がないように!
  2. 2〜3回ほどスワリング(お酒が入ったグラスを回すこと。これによってお酒がグラスの内側に膜を作り、さらに香りが開く)。
  3. 華やかなフルーツの香りが開いたことを確認します。
  4. さあ、グラスを傾けていただきましょう!

 

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Giulia Quartiniさん(@giulia_qu791)がシェアした投稿 – 2018年 6月月27日午前4時18分PDT

リムが小さめの大吟醸グラスでは、飲む時には顔が少々上向きになり、日本酒は舌先から喉の奥までするりと流れていくように設計されています。

そのおかげで、吟醸酒は舌の両側に落ちることはありません。だから、苦味や酸味も感じにくくなり、すっきりとした味わいを楽しめるのです。

 

長めのステムがエレガント『リーデル・スーパーレジェーロ 大吟醸』も追加発売!

 

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Night Rhythmsさん(@night_rhythms1)がシェアした投稿 – 2019年 5月月17日午前3時40分PDT

こちらの『リーデル・スーパーレジェーロ 大吟醸』は、2018年9月に発売された、驚きの軽さ、薄さ、長めのステムを誇るハンドメイドのグラスです。

ステムを持った時に最高のバランスを保つ人間工学的な設計と芸術的な美しさ…。しなやかな女性の手でグラスが持ち上げられたら、真骨頂を発揮しそうですね♪

『HAKUプラチナ 大吟醸』は和モダンを追求

台座にプラチナ箔が施された、リーデルのロゴマーク入りの『HAKUプラチナ 大吟醸』もおすすめ。プラチナの落ち着いた輝きと質感は和モダンを控えめにアピール。おしゃれで品格のあるテーブルコーディネイトにもぴったりです(画像はコチラ)。

純米酒専用『エクストリーム 純米』

これに対して、純米酒用のグラスはかなり大ぶりで横長サイズとなっています。

純米グラスもワークショップでは170人の蔵元と日本酒専門家が参加して8年の年月をかけてやっと完成したグラスです。

口径の大きな飲み口からは、最初に舌全体を潤す純米酒が流し込まれ、ふくよかな米の旨味とクリーミーな質感を口全体で感じ取れます。その後、複雑で奥深い旨味が引き出され、純米酒独特の香りと味わいを楽しめる作りとなっています。

このグラスで味わった後には、「純米酒の香りと旨味を生かすための最適なグラスを作るためには、それだけの時間と試行錯誤が必要だったのだな」と感慨深いものがあります。

Amazonリーデル日本酒グラスはこちら

最高の日本酒には最高のグラスで最高のひとときを!

双方のグラスとも大吟醸酒と純米酒のポテンシャルを最大限に引き出す作りになっています。

日本酒を選ぶ時には真剣になってしまう方も、飲む時には手元にある酒器で済ませてしまうこともあるかもしれません。でも、それではせっかくの日本酒が水の泡。

日本酒の隠された香りや味を楽しむためには、もっと飲む器とのマッチングにも気を使ってみてはいかがでしょうか。

※『HAKUプラチナ 純米』も2019年1月に発売されています(画像はこちら)。

【日本酒とワイングラス】ワイングラスで飲む、もっともふさわしい日本酒とは?

越後 鶴亀 日本酒

さて、ここまで読んできて、皆さんの中には「ワイングラスで飲んで、最高に価値がある日本酒って何だろう?」と興味を持たれた方もいらっしゃると思います。

ワイングラスは日本酒の香りと味わいを引き立てますが、どうせ飲むならワイングラスの真価を見事に発揮できる日本酒を試してみたいもの。

そんな方におすすめしたいのは「2019年 ワイングラスでおいしい日本酒アワード」で最高金賞を3つ、さらに大吟醸部門で金賞までも受賞した越後鶴亀の極寒造り『純米大吟醸』

吟醸酵母を使用することで生まれたフルーティーな香りと、五百万石がもたらす淡麗な味わいの大吟醸は舌で繊細な旨味を味わった後、心地よい余韻を残しながらするりと喉に伝わります。

リーデルが日本酒のために8年の歳月をかけて作り出したグラスにこそふさわしいこだわりの逸品です。

純米グラスを手に入れた暁には、ぜひこのグラスの真価を、皇室御用達酒造 越後鶴亀の『純米大吟醸』でお確かめになってください。

Amazon越後鶴亀純米大吟醸はこちら

 

まとめ:【日本酒はワイングラスで】が日本の日本酒を元気にする

吟醸香溢れ、すっきりした飲みごごちの吟醸酒、滋味豊かで奥深い旨味を持つ純米酒は、それぞれの特性を遺憾無く発揮できるワイングラスで飲む事で、日本酒本来の味がわかるようになります。

海外の皆さんは、ワイングラスでその真価を十分に楽しんでいます。

今回は、リーデル社が長年の研究で生み出した日本酒グラスをご紹介しましたが、もっと多くの方に日本酒の真の味を知ってもらうために、日本でも日本酒に特化したグラスの研究をしていただき、リーデルを超えるグラスを作っていただくことを願ってやみません。


参照サイト

・ウィキペディア(Wikipedia)「日本酒の歴史

・月桂冠「「吟醸」のあゆみ 特別に吟味して醸造する酒として、長年かけ洗練

・石川 雄彰「日本酒の化学一 醸造の匠が造る極上の味わいー」J-STAGE

・Recognose 「Does the Type of Wine Glass Effect the “Taste” of Wine?

・東京医科歯科大学「三林浩二研究所・研究のハイライト