もみじの葉っぱがちりばめられたおちょこと徳利のセット

日本が世界に誇れるものは数多くありますが、、その中の1つに四季の移ろいがあります。四季折々の食材、それに見合う季節限定の日本酒を味わう楽しみ。「日本に生まれてよかった」とつくづく喜びを感じる一瞬ではないでしょうか。

例えば、桜前線が北上してくる季節には「春酒」。この時期には合格祝い、入学祝いなどのお祝いの席が設けられることが多いことから、日本酒のボトルデザインも明るいピンク色などが使われています。ラベルのデザインだけでも私たちのウキウキ感を盛り上げてくれます。

夏には、さらっと喉ごしの良い冷酒。

暑さが一段落した秋には、お待ちかねの「ひやおろし」。「夏越し酒(なごしざけ)」から始まり、秋が深まるにつれて「秋だし一番酒」や「晩秋旨酒」などの秋酒に舌鼓。

木枯らし吹く12月からは搾りたてのフレッシュ感溢れる新酒。熱燗にして体も心もほっと温めることもできるんです♪

今回は、

  1. 四季折々の日本酒の名称と特徴
  2. うつろう季節を愛でる日本酒党にふさわしいおすすめの銘柄

 

を紹介します。

季節ごとに旨味を増す食材と期間限定の日本酒を味わいながら、四季の移り変わりをじっくりと楽しみましょう。

日本酒の四季

日本酒の四季

季節限定の日本酒は、

  1. 冬酒(しぼりたて新酒)
  2. 春酒
  3. 夏酒
  4. 秋酒(ひやおろし)

 

の4種類に分けられます。

では、四季それぞれの日本酒の説明とおすすめ四季の酒を紹介していきます。

フレッシュさがたまらない!四季の酒【冬酒】しぼりたて新酒

おちょこに入った日本酒

「しぼりたて」とは?

普通の日本酒は、保存期間を伸ばすために2回の火入れをしてから出荷されます。それに対して、冬季にできる「しぼりたて」は一度も火入れせずに出荷されます。

日本酒ヌーヴォーだからこその初々しさ、フレッシュな爽快感、日本酒本来の香りを楽しめるのですが、熟成していないから荒々しさが感じられることがあります。

しかし、火入れをしていない「しぼりたて」は酵母が生き続けているので、しばらく冷蔵庫に保存しておくとまろやかになってきます。

「しぼりたて」が飲める期間は12月〜3月中旬。

しかし、「しぼりたて新酒」の中にはさらに「期間限定のしぼりたて新酒」があることをご存知ですか?

1日だけの期間限定酒【立春朝搾り】

 

しぼりたて新酒は期間限定ですが、その中でも立春の日だけ手に入れることができる「立春朝搾り」もあります。

「立春朝搾り」は2月4日に酒質を最高の状態にするために醪発酵に細心の注意を払う、という手間のかかる新酒です。2月4日早朝に搾り、すぐに瓶詰めして販売し、その日のうちに飲んでしまう日本酒です。

純粋無垢な味わい【無垢の酒】

高級酒が仕込まれる小寒から立春までに造られた純米吟醸の、

  1. 醪を絞る時に加圧なしで最初にとれる、日本酒でもっともおいしい部分「あらばしり」を使い、
  2. 新酒の風味を逃さないために濾過もしない、
  3. 一滴の水も加えない「原酒」であり、
  4. 加熱もしない生酒

 

文字通りの無垢なお酒です。

「しぼりたて新酒」を品選びする時には、「立春朝搾り」と「無垢の酒」もウィッシュ・リストに入れておいてくださいね!

では、数ある「しぼりたて新酒」のなかでおすすめしたい新酒を紹介します。

〆張鶴(しめはりつる) しぼりたて生原酒

 

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今夜の酒 新潟県 宮尾酒造 〆張鶴 しぼりたて生原酒 スペックの詳細は記されていないが、アル添生原酒らしくアルコール度数は20度! 際立った香りが立つタイプではないがフレッシュでジューシー 酸味も甘味も程よくキリッとした味わいだが淡麗ではなくどっしりした飲みごたえ そしてやはりアルコール度数20度は伊達でなくピリピリと舌と喉をを刺激する ラベルをよく見ると「オンザロックでどうぞ」と書いてあるのも成る程だ! 石川の地酒で言うと宗玄の生原酒の甘味を半分抜いて酸味を足した感じと言ったらわかりやすいか? #〆張鶴 #しぼりたて生原酒 #オンザロックでどうぞ

Hiroshi Tachibanaさん(@tachibana_coffee_kanawawa)がシェアした投稿 – 2018年11月月28日午前12時29分PST

火入れなし、加水なし、アルコール度調整なしで、日本酒が持つ本来の味わいを楽しめるしぼりたて。価格も抑えてあり、コスパの良さも◎。

原酒なので味わいは濃厚です。ロックでいただくのが正解ですが、もちろんお好みで熱燗にしてもまろやかな甘みを楽しめます。

Amazon:宮尾酒造〆張鶴

口コミ:

アル添感はもちろんあるし、度数も20度あるからキツめなんだけど、香りが良くてやたらと旨い。初めて〆張鶴のしぼりたて飲みましたが、値段も安いしこれは毎年買ってしまうかも(・・;)。
出典:SAKE TIME

 

お花見や門出を祝う、おめでたい四季の酒【春酒】

桜デザインのおちょこと日本酒

桜の花を愛でる季節には桃の節句、卒業式、入社祝い、新社会人、新生活などのおめでたが目白押し。四季の中でも新しい出会いを予感させる季節に飲みたい日本酒は、見るだけでワクワクする桃色がかった外観で、甘酸っぱくてさっぱりした味が好まれるのではないでしょうか。

春酒とは春限定の日本酒。販売期間は3月中旬から5月中旬です(蔵元によって差があります)。呼び方は春酒だけではなく、「春純米」「春和酒」などと蔵元によって違いますが、外観は春の訪れや桜をイメージさせる桃色のボトルやラベルが特徴。酒屋さんで日本酒を選んでいる時に春酒を見つけると「もう春だな〜」としみじみ嬉しくなってしまうデザインです。

味は少々甘めで、春らしい華やかな香りが特徴。春を待ちわびる気持ちにぴったり沿った日本酒です。

春酒でおすすめの銘柄は「純米大吟醸 尾瀬の雪どけ 桃色にごり」です。

純米大吟醸 尾瀬の雪どけ 桃色にごり

名前からして春が来た喜びが伝わってきますね!

お酒は桃色。着色料を使って染めた春酒ではありません。赤色酵母という突然変異酵母で醸されたため、深いピンク色に染まっているのです。

味は甘くて爽やか。にごり独特のクリーミーな舌触り。いくら飲んで飲み飽きません。アルコール度数も10度と低めなので女子会に持っていっても喜ばれそうですね。

蔵元は群馬県の龍神酒造。江戸時代から続く老舗です。

龍神酒造には、洗米から上槽(醪を搾ること)まで手作業で行う、といったこだわりもあり、全国新酒鑑評会で連続金賞をとった経歴があることも納得できる蔵元です。

Amazon:尾瀬の雪融け

口コミ:

開栓して飲んでみると、 思春期の片思いのような酸が強めの甘酸っぱさが目立ちました。
それが冷蔵庫に入れて日が経つにつれて、酸が程よい状態になっていきます。
口の中に酸と甘み、とろみが口全体に広がっていき、心地よい余韻に浸ることができます。
ありがとう。
出典:日本酒物語

見ているだけで暑さは何処へやら!涼を呼ぶ四季の酒【夏酒】

グラスに入った冷酒 夏のイメージ

「この季節はやっぱりビールよね!」という人が増える夏。日本酒党でも「秋口に出るひやおろしが飲めるまでお休みにしよう」とばかりに夏場だけはビールに走る人が多くなります。確かに蒸し暑い中、冷たいビールが喉を通ると爽快な涼風が吹いたような感覚がありますよね。

しかし、各酒造が趣向を凝らして醸しあげた夏酒も負けてはいません。喉をさらりと潤す冷酒と一口に言っても、その味わいは様々。飽きることなく夏酒を楽しめます。

例えば、

  1. 酸度が高く爽やかさを感じ、白ワインのようなスッキリした味わいの夏酒
  2. 火入れなしないのでフレッシュな味わい、生タイプの夏酒
  3. オンザロックで味わいたい、割水なしで濃い風味の原酒夏酒
  4. 夏バテのお疲れ肌も回復する「飲む美容液」の微炭酸活性にごり夏酒

 

ボトルにも夏らしい趣向が凝らしてあり、清涼感を与えるブルーのボトルも多くなりますが、ボトルの中のお酒がブルーの夏酒もあります。クチナシの色素を加えることでブルーになったということですが、せっかくの綺麗な青い色を生かして、カクテル風にクラッシュアイスを詰めたグラスに注いで飲んでみてはいかがでしょう。暑かった記憶もスーッと消えていきそう!

 

夏酒のおすすめは「阿部勘 純米吟醸 夏酒 金魚ラベル」。ラベルには金魚がひらひらと泳ぐ姿が描かれている夏酒で、見ているだけで遊び心と涼しさを感じます。

 

阿部勘(あべかん)純米吟醸 夏酒 金魚ラベル

 

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* *金魚 入りました🍶✨ *ザ・夏酒 *好き過ぎる瓶(*゚▽゚*) * #阿部勘#阿部勘金魚#夏酒#瓶好き

chiharuさん(@chiharu.1130)がシェアした投稿 – 2018年 6月月2日午後7時06分PDT

日本酒の中で金魚が泳いでいる!酔眼にはそう思えるかもしれませんが、これはラベルの裏側に書かれた金魚なんです。

見ているだけで涼しげな夏酒はスッキリ、軽快な味わい。甘みと辛味、酸味のバランスも最高。多少の苦味も感じられ、喉をスルスルと流れていく飲み口も爽やかな夏酒です。

暑い日には不思議な金魚と語り合いながら、ぜひひんやり気分を楽しんでください。

Amazon:阿部勘

口コミ:

穏やかバナナ&リンゴ、わずかな青重み、爽やか、粉砂糖、渋み、
酸味無く滑らかで、とてもバランスがイイ!です。

おいしゅうございました。
出典:日本酒好きのおっちゃんが何か言うとるわ

 

お待ちかね実りの秋!旨い食材と四季の酒【秋酒】

旨い食材と四季の酒【秋酒】と話す女性

猛暑も過ぎ去り、日本酒ファンにはお待ちかね、四季を彩るお酒の中でも特に人気がある秋酒の季節がやって参りました!食欲の秋には海のもの、山のものも味わいが深くなり、一夏を涼しい蔵で過ごした秋酒も落ち着いた味になり、まろみも増えて秋の食材の味を引き立てます

秋酒といえば「ひやおろし」と「秋あがり」。

夏場の暑さで品質が劣化しないようにと大事に寝かせられていた秋酒は旨味が増しています。皆さんは「ひやおろし」と「秋あがり」、どちらを召し上がりますか?

しかし、ここで気になるのが「ひやおろし」と「秋あがり」の違いです。

「ひやおろし」と「秋あがり」は同じもの?

「ひやおろし」とは

ひやおろしとは、冷蔵設備のない江戸時代の造り方を継承したもの。冬から春先に出来上がった醪を搾って一度だけ火入れをし、夏の暑さで品質が変化しないように涼しい蔵で保存。そして9月に入って気温も下がり、日本酒の温度と同じくらいになったら瓶詰めされて出荷されます。

また出荷の時期によって呼び方も異なり、

  1. 夏越し酒(なごしさけ):9月に市場に出回る。軽快でまろやかな味。
  2. 秋出し一番酒(あきだしいちばんざけ):10月に市場に出回る。まろやかで深い味わい。
  3. 晩秋旨酒(ばんしゅううまざけ):11月に市場に出回る。円熟した味わい。

 

「ひや」おろしだから冷蔵されているのだろう、と思っている人もいますが、日本酒の「ひや」とは常温を意味しています。冷やさず温めず、の温度です。だから、「外気がひやと同じ温度になったから、日本酒をひや(常温)で(市場に)卸せる」ことから「ひやおろし」と呼ばれるようになったのです。

また、ひやおろしは火入れを2度行う一般的な日本酒とは違います。瓶詰め後の2回目の火入れをしないので、ひやおろしは「生詰酒」です。いわゆる「半なま酒」ですが、ひと夏を過ごしているのでカドがとれてまろやかな旨味!さらに生の味わいも楽しめる、という2度おいしいお酒なのです。

ひやおろしの飲み方に決まりはありません。夏の暑さがぶり返した日にはキンキンに冷やしてお召し上がりください。辛口のひやおろしならオンザロックもおすすめです。

また、肌寒い日には燗をつけてもOK!40℃くらいのぬる燗で飲むと、こくと旨味が生きてきます。

ではひやおろしのおすすめ銘柄のご紹介です。

純米吟醸 ひやおろし あさ開(あさびらき)

 

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#あき開 #ひやおろし #純米吟醸 #秋のお酒 #岩手のお酒 #馬刺し

ebichumaさん(@ebichu0909)がシェアした投稿 – 2018年11月月24日午前12時24分PST

寒仕込みで醸造した日本酒を、ひと夏じっくりと熟成させることで得られる吟醸香、お米のふっくらとした旨味が絶妙なあさ開!熟成感があるのにすっきりとした飲み口でとろみがあり、後味もスッキリ。

あさ開は全国新酒鑑評会で18年連続入賞、そのうち15回は金賞を受賞するほどの実力。醸される日本酒は、総じて控えめな香りと辛口が特徴なので、山海の食材の味を引き立てます。

例えば、秋に旬を迎える里芋の煮っころがしや、太刀魚の塩焼き、きのこのホイル蒸しなどがおすすめ!秋の味覚をあさ開で思う存分味わってください。

Amazon:あさ開

口コミ:

どうしても、季節の「ひやおろし」を飲みたくて購入。
もちろん、冷やで吞みました。
すっきりとした吞み口で、香りがよく、楽しめました。
とてもおいしいです。

出典:Amazon

秋酒のラベルには、「秋あがり」と表示されているものもあります。「ひやおろし」とは何が違っているのでしょうか。

「秋あがり」とは

「秋あがり」には2つの解釈があります。

① 品質を表す

1つ目は秋酒の品質を表すための表現。冬に造られた日本酒をひと夏の間熟成し、秋には酒質が向上したことを客にアピールするための命名という説です。

日本酒の味は「上がる」「下がる」「崩れる」などの言葉をつかって表現することがあります。例えば、燗をつけることで味が旨味が引き出されることを「燗上がり」。それに対して「燗下がり」は燗をつけたら日本酒のバランスが悪くなった時に使われます。「燗崩れ」は一旦燗をつけた日本酒が冷めた時に味が落ちてしまった時に使われます。

同様に「秋あがり」は、熟成したことによって荒々しさがとれてまろやかな風味になった日本酒を表しています。

逆に発酵が進みすぎ、熟成しすぎた日本酒は「秋下がり」と呼ばれます。

② 2回の火入れをしたことを表す

「秋あがり」とは、ひやおろしが1度の火入れのみなのに対して、2度の火入れをした日本酒のこと。つまり貯蔵前に1回、瓶詰めする時に2回目の火入れがあった日本酒のことを「秋あがり」とする説です。

さて、あなたはどちらの説が正しいと思いますか?美味しければどっちでもいいって?

では、秋上がりのおすすめ銘柄のご紹介です。

白鷹(はくたか) 特別純米 秋あがり

六甲山の北「山田錦の特A地区」と呼ばれる場所でとれた酒造好適米の最高峰、山田錦を100%使用した、贅沢な秋酒。火入れは1回のみです。

酵母を育てる酒母である「酛」も、大変手間のかかる生酛造りで4週間かけて造り上げられているスペシャルな秋あがりです。その味わいは期待を裏切らないまろやかさ。

秋の味覚の1つである松茸とのマリアージュも最高!もちろん秋ナスや栗、銀杏などをつまみながら飲むもよし。純米酒だから、ご飯に合うものならなんでもなんでもおいしくいただけます。

Amazon:白鷹

結論:ひやおろしと秋あがりに明確な線引きなし

 

ひやおろしと秋あがりの違いをご紹介してきましたが、現代では、「生詰」していない日本酒もひやおろしと表示したり、火入れ回数にもばらつきがあります。

酒税法ではひやおろしと秋あがりの区別をつけていないので、このような混沌とした状況になっているものと思われます。

我々は「どちらも秋には旨味を増している日本酒」、と解釈して味を楽しむのが1番のようですね♪

まとめ:季節にこだわらない日本酒醸造も可能な時代に!

酒蔵の大きな酒樽

以上ご紹介した四季折々の日本酒は、秋にとれた新米を冬から春先にかけて仕込んだ日本酒を使っています。

しかし、最近は空調設備が整ったことから一年中醸造が可能(四季醸造)になりました。

四季醸造蔵元の代表格は「獺祭」でおなじみの「旭酒造」。四季醸造によっていつでも新酒が味わえるというわけです。

四季醸造に対しては、季節感がない、旬を感じにくいと言う意見もあるようです。

さて、皆さんはどのようなご意見をお持ちでしょうか?