
ビールやウイスキーなどのアルコール飲料を毎日適量飲んでいる人は飲まない人よりも健康で長生きできる、と言われています。それは、
- アルコールを飲むことでストレスが軽減される
- リラックスできる
- 食欲が増進する
などが理由です。
しかし、それ以上の効果を得られるアルコール飲料があります。それ
は日本酒。
この記事では、
- 日本酒が肌に与える効果
- 日本酒が健康に与える効果
- 健康になるための日本酒の適量はどれが本当?
を説明しています。
適量を守りつつ日本酒の奥深い味を楽しみながら、美肌作りや健康増進、ひいては健康長生きを目指しましょう!
日本酒の肌効果
日本酒はどんなに飲んでも飲み飽きるということがありません。
- キレの良い辛口もあれば甘口もある
- 旨味成分の度合いが銘柄によって違う
- アルコール度数も違う
- 新酒もあれば長期熟成酒もある
- 火入れをしないフレッシュな風味の生酒もある
- 使用する米によっても味が違ってくる
- 麹の種類、酒母の作り方、絞り方によって味が違う
など挙げればキリがないほどその種類は多岐にわたっているからです。
日本酒のアミノ酸が肌をぷるツヤにする
これらの中でお肌にいい、と言われているのが2の「旨味成分」です。
旨味成分の正体は有機酸であるコハク酸やアミノ酸です。特にアミノ酸に含まれる「セリン」は天然保湿因子(NMF)の主成分で、角質内の水分や油分を保持して、肌のバリア機能を強める働きをします。
赤ちゃんの時には十分に持っていたNMFも年齢を重ねるにつれて減少し、肌の乾燥、シミ、小じわが増えてきます。でもここで諦めて、高額な化粧品を購入する必要はありません。日本酒をおいしく楽しく味わい、ついでにで赤ちゃんのようなしっとりした肌を取り戻しましょう!
そのためには、アミノ酸が多い日本酒を選んだ方がお肌のためには効果的、ということになりますよね。
アミノ酸が少ない日本酒、多い日本酒
アミノ酸は麹がタンパク質を発酵させる過程で作られます。大吟醸な
どは米を磨き抜いて、米の表面についているタンパク質はほとんど削り取られています。だからアミノ酸も少ないし味わいは淡麗、後味もすっきりとしています。
逆に磨きの少ない米で作った純米酒などはタンパク質が残っているのでアミノ酸が多く作られて旨味があり、味わいが濃く感じられます。
そこで、アミノ酸が少ない日本酒と、アミノ酸たっぷりの日本酒にはどのような銘柄があるのかを調べてみました。
アミノ酸が超少ない銘柄「やまとしずく」
吟醸や大吟醸に使う米は磨かれてタンパク質が取り除かれています。そのためアミノ酸は少量。お肌のためには力不足かもしれませんが…。
秋田酒造の「やまとしずく純米大吟醸雫取り生原酒」はアミノ酸度が0.6。国税庁の「全国市販酒類調査の結果について(平成28年度調査分)」によると、全国の日本酒のアミノ酸量の平均は1.25です。0.6のやまとしずくがいかに淡麗上品、飽きない味わいなのか容易に想像がつきます。
やまとしずくの絞りは機械を使わず袋に入れて吊るす方法。自然な重力で落ちてくるしずくを集めた雫取りです。一番手間がかかり、とれる酒量も一番少なくなる絞り方ですが、圧力をかけて絞るよりも雑味が少なく、日本酒のもっとも旨い部分だけを味わうことができるのです。
さらに、通常は行われるはずの「加水処理」をしない、さらに火入れもしない生原酒のまま瓶詰めされています。
メロンのような上立ち香。すっきりとして馥郁とした含み香は絶品としか言いようがありません。顔に塗ったり酒風呂にするなんて、とてもじゃないけれどできない高級日本酒です。アミノ酸度が最小とはいえ、口福のためにはぜひ手に入れていただきたい銘柄です。
さて、アミノ酸度が最小の日本酒に対して、アミノ酸度が最大の日本酒とは一体どの銘柄なのでしょうか。
アミノ酸度0.6のやまとしずくに対する日本酒は、なんとアミノ酸度7.0の生原酒です!
アミノ酸が最高に多い銘柄「開春 寛文の雫 生もと木桶仕込」
アミノ酸度が7.0と高い上に糖度も−90というとてつもない甘口の日本酒。ご存知のように糖度はプラスの数値が多くなるほど辛口になり、マイナスの数値が多くなるほど甘みが増します。
国税庁の「全国市販酒類調査の結果について(平成28年度調査分)」によれば、日本酒度の平均は+3.5〜+4.6。ほぼ辛口です。その中で異彩を放つ「開春 生もと木桶仕込 寛文の雫」は、江戸時代の手法を再現して醸されて超甘口。
(※もっと甘口のお酒がいい人には日本酒度−120の「開春 寛文の雫 生酛木桶仕込み 木桶熟成」もあります!アミノ酸度は6.0ですが…。)
アミノ酸度は「やまとしずく純米大吟醸雫取り生原酒」に比べて11.6倍!
辛口が苦手な女性でも、これだけ甘くてアミノ酸たっぷりの寛文の雫ならデザート代わりに飲めるのではないでしょうか。
体の内側からアミノ酸を補給したら、今度は外からもアミノ酸効果を享受しましょう。
ご紹介した日本酒の他にも、純米酒であればアミノ酸度は比較的高くなっています。飲んだ後はグラスに残ったお酒を顔や手に塗るだけ。アミノ酸の働きでしっとりしてきますよ♪
日本酒風呂で全身しっとり
日本酒を肌に直接塗るのはちょっと怖い、と思う方は、日本酒風呂から始めてみてはいかがでしょうか。
アミノ酸量を増やした酒風呂専用の日本酒も販売されています。たとえば末廣酒造の「湯々美滴」などです。
口コミを見ると、
- ポカポカ感が長く続く
- 血行が良くなりぐっすり眠れた
- 湯船が汚れるほど老廃物がとれた
などの評価がされています。
日本酒のα-グルコシルグリセロールがコラーゲンを作る
日本酒に含まれているα-グルコシルグリセロールも旨味成分の一つ。日本酒を造る杜氏の手が白くてシミもないのはα-グルコシルグリセロールの美白効果から来ています。
嬉しいことにα-グルコシルグリセロールには、
- 肌のハリと弾力性を取り戻すコラーゲンやヒアルロン酸を作り、肌の再生を促す
- メラニン色素を抑える
などの働きがあり、肌のアンチエイジングにはもってこい!なのです。
しかし、α-グルコシルグリセロールは日本酒すべてに平等に含まれているわけではありません。α-グルコシルグリセロールの含有量は、
- 醸造アルコールを添加した日本酒では、7.3±2.5mg/ml
- 醸造アルコールを添加していない純米酒では、15.0±2.6mg/ml
となっています。
日本酒に含まれているアミノ酸度を知るためには裏のラベルに記載されている「アミノ酸度」が参考になります。しかし、アミノ酸度は表示義務がないのですべての日本酒に記載されているわけではありません。
同じくα-グルコシルグリセロール量も記載されていません。
一体どの日本酒をお肌のために選べばいいのか迷ってしまった時には、とりあえず純米酒を選んだ方が無難のようです。
日本酒の育毛効果
日本酒にはアデノシンと呼ばれる核酸が含まれています。
アデノシンは血管の収縮を防いで血流をスムーズにする働きがあり、血行が促進される事で体温が上昇しやすくなり、「IGF-1(インスリン様成長因子)」も分泌されやすくなります。
IGF-1は組織細胞の分裂や成長の促進、傷ついた組織の修復と改善する働きがある重要なホルモンの一つ。そのため、髪の発毛や育成、抜け毛対策としても期待できるのです。
IGF-1効果を高めるアデノシンは、他のお酒よりも日本酒に多く含まれています。育毛や美髪のためには日本酒を飲むべし、ですね。
日本酒の健康効果
多くの女性が悩んでいる冷え性や低体温。夏でもカーディガンや靴下を手放せない人が増えています。
そんな人はビールやウイスキー、麦焼酎を飲んでは逆効果。暑い夏のビールやハイボールはおいしいものですが、陰タイプのお酒なので体を冷やします。紹興酒・梅酒・杏酒も白砂糖が添加されているので陰タイプです。体温が37℃以下になると体内の酵素の働きが弱まり体調も悪くなるのでお酒選びは慎重にしたいもの。
また、体温が1℃下がるごとに免疫力は30%ずつ低下して行くとも言われています。体温の低下はガンなどの重篤な疾病を引き起こすこともあるの要注意です。
日本酒を飲めば体温が上がる
日本酒にはアデノシンが多く含まれている、とご説明しましたが、アデノシンは育毛に良いばかりではありません。
血行が良くなり体温を上昇させることから、冷え性、肩こり、腰痛も軽減されます。
また、お相撲さんのお肌はつやつやと輝いて見えますよね。どうしてでしょうか。
このナゾを解くために力士に日本酒とウイスキーを飲んでもらい、体温の変化を測定した実験があります。
その結果、飲酒前35.7度の体温である力士の飲酒後体温は、日本酒では38.1℃まで上がり、ウイスキーでは36.1℃止まり。このことから、日本酒は体内温度を上げることがわかりますね。
皮膚は内臓の状態を如実に表す鏡のようなものです。力士の肌がつるピカなのも、日頃から飲んでいる日本酒の体温上昇効果のおかげ。肌に現れるほど内臓も元気なのでしょう。
体温管理は健康の基本です。適量の日本酒を楽しみながら、冷えた体を温めて内臓を元気にしてあげましょう。
日本酒は老化の原因「糖化」を抑制する
老化の原因は歳をとる事、それは間違いありません。しかし、最近では歳をとる事以外に老化の原因があるとされ、その実態が解明されるようになりました。
実は、老化の原因は「糖化」にあったのです。
同じ歳でも若く見える人と老けて見える人がいます。同じ歳を重ねているのにどうして差ができるのか、という疑問の答えも糖化です。
では、「糖化」とは、一体何なのでしょうか。
簡単にご説明すると、体内のタンパク質と食事から摂った糖分が結びついて、体を構成しているタンパク質を変質させる事です。糖化されたタンパク質は徐々に劣化し、その過程で終末糖化産物(AGEs)となり体をさらに老化させていきます。
タンパク質は肌にもあり、角質層やコラーゲン、エラスチンを構成しています。肌のタンパク質が糖化すると、いわゆる「肌焦げ」状態に陥ります。
肌焦げの症状は、
- 肌にくすみ
- 黄色っぽい肌色
- 深く刻まれたシワ
- 糖化によって抗酸化酵素の働きが衰えてシミができる
など。女子にとって恐ろしい事態が待ち構えているのです。
それだけではありません。女性は閉経すると骨粗しょう症になりやすくなることは知られていますが、糖化は骨のコラーゲンにまで影響を及ぼし骨を硬化させます。たとえ骨量が十分にあっても骨折の危険度は糖化によって高くなります。
老化、肌焦げ、骨折の原因となる糖化ですが、予防する方法はあるのでしょうか。
糖化を防ぐには炭水化物の摂取を控える事が一般的ですが、もう一つ予防法があります。
それは、日本酒を飲む事。
日本酒には糖質が含まれているので「まさか!」と思う人もいるでしょうが、実験の結果から日本酒には糖化を妨ぐ抗糖化作用がある事が実証されたのです。
適量の日本酒を飲む事で糖化を防ぎ、肌焦げ、骨粗しょう症も防ぎ、老化を遅らせることもできるなんて、日本酒ファンにとっては嬉しい限りですね!
適量の日本酒は認知症を防ぐ
日本酒は大量にぐびぐび飲むものではありません。上質の酒の香りと味わいを楽しみながらチビチビと飲むのが正解です。
というのは、大量飲酒で血中の水分が失われ、血管が詰まって脳梗塞などを起こしやすくなり、血管性認知症になる確率が高くなるからです。
しかし、1日5~10グラムのアルコールを飲んでいる人は飲まない人よりもアルツハイマーリスクが低下するという研究もあります。
また、中年期にアルコールを摂らなかった人は、適量のお酒を飲んだ人に比べてアルツハイマーのリスクが45%高い、という追跡調査もあります。
…と、今回の記事では「適量、適量」と書いてきましたが、一体日本酒の適量とは、具体的にどれくらいの量なのでしょうか。
健康を害さない、健康を支える日本酒の適量を知る
私たちの体がアルコールを分解できる量と時間はご存知ですか?
複雑な計算式は面倒なのでご紹介しませんが、簡単に計算してくれるサイトを見つけたのでご紹介します。
自分のアルコール適量を知る
そのサイトは「hangover.hajime123.net」です。
このサイトで、たとえば体重50kgでお酒に強い人が1時間後に車で出かける場合、アルコール度数15の日本酒70mlを飲むことができる、などが瞬時にわかるので、とっても便利!
(※肝臓の分解能力には個人差があるので、これはあくまでも計算上の値です。)
イギリスの研究では、1週間あたりの健康的なアルコール量は14ユニット。1ユニットのアルコール量は8gなので112gです。この量を超える飲酒は健康に害を及ぼす、としています。
先ほどご紹介したサイトで計算してみると、お酒に強いと自覚して、体重が50kgの人は、アルコール度数15の日本酒を1週間で950ml飲んでも良いことになります。
このことから休肝日を除いた6日間で計算すると、1日あたり18.6gのアルコール量となり、約158mlの日本酒が飲めるというわけです。
ところが中国海洋大学の研究では、
- 1日のアルコール摂取量が12.5g以下ならアルツハイマーになるリスクが低下
- 38g以上のアルコール摂取量はリスクが高まる
- 6gのアルコールでリスクは最低
ということがわかりました。
とすると、アルツハイマーリスク低下のためには日本酒の適量は約100ml。これはアルコール度数が15の場合で、アルコール摂取量は11.9gになります。
さらにリスク低下効果を狙うなら、1日に飲む日本酒は50mlに減らさなければなりません。
それに対して、厚生労働省の「健康日本21」では、
『通常のアルコール代謝能を有する日本人においては「節度ある適度な飲酒」として、1日平均純アルコールで約20g程度である旨の知識を普及する』
としています。
さて、あなたなら中国の研究が推奨する量を少なすぎる、厚生労働省が正しい、としますか?
または、上等の日本酒を少量だけ、心から味わいながら健康を維持していきますか?
まとめ:お酒は諸刃の剣
日本酒の効能を挙げてきました。日本酒にはアミノ酸やα-グルコシルグリセロールの他にも肌の再生に必要なビタミンB6、新陳代謝を高めるペプチドなども豊富に含まれています。
しかし、すべては「適量」であるからこそ効果を発揮するのです。
おいしいからもっと飲みたい気持ちはわかりますが、そこをぐっとこらえてこそ「美肌で健康、長生き」が実現するのです。
日本酒はいわば諸刃の剣。美容や健康に役立つ反面、危険性も併せ持っています。
日本酒を飲む時には、そのことをお忘れなく!
参考資料:
- 国税庁「全国市販酒類調査の結果について(平成28年度調査分)」
- @cosme「湯々美滴」
- J-Stage「清酒に含まれるα – グルコシルグリセロールによるアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ阻害作用」
- 日本酒造組合中央会「日本酒と健康」
- 二日酔いの予防と対策「アルコール分解時間、血中濃度、必要水分量」
- CareNet「Alcohol consumption and dementia risk」
- 厚生労働省「健康日本21」