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日本酒は米と米麹が原料の「純米酒」、米と米麹に醸造アルコールを加えた、「アルコール添加酒」に分けられます。

最近は醸造アルコール無添加日本酒の純米酒に人気があり、醸造アルコールを加えた日本酒に対してネガティブイメージを持つ人が多くなっています。

純米酒は確かに美味しい。しかし、醸造アルコールが加えられた日本酒が体に害を及ぼすわけではありません。

世界が認める高級酒シャンパンでさえアルコールが添加されているのに、なぜアルコールを加えた日本酒には拒絶反応を起こす人がいるのでしょうか。

今回の記事では、

  • 日本酒と醸造アルコールの歴史
  • 日本酒に醸造アルコールを加えることの利点
  • 日本酒に加える醸造アルコールの原料
  • 日本酒の酒造好適米、山田錦利用の醸造アルコールもある
  • シャンパン、酒精強化ワイン、ウイスキーもアルコール添加酒
  • 「醸造アルコール入り日本酒で頭痛がする」は根拠なし
  • 「醸造アルコール」の文字を見ただけで「三増酒」と勘違いする人の存在
  • 日本酒でもないのに、醸造アルコールたっぷりの合成清酒の販売数が減らないわけ

について説明いたします。

日本酒に醸造アルコールを加えると日本酒じゃない?

 

米と米麹だけで作られた純米酒とは違い、

  • 大吟醸酒
  • 吟醸酒
  • 特別本醸造酒
  • 本醸造酒

は醸造アルコールが加えられた日本酒

ということで真っ向から毛嫌いする人がいます。日本酒ではない、と言い張る人もいます。純米酒しか飲まない、と断言する人もいます。

純米酒以外は飲みませんというプラカードを持つ男性

確かに純米酒にはお米の旨味、コク、ふくよかな香りがあり私たちを魅了します。したがって、「純米酒だけが日本酒」と主張したい気持ちはよ〜くわかりますが、

  • 醸造アルコールの事を良く知らずに
  • 純米酒だけが日本酒、との世評に流され
  • 本醸造、吟醸、大吟醸の旨さを体験した事がない

となると「人生の楽しみの半分を捨てたようなもの」かもしれません。

その理由は、

醸造アルコールが入っているからこそ、トップクラスの審査員が揃う鑑評会で金賞を取れるほど高品質な日本酒が完成する

からです。

日本酒に醸造アルコールはいつから?

では、ここからは醸造アルコールがいつから、どのような理由で日本酒に加えられるようになったのかを説明いたしましょう。

日本酒が作られ始めたのは、古くは弥生時代にさかのぼります。しかし、中国から酒造りの技術が伝わり本格的に作られるようになったのは奈良時代。

 

「日本酒の歴史」についてはこちら

🍶日本酒メディア

🔸日本酒の歴史🔸

日本酒がいかにして、今日まで発展してきたのか解説していきます。歴史を知ることでより日本酒を楽しむことができます…

その後、江戸時代に入り、日本酒が庶民のものになり、流通も整ったことから酒造も増え、日本酒が今までよりも盛んに作られるようになりました。

江戸時代からすでに「日本酒に醸造アルコール」

江戸時代の街並み

しかし、当時の蔵は現代のような空調はもちろん完備しておらず、衛生状態も完璧ではなかったため、火落ち菌や雑菌等で日本酒が傷む事が多く、それを防ぐために醸造アルコールを加えるようになったのが始まりとされています。

当時の醸造アルコールは現代使われているような純度の高いものではなく、原料は米や酒粕を利用した純度が低い「焼酎」を利用していました。

これは「柱焼酎」と呼ばれる手法で、純度は低いものの高濃度のアルコールを加える事で日本酒の腐敗を防ぐことが目的でした。結果として軽い味わいの日本酒ができることがわかったので、それからは日本酒造りには欠かせないものとなっていったのです。

日本酒に加えられる醸造アルコールに嫌悪感を抱く理由

ただし、醸造アルコールに対して拒絶反応を示す人にも、その根拠はあります。

※ちなみに現在は「三増酒」は存在しません。

醸造アルコールを多量に加えた日本酒もどき三増酒の登場

醸造アルコールを多量に加えた日本酒もどき三増酒の登場と話す女性

それは第二次世界大戦前後からの米不足で、大戦末期に出現した三増酒(三倍増醸酒)の登場が原因となっています。

三増酒とは、当時、日本酒を作る米が手に入りにくかったため、

米と米麹で作ったもろみに、

  • +普通の日本酒と同じアルコール濃度にするために醸造アルコールと水
  • +甘味をつけるためにブドウ糖、水飴
  • +酸をつけるために乳酸、コハク酸
  • +旨みをつけるためにグルタミンソーダ

などを加えて、3倍に増量したお酒

です。

しかし三増酒は、「安く日本酒を作って国民を騙して売ってやろう」という目的のために作られたわけではありません。当時、戦争の影響で米の生産量は激減。三度の食事もままならなかった戦後は日本酒を作るどころではない状況にありました。

戦後の日本の街

さらに兵士の復員で日本酒の需要はどんどん増加、密造酒(後述)の横行で健康を害する人も急増する中、国税庁醸造試験所が少ない米でどうにかして日本酒を作れないか、と研究に研究を重ねて生み出したお酒が三増酒なのです。

三増酒は、

  • 密造酒のように健康を害さない
  • 味もさっぱりしている
  • 各酒造も米不足の中、さらに技術を磨いて作るようになった

ということから、当時の純米酒よりも旨い、と人気となり、純米酒復活までのつなぎの役割を立派に果たしました。

後の時代に、醸造アルコールを加えた日本酒を嫌う人を生み出した原因の1つとなった三増酒ではありますが、

想像を絶するほどの食糧難の時代に日本酒ファンを支え続けたことを考えると、飽食の時代に生きる我々が一概に非難することはできない

と思われます。

危険なアルコールを使った密造酒の横行

戦争による米不足、日本酒の供給不足から発生し、現代人に醸造アルコール拒絶反応を起こさせる原因となるものに密造酒の登場もあります。密造酒は主に3種類で、当時はメチル、バクダン、カストリと、聞いただけでも頭が痛くなりそうな名で呼ばれていました。

醸造アルコールにはほど遠い「メチル」

戦時中に製造されていた石油の代用品であるエチルアルコール。これを水で薄めて、更にメチルアルコールを加えたものが「メチル」です。

  • 酒蔵の数は空爆の影響で激減
  • 杜氏や蔵人不足
  • 原料米不足
  • 兵士の復員で飲酒人口の増加

などの理由で日本酒を手に入れる事ができない人々は、日本酒の代用品としてメチルを飲み、結果として失明したり死亡する事件が多く発生しました。

以下に挙げるバクダンやカストリも同様の理由で密造されます。

醸造アルコールと勘違いしてはいけない「バクダン」

戦後、航空基地などで不要となった燃料用アルコールを脱色して水で薄めて増量し「即席焼酎」の名で販売。メチルよりも失明や死亡率は高かった、とされています。

醸造アルコールとは別モノ「カストリ」

酒粕を蒸留して作る上質な「粕取り焼酎」を語源としていますが、「カストリ」は上質な粕取り焼酎とはまったく別物で、芋を使って急造し、カスを取り除いた粗悪な芋焼酎のことを言います。

カストリは密造酒、というだけでメチルアルコールなどは入っていないので醸造アルコールを嫌悪する原因にはなっていませんが、「戦後は日本酒が品薄で大変だった」と言う例として挙げました。

メチルのように失明したり死亡したりはしない代わり、臭いは鼻につくほど強烈だったそうです。

しかし、

醸造アルコールはメチルやバクダンのように石油で作られたものではなく、体に害を及ぼすアルコールでもありません。

この点でも醸造アルコール嫌悪派はアルコールの種類を誤解されないようにお願いします。

では、純米酒を除く日本酒にはどれだけの量の醸造アルコールが加えられているのでしょうか。そして、醸造アルコールとはどんな原料を使って作られているのでしょうか。

日本酒に加えられる醸造アルコール量とその正体

日本酒に加えられる醸造アルコール量とその正体
画像をクリックすると拡大します。

上記の画像は特定名称酒と普通酒に用いられる醸造アルコールの割合です。もちろん純米酒には一切入っておらず、大吟醸、吟醸、特別本醸造、本醸造には白米の重さの10%以下のみ加えて良いことになっています。

その量は原料米1t(1000kg)に対して120リットル(重量比約10%)以下。この点、食糧難時代に流通した三増酒をイメージして「増量目的のために醸造アルコールをたっぷり加えている」と勘違いしている人は考えを改める必要があるように思われます。

この醸造アルコールの事を一言で説明すると「日本酒の質を高めるために加える蒸留酒」です。お酒の質を高めるためにアルコールを加えているお酒は他にもあります。シャンパン、酒精強化ワイン、ウイスキー(後述) などです。

では、醸造アルコールは体に悪い原料で作られたものなのでしょうか?

日本酒に加えられる醸造アルコールの原料

木

醸造アルコールは「アルコール添加物」とも呼ばれているため、健康に悪い化学製品や食品添加物をイメージする人が多いようですが、原料はサトウキビや芋。これを連続蒸留すれば純度の高いアルコールになります。つまり、モヒートでブレイクしたラム酒や沖縄の黒糖焼酎と同じ製法で作られているのです。

 

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hirot1976さん(@hirot1976)がシェアした投稿 – 2016年 8月月31日午前9時20分PDT

この醸造アルコールを36度まで薄めたものが甲類焼酎で、ロック、水割り、カクテル、酎ハイで人気がありますよね。もちろん「飲んだことない」なんて言わせませんよ(笑)。

さて、このサトウキビからできた醸造アルコールのアルコール分は100%に近いほど純粋なのですが、日本酒に加える時には30%になるよう調整されます。

見た目もクリアで、味も香りもありません。しかし、醸造アルコールを加えるか加えないかで日本酒の味わいや香りに違いが出てくるのです。

ちなみに、醸造アルコールはかつて国産農産物を使って発酵の段階からアルコール完成まで国内で作っていましたが、のちにブラジルなどのサトウキビ原産国が糖蜜を使ってアルコールにしたものを輸入し、国内で新めて蒸留しピュアアルコールにしたものを使うようになりました。

満を持して発売!山田錦由来国産醸造アルコールを使った日本酒

田んぼ 稲穂

しかし、どうしても海外由来の醸造アルコールに不安を持つ方や国産にこだわりたい方は、国産米で作った山田錦由来醸造アルコールを加えた日本酒を選ぶ、という手もあります(山田錦由来国産醸造アルコールについての記事はこちら)。

山田錦由来国産醸造アルコールは2018年から販売されており、この醸造アルコールを使った日本酒は、現在進行形で酒屋さんに出回りつつあります。

例えば、最高金賞を13年連続受賞(通算14回)した事で有名な白龍酒造の「特撰大吟醸【笹屋茂左衛門】」も現在、山田錦使用国産醸造アルコールを加えて作られている最中の日本酒の1つ。純米酒ファンの方も、世界が認める洗練された吟醸香とスッキリと淡麗を極めた上品な味を楽しんでみてはいかがでしょうか

※山田錦使用国産醸造アルコールを用いた「特撰大吟醸【笹屋茂左衛門】」は2019年秋に発売されます。ご予約はお早めに!

Amazon特撰大吟醸【笹屋茂左衛門】はこちら

日本酒に加えられる醸造アルコールは合成アルコールではない

味噌汁

醸造アルコールは日本酒以外の食品にも使われています。

身近なところでは、味噌・醤油・麺類・かまぼこ、お菓子ではカステラや餡類などに保存のために使われています。

醸造アルコールは日本酒の吟醸香を得るために必要不可欠

大吟醸や吟醸を飲む時に感じる、うっとりするほどのフルーティーな吟醸香…。この吟醸香は醸造アルコールなしでは生まれません

理由は、「香りの成分はアルコールに溶けやすい」という性質を持っているから」です。

製造過程でもろみを絞ることで日本酒と酒粕に分かれますが、そのままではせっかくの香りが酒粕に残ったままとなり、香りのない日本酒が出来上がります。しかし醸造アルコールを加えることで、世界中の人を魅了する吟醸香が日本酒に留まるのです。

このことは一朝一夕にわかったわけではなく、酒造研究者の努力によってやっと知り得た事実なのです。

したがって、全国の鑑評会に出される日本酒のほとんどには醸造アルコールが入っています。

吟醸香をお酒に移すため以外に醸造アルコールを加える目的は以下の通り。

  • 米の旨みを残して発酵を止める
  • 酒質を安定させる
  • 見た目をクリアにする
  • 劣化を防止する
  • 華やかな香りの吟醸香を開栓した後にも持続させる

醸造アルコール入り日本酒だから頭痛がする?

まぶしそうにする女性

中には醸造アルコールのことを化学合成によって作られる合成アルコールと勘違いして拒絶反応を起こす人がいます。頭痛の原因と考える人もいます。しかし、化学合成された合成アルコールは食品衛生法により食品添加物としては使用できないことになっています。

頭痛は不規則な生活やストレスなどが原因で起こることもあります。お酒を飲む時に体調が悪ければ、その日は休肝日にする勇気を持ちましょう。

普通酒と合成清酒は醸造アルコール入りでも人気は不動

 

 

現在でも醸造アルコールを使ってはいても「普通酒」の人気は高く、大手メーカーや各酒造での主力商品となっています。

 

「山田錦の等外米を使った普通酒」についてはこちら

🍶日本酒メディア

🔸この旨さでこの値段?山田錦使用の【普通酒おすすめ5選】口コミ付き🔸

山田錦を使った普通酒の魅力と蔵元入魂のおすすめ普通酒5選をご紹介します…

普通酒の売り上げは特定名称酒の約2倍

また、普通酒に関しては、2018年の出荷数は特定名称酒の1.8倍、大吟醸や吟醸酒の4.2倍になっています(データ出典:食品産業新聞社)。これは、経済的な上に味の良い普通酒もあるからだと考えられます。

しかし、もっと経済的で、かつての三増酒に近い合成清酒というものも存在します。

米不足時代に出現した三増酒や密造酒はとっくの昔にその役割を終えて消滅したかのように思えますが、なんと三増酒だけは国によって廃止される2006年まで存在していました。

「醸造アルコール」の表示は「三増酒」を表している、と誤解している人も!

そのせいかもしれませんが、いまだに「醸造アルコールを加えた日本酒」のことを「三増酒」と誤解している人も多いのです。

このような誤解が「純米酒オンリー」な人を生み出している原因の1つかもしれません。これは、日本酒業界が醸造アルコールについての正しい知識の普及を今まで怠ってきたから、とも考えられます。

合成清酒の売り上げは横ばい

合成清酒は日本酒ではありませんが、醸造アルコールをたっぷり使っているので例としてあげさせていただきます。

※酒税法では合成清酒は「清酒に類似するもの」と規定されています。

合成清酒は米と米麹を使っているものもありますが、主に「水と醸造アルコール」が原料です。しかし、それではなんの味も風味もないため、

  • 甘味の代わりにブドウ糖、高果糖コーンシロップ(果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖)
  • 旨味の代わりにうま味調味料(グルタミン酸ナトリウム)
  • 酸味の代わりに乳酸、またはコハク酸
  • 品質安定のためにポリリン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、酢酸ナトリウムなど

を添加して日本酒もどきの味を作っています。

まるで三増酒の再現のようですが三増酒ではありません。三増酒は僅かながらもお米を使っていたので、合成清酒はますます人工的と言えます。

単位:千キロリットル

日本酒生産量 合成清酒生産量
昭和45年(1970年) 1257 32
平成29年(2017年) 411 29

 

ところが、特定名称酒の人気は上昇しているものの総量としての売り上げが芳しくない日本酒に対して、合成清酒の売り上げ割合は平成19年までは増加の一途をたどっていたのです。それから平成29年にかけて少々減少こそすれ、醸造アルコールたっぷりなのに激減はしていません。(データ出典:国税庁酒のしおり

これは価格が安い、ということが影響しているのでしょうが、醸造アルコールを多量に使っても純度が高いことから味を損ねるものではないことがわかります。

シャンパンもスコッチウイスキーも酒精強化ワインもアルコール添加酒

シャンパンもスコッチウイスキーも酒精強化ワインもアルコール添加酒と話す女性

アルコールを加えているのは純米酒を除く日本酒だけではありません。

シャンパンには「門出のリキュール」添加

 

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Yukari EBATAさん(@sommeliere1226)がシェアした投稿 – 2019年 3月月5日午前6時41分PST

高級スパークリングワインで世界的に有名なシャンパンは、澱を除去した後の目減りを埋めるためにサトウキビ糖を加えたリキュールで糖分を添加します。現代では均質化するために機械で添加されますが、このことをドサージュといい「門出のリキュール」と称しています。

これはシャンパンの作り手が、自分のお酒を意図するスタイルに作り上げるための最後のタッチと言われており、その後、瓶に打栓されて15ヶ月以上寝かせて出荷され、私たちのテーブルを華やかに彩ってくれるわけです。

スコッチウイスキーには「グレンウイスキー 」添加

 

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いがさん(@igapon70)がシェアした投稿 – 2019年 3月月31日午前3時55分PDT

また、日本で「世界5大ウイスキーの1つ」とされるスコッチウイスキーも然り。そのままではくどい味で、地元でしか飲まれていなかったスコットランドのシングルモルトウイスキーですが、蒸留酒である無臭のグレンウイスキーを添加する事で、ここまで世界中の人を魅了する洗練されたウイスキーに変化したのです。

酒精強化ワインには「スピリッツ」などを添加

ワインと軽食

南欧の国々のお酒シェリー・マルサラ・ポート・マデイラなどにもアルコールが添加され、酒精強化ワインと呼ばれています。

  • 辛口のシェリー酒には95度のスピリッツや白ワインなど
  • マルサラは醸造アルコールなど
  • ポートは77度のブランデーなど
  • マデイラは95度のスピリッツなど

が加えられ、その味は大航海時代から現在に至るまで世界的に認められています。

ご紹介した海外のお酒は、アルコールを添加しなければここまで世界的に有名にはならなかったでしょう。

つまり、

アルコールを添加する事でそのお酒の味は格段に美味しくなることは、すでに世界的に承認されている

ということになります。

「日本酒と醸造アルコール」のまとめ

日本酒 おちょこ

日本酒の歴史は長く、先人たちは常に味の向上を目指してきました。

その向上心が、日本酒はこうあるべき、と言う単なる思い込みや伝習にとらわれず、新しい技術を生み出し、時には淘汰され、そのうちのいくつかが確立されて現代に至り、今日の完成された日本酒を作り出してきたのです。

日本酒の醸造アルコール添加、シャンパンの門出のリキュール追加、酒精強化ワインの存在、ウイスキーのブレンド技術等も最高の品質と味を目指して研究を重ねた結果、完成された技術です。

にもかかわらず、自分の好みで好きな酒の価値を主張し、他の酒を貶め、さらに人に押し付けるとはいかがなものかと思われます。それこそ酒飲みの美学に反する行為、と言えなくもありません。

純米酒には心も体も優しく癒してくれる深い旨みと柔らかなテクスチャーがあるし、醸造アルコールを加えた日本酒ではアロマティックで華やかな吟醸香や高級感のある飲み心地が楽しめます。

醸造アルコールを加えても加えなくても、どちらも私たちの素晴らしい国酒です。

一方だけを愛して他方を避けるのは非常に勿体無い。せっかく日本に生まれて旨い日本酒を飲める環境にいるのだから、難しいことは考えずに、双方の美味しさを思う存分味わおうではありませんか。