酒 お店

大吟醸や吟醸、純米酒ににごり酒、と様々な種類がある日本酒。2019年の清酒製造業の概況(平成29年度調査分)によると、全国の蔵元数は1,415。作られる銘柄は10,000以上と言われています。

日本酒は蔵元の知恵や経験、複雑な要素が混じり合って作り上げられ、それぞれ微妙に違う味を持っています。

ここでは、日本酒初心者の方でもわかりやすいように、日本酒の種類をカテゴリー別に一覧表や画像にしました。

似たような意味の日本酒言葉で悩んでしまった時、今まで」知らなかった日本酒の種類をラベルで発見した時、自分好みの日本酒を探している時などにお役立てください。

まず知っておきたい純米酒と醸造酒の違い

徳利からおちょこに日本酒をつぐ様子

日本酒ってお米からできているはずなのに、どうしてわざわざ「純米酒」と名付けたりするのでしょうか?そして、まるでお米を使っていないかのように、なぜ「醸造酒」なんて呼ぶのでしょうか?

今ではそんな質問を受けたら「そんなことも知らないの?」と笑ってしまうかもしれませが、日本酒を初めて飲んだ私は、当時本気で考え込んだものです。

純米酒 米、麹*、水だけで作られた日本酒。

醸造アルコールは使っていない。

醸造酒 米、麹、水に醸造アルコールを添加して作られた日本酒。

 

*麹とは、お米を蒸して30℃に冷まし、麹菌をふりかけて増殖させたもの。麹菌が成長しながら増殖していく過程で、様々な成分が麹に蓄えられて清酒酵母の栄養源となり、酒質を決める旨味成分にもなります。

醸造酒と純米酒の違いは醸造アルコールが添加(アル添とも言う)されているかいないか、なんですね。

ここで「添加」なんて言葉を使うと、醸造アルコールが体に悪い添加物のように聞こえますが、醸造アルコールはほとんど焼酎と同じと考えてもいいくらい安全です。原材料は食べ物由来で、酒造りに用いる時は30%の度数に減らして加えます。

わざわざ醸造アルコールを加える理由は、日本酒の味を淡麗辛口でスッキリした旨さにして、吟醸香(大吟醸や吟醸酒などのフルーティーな香り)が際立つようにするためです。

【特定名称酒】精米歩合、味わいで8種類に分類

特定名称酒とは「清酒の製法品質表示基準」を満たしている日本酒で、

  • 大吟醸、吟醸、特別本醸造、本醸造
  • 純米大吟醸、純米吟醸、特別純米、純米

に分けられます。これらを精米歩合と味わい、アルコール添加の有無で分類してみました。

精米歩合の分類

(自社作成)

米を磨く度合いが高い日本酒ほどタンパク質や油脂分が少なく、デンプン質だけで作られています。雑味がなくスッキリした味わい、香り高い吟醸香を楽しむことができます。

醸造アルコールを添加するとスッキリした味に仕上がり、あと味も爽やか。それに比べて純米酒はお米の味が生きたふんわりした飲み心地です。

特定名称酒を名乗るためには、

  • 酒造好適米(山田錦など)を使う
  • 酒造好適米であっても等級付けされた米を使う
  • 醸造アルコールの添加は米重量の10%までに抑える

ことも要求されます。

 

もし、等級外のお米を使ったりアルコールを10%以上添加したりすると、「普通酒」と定義されます。

 

酒母で3種類に分類

日本酒を造る時のアルコール発酵のもとになる酒母。醪(もろみ)の発酵に必要な酵母を培養したものです。

酒母は3種類あります。速醸酛(そくじょうもと)、生酛(きもと)、山廃酛(やまはいもと)です。

現在、主な日本酒に使われている酒母は速醸酛ですが、生酛や山廃酛も使われており、それぞれ「生酛仕込み」「山廃仕込み」と呼ばれており独特の味わいがあります。

3種類の酵母の分類

速醸仕込み

酵母菌以外の雑菌が繁殖しないように、人工的に乳酸を加えて作った速醸酛を使った日本酒です。

なぜ乳酸を加えるのか。それは雑菌が酸性を嫌う性質があるからです。雑菌のない速醸酒母が出来上がるまでの期間は2週間です。日本酒造りの工程がスピーディに進み、味わいがシンプルなので、現在では速醸造りは主流になっています。

速醸酒母で作った日本酒の特徴は、

  • さっぱり味
  • 香り高い
  • クセもないので吟醸酒造りに最適

ことなどが挙げられます。

生酛仕込み

人工的な乳酸を加えて造る速醸酵母とは違い、生酛造りは空気中に存在する乳酸菌が乳酸を造るのを待ち、出来上がった自然な乳酸を利用することが特徴です。

空気中の乳酸菌を蒸し米と水、麹を混ぜた蒸し米ミックスに取り込むためには、桶に入れたミックスを櫂(かい)を使った手作業で練ったりすり潰したりしながらドロドロの状態にする必要があります。

この作業を「山卸し」といい、雑菌の繁殖を避けるために厳寒期の深夜に行わなければならないので、大変な重労働でした。

でも、出来上がった生酛造りの日本酒は格別な味わい!コクと旨味がありながらも、スッキリとした飲み口です。

ちなみに現在の山卸しの方法は手作業ではなく、プロペラなどで撹拌しています。

山廃仕込み

上記の生酛仕込みの項でご紹介した山卸し作業。大変な苦労をかけて行われるこの作業をカットしたものが山廃仕込みです。山廃という言葉は「山卸し作業を廃止にした」ことから来ています。

山卸し作業の代わりに投入されるものは「水麹」。麹を水に浸しておくと酵素がにじみ出てきます。この酵素入りの液体を蒸し米にかけまわし(汲み掛け、と言う)て造ります。

山廃仕込みの日本酒は、濃厚で旨味があり、骨太い味わいです。

火入れ回数で4種類に分類

日本酒を作る上で重要な火入れ。日本酒の保存期間を長くして品質を劣化させないための方法です。

火入れの方法は、生原酒をタンクに入れて間接的に60℃から65℃に温め、30分後急激に10℃まで冷やします。

通常、火入れは2回行われますが、火入れをしない日本酒や火入れの回数を減らした日本酒もあり、呼び方も変わってきます。

 

(一般的な) 清酒

 生貯蔵酒

 生詰め

 生酒

・瓶詰め前に2回の火入れ。

・瓶詰め後に2回目の火入れをする事もある。

・火入れは瓶詰め直前か瓶詰め後の1回のみ。

・市場では「生」として流通している。

・火入れは貯蔵前の1回のみ。

・「ひやおろしも」このカテゴリーに含まれる。

・火入れを全くしない本物の生。

 

生貯蔵酒、生詰め、生酒はすべて「生」の字を冠していますが、本当に火入れをしていない日本酒は生酒だけだったのですね!

搾り方で4種類に分類

日本酒を作る時に「上槽(じょうそう)」と呼ばれる工程があります。酒粕を取り除くために醪を濾す作業で「搾り(しぼり)」ともいいます。搾りにもいくつかの方法があり、搾り方次第で味わいが変わってきます。

ここでは代表的な搾り方法を4種類ご紹介します。

これらの絞り方法のうち「ヤブタ式」はもっとも一般的に使われている機械絞りです。遠心分離は最新の絞り方法。その他は伝統的な絞り方法です。

 

ヤブタ式(自動圧搾ろ過機) 機械で圧力をかけて酒を搾り出す方法。

●   搾り終わるまでの時間が短いので酸化が少ない。

●   しっかりと搾り取れるので無駄がなく経済的。

●   普通酒や本醸造に最適。

●   圧力が高いので繊細な大吟醸には不向き。

槽搾り(ふねしぼり、ふなしぼり) 日本古来より伝わる伝統的な搾り方。船に似た細長い箱を作り、醪を入れた酒袋を箱に入れて上から圧力をかけて搾る方法。

●   自然な重みに近い搾り方。

●   圧力がヤブタ式ほど強くはないので、大吟醸などに向いている。

雫(しずく)搾り、雫取り 袋吊りとも呼ばれる。酒袋に醪を入れて吊るし、重力だけでしたたり落ちてきた酒のしずくを集めた日本酒。

●   大吟醸でもさらに上質な日本酒を作る時に用いられる。

●   雑味がほとんどない。

●   スッキリした味わい。

●   取れる量が少ないので高価。

遠心分離 容器に入れた醪を高速回転させ、上澄みだけをとる方法。

●   酒袋に醪を詰めると日本酒に酒袋の匂いや雑味がつくことがあるが、この方法だと匂いや雑味を防げる。

●   日本酒本来の味や香りを楽しめる。

●   回転数を変えればにごり酒も作れる。

 

遠心分離で搾られた日本酒で有名なのは「獺祭」です。遠心分離で搾ると1回に400ℓしか絞れないので効率が悪い方法なのですが、その分日本酒の香りと味が生きています。

 

 

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遠心分離が低価格ヽ(*´▽)ノ♪ #北雪 #北雪遠心分離 #にごり酒 #日本酒 #酒 #地酒 #銘酒 #sake #japanesesake

丹野昭雄さん(@akiotantantan)がシェアした投稿 – 2017年 1月月20日午前12時17分PST

そのほか北雪酒造の「北雪」、勝山酒造の「純米大吟醸 暁」なども遠心分離で搾っています。

通常の搾りと比べると少々割高ですが、試してみる価値はありますよ♪

搾りの過程で3種類に分類

 

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こんな酒を仕入れました 花巴の山廃三段仕込み生原酒 純米(吟のさと使用) 「あらばしり」 1番最初に絞って出てくる酒 「中取り」 ちょっと圧をかけて出てくる酒 「責め」 ぎゅっと絞って出てくる最期の部分 同じ酒だけど絞りの違いを楽しめる3本です。 在庫の関係で いつも通りすぐ呑めないけど 気がついたらメニュー表に載ってると思われ(笑) いやぁ〜 マスターが1番の楽しみ。最近花巴に関連する色んな人に出逢うので縁って面白いね(笑) #日本酒BAR畠山#日本酒BAR#日本酒バー#日本酒#酒#新町BAR#新町#心斎橋BAR#心斎橋#西大橋BAR#西大橋#朝4時まで営業#花巴#山廃#三段仕込み#純米酒#あらばしり#中取り#責め#生原酒#美吉野醸造 #

日本酒Bar畠山さん(@barhatakeyama)がシェアした投稿 – 2018年 4月月17日午後6時22分PDT

醪を搾りにかける事で日本酒は濾過されますが、搾りとはそれだけの話では終わらないのですから、日本酒は奥深い!

まず、搾りの最初に出てくるお酒、中段になって搾られるお酒、最終段階で搾られるお酒を見てみましょう。

 

あらばしり

 

一番最初に流れ出てくるお酒を瓶詰めしたもの。

●   「自動圧搾ろ過機」で搾る場合…絞り始めの日本酒。

●   「槽しぼり」で搾る場合…圧力をかける前の、酒袋を重ねただけの時に滲み出た日本酒。

●   「雫しぼり」で搾る場合…酒袋に入れて吊り下げた時、最初にしたたり落ちてきた日本酒。

特徴は、

●   濾されなかった醪成分が混じるため白くにごる。

●   フレッシュで濃厚な風味。

●   力強い味わいと香り。

中汲み(中取り) あらばしりの次に搾られたお酒を瓶詰めしたもの。

●   にごったお酒が出尽くした後なので、白濁がなく澄んでいる。

●   雑味を作る成分が含まれていないので品質が安定している。

●   もっとも良質な部分。

責め あらばしり、中汲みの残りを搾ったお酒を瓶詰めしたもの。

●   アルコール度数が高い

●   雑味は多いが風味がある

 

最近の日本酒は機械で一気に搾り取るので、「あらばしり」「中汲み」「責め」が混じり合い、それぞれの区別がないものが多くなっています。

したがって「あらばしり」「中汲み」「責め」の区分をしている蔵元の日本酒は普通の日本酒よりも手間暇をかけて作られている、と言えますね。

にごり酒は3種類に分類

「あらばしり」が白濁している事でにごり酒と説明しましたが、一言でにごり酒とは言っても一種類ではありません。ここからは女性にも人気の高いにごり酒の種類と特徴をご紹介します。

おり酒

「おり」とは日本酒の濁った部分のことを指します。

醪を絞る時に袋に入れますが、そのまま搾っても醪の白い部分は濾されずに日本酒に入ってしまいます。通常はそのまま置いておくことで白い部分は沈殿して上澄みが残ります。その上澄みを利用することが普通なのですが、おり酒は敢えて白い部分(おり)を瓶詰めしたものです。

おりの中には醪や酵母も入っているので、おり酒の味は普通の日本酒よりも濃厚に感じられ、甘みもあります。おりの正体は酒粕。つまり、おり酒はビタミン類もたっぷりの栄養ドリンクのようなものなのですね♪

ささにごり(うすにごり)

日本酒が少々濁っている程度のにごり酒です。にごり部分はごくわずかなので、日本酒の繊細な旨さとすっきり感に加え、お米の旨味も楽しめるにごり酒です。

活性にごり

「和風シャンパン」とも呼ばれているにごり酒です。火入れをしないため、醪の中の酵素の発酵が続いている状態です。

お祝い事やパーティで使われる事も多い活性にごり。開ける時には要注意!ゆっくりと開けないと炭酸ガスが勢いよく出て、お酒が吹きこぼれてしまい、もったいない事になる場合もあるからです。

さらりとしたにごり酒もおすすめですが、こってり系で栄養たっぷり、美容にも良さそうなにごり酒がお好きな方には「飛騨のどぶ」はいかがでしょうか。

https://www.instagram.com/p/BtvguwtAglb/?utm_source=ig_web_copy_link

どぶろくではなく正真正銘の日本酒ですが、本当に「ドロっ」とした口当たり。飲むというよりは食べる、と表現した方が合っているにごり酒です。

まとめ:日本酒探しはデータベース利用、という手もあり!

スマホを見る女性

日本酒を様々な角度から種類分けしてご説明しました。でも、「今晩は生酛仕込みで甘口のにごり酒を熱燗で飲みたい気分!」「あの蔵元の日本酒、美味しかったけど名前忘れちゃった」みたいに具体的な銘柄を知りたい時には、データベースを利用しましょう。

おすすめは「さけのわ」。今飲んでみたいお好みの1本を見つけることができます。都道府県ごとの日本酒の特徴もわかります。

さらに便利なのは、飲んだ日本酒を記録する機能。「今飲んでる日本酒、気に入ったから忘れないように記録しとかなきゃ」な時に重宝します。スマホで画像を撮り、簡単なコメントをつけて保存すれば「こないだ飲んだの、なんだっけ?」が減少します♪

さけのわアプリのダウンロードはこちらから。

酒造名だけ覚えている場合は、日本酒情報を発信しているWebメディア「SAKETIME」のデータベース「酒造情報」を利用してはいかがでしょう。日本だけではなく海外の蔵元やおすすめの銘柄なども調べることができます。

こちらはアプリではなく、このページから。

参考資料:

国税庁「企業数・製成数量・移出入数量(販売数量規模別・企業タイプ別)