熊本城

火の国熊本といえば、酒どころというイメージが強いものの、アルコールの種類としては「焼酎」づくりが盛んというイメージを強く持っている方が多いものでしょう。

しかし、特定名称酒の吟醸酒づくりに欠かすことができない熊本酵母(協会9号)が開発された土地が熊本であり、日本酒の世界でも熊本は酒どころとして広く認知されています。

熊本には阿蘇や九州山地を代表として多くの清冽な伏流水が摂れることでも知られており、良質な肥後米は適合米として全国的にも高い評価を受けているのです。

ここでは熊本の日本酒の特徴と、贈答品などにおすすめできる熊本の日本酒を厳選して7本ご紹介いたします。

熊本の日本酒の歴史

阿蘇山

熊本には独自の酒文化が存在します。夏は暑く、冬は寒い。こんな両極端な気候を持つ熊本では、もろみに木灰を入れることで腐らずに長期保存が可能になる赤酒が発展しました。

赤酒は、「灰持酒(あくもちざけ)」の一種であり、江戸時代に入ると御国酒として守られることになり、清酒造りは藩内では製造禁止、輸入も禁止といった政策がとられており、この当時の熊本県民は清酒を口にすることがほとんどなかったわけです。

明治維新と西南戦争をきっかけにして、それまでは「旅酒」として固く禁止されていた清酒が多く持ち込まれるようになり、熊本県内の酒蔵でも清酒の製造に取り組もうという機運が生まれました。

熊本の日本酒は、時代が進むごとに灰持酒を加熱におって低温殺菌を行って造られる火持酒(ひもちざけ)というものに変化をしていきます。

その後、清酒の酒質の向上を目的として、県内の蔵人がお互いに協力し、研鑽を重ねて1879年に熊本県酒蔵人組合を結成することになります。

1900年代に入ると、後世で「酒の神様」と呼ばれるようになる野白金一が熊本税務監督局に赴任し、技術指導や酒造改善を行っていきました。

その後、熊本酒蔵人組合が設立した熊本県酒蔵研究所が発足され、初代技術長として野白氏が就任。野白式天窓、二重桶方式といった酒造りには欠かせない技術を考案し、現代の熊本の酒造りの基礎を作り上げたという歴史があるのです。

熊本の日本酒の特徴

熊本城

熊本には阿蘇の山々があります。その伏流水を始め、湧き水も多く摂れる熊本は、「火の国」の他にも「水の国」と言われるほどに良質な水が摂れる地域です。

その証拠として全国的に高い評価を受ける米や、果物、農作物といったものが栽培されており、農業県でもあるのです。

美味しい水と米が存在するのですから、美味しい日本酒が存在しないわけがありません。

もともと「酔うための酒造り」を行っていましたが、明治以降になってからは「美味しい酒造り」が盛んになりました。

その名残りがあるからか、全ての銘柄とは言いませんが、熊本の日本酒は濃醇甘口なタイプが多く見られます。

熊本というと特に球磨焼酎が有名ですが、県北部には10もの蔵元が存在しており、酒造りに取り組んでいます。

特に現在の吟醸酒の礎になったともいわれる「協会9号酵母」を世の中に広めたのも熊本であり、別名熊本酵母とも言われています。

一時期は、この熊本酵母を利用した大吟醸酒の大半が、全国新酒鑑評会の金賞を独占したいという時期もあったほどです。

上質な水と熊本で生まれた酵母、そして肥後米という三拍子が揃って造られた日本酒は、甘口の九州醤油にベストマッチする濃醇甘口タイプが多いという特徴を持っているのです。

おすすめする熊本の日本酒7選

熊本 日本酒

香露 純米吟醸

蔵元は歴史のところでもご紹介した熊本県酒造研究所です。熊本酵母の生みの親であり、この酵母の維持と管理を担当している研究機関でもあるのです。

そんな熊本県酒造研究所を代表する日本酒が「香露」です。そんな香露の中でも純米吟醸はその代表格。

熊本が誇る豊かな大自然に育まれた酒造米と、阿蘇の伏流水を使って、独自開発した熊本酵母を使って誕生したのが香露 純米吟醸です。

香露純米吟醸は、おだやかながらも華やかな吟醸香と、奥深くどっしりとした味わい。上品な後味が心地よい余韻を運んでくれます。

協会7号酵母を使用し、低アルコールでまるでフルーティーなスパークリングワインのような味わいを持つ「花の香7」はシリーズ化されており、日本酒をあまり飲まない方向けに製造された「鮨びいる」など若い女性や、海外の方でも愉しめるようなユニークな新商品を作り続けている蔵元は、熊本の日本酒造りをリードする存在です。

メーカー 株式会社熊本県酒造研究所
ホームページ http://www.kumamoto-sake.com/intro/kuramoto01.html
アマゾン アマゾン香露はこちら

蝉 純米吟醸

熊本県産の山田錦とレイホウを50%まで精米して柔らかな口当たりで、キリリと辛口に仕上がった純米吟醸酒が蝉 純米吟醸です。

醸造してもすぐには出さず、約1年という長い間、蔵の中で熟成をさせるという手間暇をかけることで、味に深みと膨らみをもたらしてくれます。

綺麗な後味の旨味とおだやかな吟醸香が特徴の一本。蝉という名前は、一年という長い間、蔵の中で寝かす工程が土の中で長い間幼虫として過ごす蝉の姿と重なるため名付けられました。

蔵元の通潤酒造の創業は明和7年(1770年)とかなりの老舗。非常に歴史があり、もともと廻船問屋を行っていた初代が重い年貢に苦しむ集落を救う目的で酒造りを始め、庶民を慰めたとされています。

西南戦争の際には、西郷隆盛が薩摩郡の本陣として利用し、投宿したという逸話も残されています。

メーカー 通潤酒造株式会社
ホームページ https://tuzyun.com/
アマゾン Amazon蝉はこちら

瑞鷹 純米吟醸酒 祟薫 生

自然栽培農法というこだわりの方法で育てられた山田錦と、阿蘇の伏流水を使い、熊本酵母を使って醸造された一本が瑞鷹 純米吟醸酒 祟燻 生です。

ろ過や火入れ、割水を一切行わない生の純米吟醸酒というこだわりが詰まった逸品。

搾りたてをそのまま瓶の中に入れるため、口に含んだときに炭酸ガスの微かなのどごしが感じられます。

何度飲んでも飽きのこない辛口の味、まるでご飯のような米の旨味も感じられます。爽やかに上り立つ吟醸香が特徴であり、白身魚など淡白な魚料理にぴったりの一本です。

蔵元は瑞鷹株式会社。創業は慶応3年(1867年)と歴史があり、もともと肥後細川藩の米の集積地として栄えていた川尻に立地しています。

日本酒造りの他にも酒米の無肥料栽培を行っていたり、低精白米を用いた酒仕込みなども積極的に行っている蔵元です。

メーカー 瑞鷹株式会社
ホームページ https://www.zuiyo.co.jp/
Amazon Amazon瑞鷹はこちら

花の香 純米吟醸 和水

蔵元が立地している和水町で栽培された山田錦のみを原料に使用しており、菊川流域で摂れる伏流水を仕込み水として使用しています。

同じ菊川流域で育てられた山田錦を100%用い、仕込み水は同様の菊川領域。更に和水産の米麴を使用するという和水づくしの純米吟醸酒が花の香 和水。

和水と書いて「なごみ」と読ませることが納得できるような華やかで果実のようなフルーティーな香りと、酸味を感じるキレのある味わい。

和水町という土地を物語る酒という思いが込められた一本です。

蔵元は明治35年(1902年)の創業で、熊本にある他の蔵元と比べると比較的若いですが、地元産の米と水にこだわりを持って造られる一本は、一度は口にしたい日本酒です。

ちなみに花の香酒造は、焼酎の製造も行っており、こちらでの評価も高い蔵元です。

メーカー 花の香酒造株式会社
ホームページ http://www.hananoka.co.jp/
Amazon Amazon花の香 和水はこちら

千代の園 吟醸 熊本神力

酒造好適米の元祖と呼ばれ、幻の酒米ともいわれる「神力」。この酒造好適米を100%使用しており、まろやかでふくらみがある味わいの中にも、キリリとした奥深さを感じられる辛口の吟醸酒が千代の園 吟醸 熊本神力になります。

この吟醸 熊本神力は、2019全国燗酒コンテストプレミアム燗酒部門で金賞を獲得しており、全国的にも人気の高い一本になります。

蔵元である千代の園酒造は、明治29年(1896年)に創業していますが、もともとは米問屋だったこともあって、原料の米には格別にこだわりを持った日本酒造りをするのが特徴です。

戦後に全国で初めて純米酒を販売した蔵元としても日本酒ファンには有名です。熊本の日本酒の歴史のところでも触れた赤酒は、現在は日本料理の調味料として重宝されていますが、その赤酒の製造販売も行っています。

メーカー 千代の園酒造株式会社
ホームページ https://www.chiyonosono.co.jp/
Amazon Amazon千代の園 熊本神力はこちら

美少年 剣門 純米吟醸

美少年を製造していた火の国酒造が破産を申請し、もう美少年を飲むことができないのかと日本酒ファンを悲しませた過去があったものの、その後は株式会社美少年が熊本県菊池市の小学校跡に酒蔵を移し、美少年が復活することになりました。

地元で生産される菊池米を原料に使用し、ミネラル成分が豊富に含まれることで知られている菊池川水系の仕込み水を使用して酒造りを行っています。

蔵元見学も積極的に行っており、外見は完全に学校なのにも関わらず、中身は酒蔵という不思議な光景を見たいと、多くの日本酒ファンが現地を訪れています。

そんな美少年の剣門 純米吟醸は、酸味の甘味のバランスが絶妙であり、ふくよかな米の旨味とコクが口の中に広がる辛口寄りの純米吟醸酒に仕上がっています。

美少年はさまざまなコンクールで金賞を受賞していますが、本商品はロンドン酒チャレンジ2014で金賞を受賞した一本。

すっきりとした味わいは食中酒としての評価も高く、こってりとした焼き魚やてんぷらなどにぴったりの日本酒といえるでしょう。

メーカー 株式会社美少年
ホームページ https://bishonen.jp/
Amazon Amazon美少年はこちら

亀萬 野白金一式九号酵母 純米酒 一回火入れ

日本最南端に位置する亀萬酒造が蔵元であり、南端仕込みという独自の方法を使って熊本ならではの酒造りから生まれた一本が、野白金一式九号酵母 純米酒 一回火入れです。

フレッシュ感のある華やかな香りの日本酒となっており、すっきりとした味わいとほのかな甘みを感じる後味に特徴があります。

常温や冷酒でももちろん美味しくいただけますが、燗酒コンテストプレミアム燗酒部門において最高金賞を受賞しているということもあり、熱燗でいただくことをおすすめします。

酒造りの伝統手法を守りつつ、最新技術を追求する亀萬酒造は大賞5年(1916年)創業の長い歴史を持つ蔵元。日本の地中海とも呼ばれる温暖な日差しが降り注ぐ環境は、一軒すると日本酒造りには向かないと思われがちですが、日本酒造りに適した自然豊かな土地に存在しています。

メーカー 亀萬酒造合資会社
ホームページ http://www.kameman.co.jp/
Amazon Amazon亀萬 野白金一式九号酵母はこちら

熊本の日本酒を手に入れる方法

熊本 日本酒 瑞鷹

ご紹介した熊本の日本酒を手に入れる方法は、インターネットを利用すれば、通販サイトなどで購入が可能になります。

ただし、期間限定の特別純米酒などの希少な特定名称酒の場合、転売目的で買い占めを行い、プレミア価格でオークションにかけるといった厄介な輩が存在するため、手に入れられなくなる可能性もあります。

そういった場合には、特約店をリサーチし、目的の熊本の日本酒を取り扱っているお店で購入しましょう。

定価でなくても問題ないというのであれば、そこまで手間をかける必要はありませんが、ひどい場合には定価の3倍などのコストが掛かってしまいます。

特約店でもインターネット通販は行っているところがありますし、メルマガ登録などをすれば、一般顧客よりも先に入荷情報が送られてくるため、いくつかの特約店のメール会員になっておくことをおすすめします。

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土地にも負けない情熱が燃える熊本の日本酒を堪能あれ

熊本の日本酒を味わおうと話す男性

いかがでしたか。

火の国とも言われる熊本は、水源に恵まれた水の国でもあり、焼酎のイメージが強いものの、独自の熊本酵母と肥後米や無肥料酒米などを使って日本酒造りも盛んに行われています。

高タンパク低カロリーであることが分かり、女性を中心に爆発的な人気を博している桜肉こと、馬肉料理を筆頭にして、団子汁や高菜めし、高森田楽、からしレンコンなど美味しい郷土料理に舌鼓を打ちながら、土地にも負けない燃えるような情熱で造られている熊本の日本酒を愉しんでみてはいかがでしょうか。