
白く濁ってトロリと甘そうなにごり酒とどぶろく。にごり酒とどぶろくが白く見えるのはお米からできたもろみが含まれているから。酒粕と同じく栄養豊富で甘酒にも似ていることから女性にも人気があります。
しかし、にごり酒と一口で言っても搾り工程の違いによって名前が違ってきます。また、どぶろくも日本酒と原料は同じですが、税法上は日本酒のカテゴリーには入っていません。
そこで今回は、
- にごり酒とどぶろくの違い
- おすすめのにごり酒
- おすすめのどぶろく
- [銘柄別]にごり酒に合うおつまみ
- [銘柄別]どぶろくに合うおつまみ
についてご紹介します。
意外と知らない『にごり酒とどぶろくの違い』
にごり酒とは
にごり酒とは、お米、米麹、水を合わせて発酵させ、できたもろみを酒袋に入れて絞ったものです。この絞る工程のことを「上槽(じょうそう)」と言います。
この動画は、槽(ふね)と呼ばれる箱にもろみを入れた袋を置いて絞っている様子を紹介したもの。日本酒を絞る方法は他にも3種類あります。
※上槽や日本酒造りの詳しい工程についてはこちら
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上槽が済んだら、2番目の絞り工程である澱引き(おりびき)をします。澱引きとはタンクの中に上槽後の日本酒を入れて静かに置いておくことです。
すると、タンクの底部分に澱が溜まってくるので、上澄みだけを汲み出します。この上澄み部分の酒が「無濾過生原酒」。
また、このタンクの底部分に溜まっている白く濁った酒を使ったものが「おり酒」と呼ばれる日本酒で、これらもにごり酒の一種です。
どぶろくとは
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では、どぶろくはどのように造られているのでしょうか?
どぶろくとは、もっとも原始的な日本酒の造り方で出来たお酒です。
複雑な工程を経る日本酒とは違い、お米、米麹、水を混ぜて発酵させ、そのままの状態で飲むお酒のことを言います。上槽、澱引きの絞り工程はありません。したがって、どぶろくは日本酒の範疇には入らず「その他の醸造酒」と分類されています。
「どぶろく」について
酒税法第3条第19号に定められている「その他の醸造酒」のうち,米(自ら生産したもの又はこれに準ずるものとして財務省令で定めるものに限る),米こうじ及び水を原料として発酵させたもので,こさないものをいいます。
しかし、どぶろくには未発酵の米のデンプンや糖分がそのまま残っているため、口当たりもやわらかく、栄養分も多く含まれています。
にごり酒とどぶろくの違いを下記の表にまとめました。
酒の搾り作業 | 米、米麹、水で発酵させたもろみ |
活性どぶろく | |
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搾りなし | |
どぶろく | |
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|
上槽
⬇︎ |
活性にごり酒 |
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にごり酒 | |
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澱引き
⬇︎ |
おり酒 |
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無濾過生原酒 | |
無濾過原酒
|
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濾過 (ろか) 活性炭粉末等を投入し雑味を吸着させる作業 |
活性にごり酒、にごり酒、おり酒、無濾過生原酒、無濾過原酒は濾過しない |
にごり酒カテゴリーは、
- 火入れを行わず、酵母が生きた状態のままで発酵を続けている「活性にごり酒」
- 火入れを行い、殺菌した「にごり酒」
- 二度目の濾過を行なった「おり酒」「無濾過生原酒」「無濾過原酒」
どぶろくカテゴリーは、
- 火入れしない状態の「活性どぶろく」
- 火入れをして殺菌する「どぶろく」
に分けられます。
活性にごり酒と活性どぶろくの開栓の仕方
どちらも火入れを行なっていないので、酵母がまだ発酵中!栓を開ければシュワっと音をたて、泡となって飛び出してくるので開栓するときには注意が必要です。下手をすると瓶の半分くらいが無駄になることもあるんです。
特にどぶろくの場合は、濾過していないので酵母の動きがさらに活発です。慎重に内部の炭酸ガスを少量ずつ抜いていきましょう。
活性にごり酒と活性どぶろくの栓の開け方のコツは、
- よく冷やしておく
- 澱が沈殿した状態にしておく
- 下記の動画を参照して、栓の開け閉めを繰り返す
中にはガス抜き用の栓を使っていないにごり酒やどぶろくもあります。その場合の開栓の仕方は、
① 栓のアルミカバーは外さずに栓に目打ちで穴を開けて貫通させる
② 目打ちは抜かずに突き刺したままにしておく
③ 目打ちを少しずつ緩めて中の炭酸ガスを逃す
④ 噴きこぼれる前にまた目打ちを刺す
⑤ 炭酸ガスが出てこなくなるまで、3、4を繰り返す
⑥ 次に、もろみの中に含まれている炭酸ガスを瓶の口に移動させるために、目打ちを刺したまま瓶を横にする
⑦ 瓶を立てて目打ちを緩めて炭酸ガスを逃す
⑧ 炭酸ガスが逃げたら、噴きこぼれる前に目打ちを刺す
⑨ 6、7、8を繰り返す
⑩ 炭酸ガスが抜けたようなら開栓する。しかし、万が一のことを考え、鍋やボウルの上で栓を抜くことをおすすめ
こりゃ大変!と思う方は、火入れされたにごり酒、どぶろくの購入をおすすめします。
おすすめ!人気の『にごり酒』*3選
にごり酒には、どぶろくのようにとろりと濁っているものからサラっと喉越し良く飲めるものまで勢揃い。まずは人気のとろり系にごり酒からご紹介します。
まるでデザートワイン『白川郷 純米にごり酒』三輪酒造(岐阜)
「白川郷 純米にごり酒」は普通の日本酒の2倍量の酒造米を使用して造っています。お米の美味しさをたっぷりと味わえる、どぶろく寄りのにごり酒です。もろみをたっぷりと残した製法で、旨味の中にもほんのりとした甘さが感じられます。
酸味は2.0。クリーミーでトロッとしている割には飲んだ後にしつこさを感じません。
2回の火入れ処理がなされているので、炭酸ガスで噴出する心配はなし。取り扱いに神経質にならないですみます。
濃厚味の「白川郷 純米にごり酒」は、10℃くらいが飲み頃です。夏には氷を浮かべてオンザロック、上澄みを飲みすぎてドロドロになったら炭酸割りにしたり純米酒をミックスして飲むのもおすすめです。
「白川郷 純米にごり酒」おすすめおつまみは「かぐら南蛮味噌」(新潟)
ご飯に合う料理なら、ほとんどが「白川郷 純米にごり酒」のおつまみになります。焼肉、焼き鳥、焼き魚ともベストマッチ!
しかし、手間をかけずにおつまみを用意したいのなら、田舎仕立ての「かぐら南蛮味噌」がおすすめです。キュウリ、セロリ、ニンジンなどのスティック野菜に添えて、お手軽にオツな味を楽しみましょう。
新潟土産にもらったかぐら南蛮味噌がいい香りであまからしょっぱうまくて無限にご飯が減る
うんめよー!!!!! pic.twitter.com/hPxM7neQgW— つきそら (@lunasky1969) January 31, 2019
白いジャパニーズシャンパン『北あきた にごり酒』北鹿(秋田)
火入れなし、瓶の中で発酵し続けている「北あきた にごり酒」。火入れ処理されたにごり酒にくらべて開栓に気を使いますが、飲んでみると開栓の手間暇なんてなんのその。それに酵母が生きているということは、発酵による味の違いを毎日楽しめる、ということだから、開栓の苦労も報われるというものです。
「北あきた にごり酒」はそれほど甘くはないので、初めてにごり酒を飲む人にもおすすめ。お値段もリーズナブル!普段飲みにも最適です。
「北あきた にごり酒」おすすめおつまみは「ブッラータ」(福井)
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発泡性の「北あきた にごり酒」はチーズと合わせてみてはいかが?「北あきた にごり酒」は炭酸を含んでいるので、あっさりさっぱりした飲み心地。
おつまみには同じくあっさり系のモッツアレラチーズがぴったり!モッツアレラチーズが切りにくい場合はゆで卵用のエッグスライサーを利用してカットしましょう。トマトと一緒に盛りつけて「なんちゃってカプレーゼ」にしてもおしゃれです。
また、たまには奮発して「ブッラータ」をおつまみに乾杯するのもお洒落!丸いブッラータにナイフを入れたらとろとろと出てくるモツァレラチーズと生クリーム!ブッラータを味わったら、「北あきた にごり酒」の爽やか炭酸がお口の中をスッキリさせてくれます。
日本酒初めてさんも惚れ込む味『にごり酒 五郎八』菊水酒造(新潟)
お米の旨味をギュッと閉じ込めた「にごり酒 五郎八」。一口含んだ印象は、>とにかく濃厚!旨い!甘い!昔の日本酒とはこんな味だったのでは、と思えるほどお米お米した素朴な味わいです。流行りの「淡麗辛口」にいまだに馴染めない人の救世主とも言えます。
ちょっと注意していただきたいのは、甘旨いとは言え、アルコール度数はしっかりめの21度。知らず知らずのうちに盃が進んでしまうので、明日もお仕事がある人は要注意。
また、「にごり酒 五郎八」」は秋冬だけの季節限定酒。一年中「にごり酒 五郎八」を飲んでいたい人は、たっぷりまとめ買いして日本酒用冷蔵庫で保存しておくことをお勧めします。
※日本酒の保存に適した専用冷蔵庫についてはこちら
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旨味の強い「にごり酒 五郎八」はカクテルにしても味がぼやけません。詳しい「にごり酒 五郎八」カクテルの作り方は菊水酒造のサイトで確認できますが、菊水酒造が知らない私の「にごり酒 五郎八」カクテルをここで極秘裏にご紹介したいと思います。
- プレーンヨーグルト:適量(私は200gくらい)
- 「にごり酒 五郎八」:適量(私は100mlくらい)
- 混ぜるだけ
…と、限りなくアバウトでイージーなカクテル(?)ですが、心地よく酔えて翌朝の目覚めもスッキリ、お肌もお腹も快調な一石二鳥カクテルです。美肌や腸活に興味がある方はぜひお試しを!
※日本酒の健康・美容効果についての記事はこちら
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「にごり酒 五郎八」おすすめおつまみは「赤てん」(島根)
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旨味とコクでいっぱいの「にごり酒 五郎八」」には、ピリッと唐辛子が効いたおつまみが最高に合います。
そこでおすすめしたいおつまみが「赤てん」。島根県浜田市で獲れたスケソウダラなどのすり身に赤唐辛子を混ぜてパン粉をつけて揚げたもので、外はサクッ。一口頬ばればお口の中は魚の旨味でいっぱい。赤唐辛子のピリリ感がいいアクセントになって「にごり酒 五郎八」もグイグイいけます!
おすすめ!人気の『どぶろく』*3選
明治時代に国策により自家醸造が禁止されたどぶろく。しかし、豊穣祈願や地域振興策の一環としてどぶろくを造っても良い「特区」が認められるようになりました。
どぶろくとは甘くてドロドロしているもの、との印象をお持ちの方が多いのですが、特区で醸されたどぶろくには賞を取ったり、日本酒に近い洗練された辛口のものまで、その味わいには幅広いものがあります。そんな個性のあるおすすめどぶろくのご紹介です。
蕎麦屋が作った『雪輝』まるいち(新潟)
なんとお蕎麦屋さんが造ったどぶろくです。使用したお米はまるいちの自家栽培米で、ブランドはもちろんコシヒカリ、さらに人と地球に優しい有機米です。また、高級日本酒用の酵母を使用しているので、馥郁とした香りも楽しめます。
まるいちが造るどぶろくには、火入れ処理して旨味を出した「雪輝(黒ラベル)」と火入れ処理なしの「雪輝(生タイプ)」があります。「「雪輝(黒ラベル)」はアルコール控え目で旨味が強く、「雪輝(生タイプ)」はほんのり甘く、炭酸の発泡で爽やかな口当たりが特徴です。
→Amazonどぶろくはこちら
「雪輝」おすすめおつまみは「へぎ蕎麦」(新潟)
小千谷市真人『まるいち』のへぎ蕎麦 五合(二人前)と、ふきのとうの天ぷら 桜塩。何度も来ているけど変わらず美味しくて好き pic.twitter.com/p2HZZ85awn
— 朗読P, et al. (@Whitethroat) 2018年3月20日
「そば前」という言葉がある通り、蕎麦屋で蕎麦が出来上がる間に飲む日本酒の美味しいこと!蕎麦屋さんが用意している天ぷらをつまみながら蕎麦を待つ…。その時間がまるで明日遠足に行く子供のようにワクワクしてしまうんですよね。
もちろん、そば前にどぶろくが合わないはずはありません。日本全国のどぶろくのお店を見ても、蕎麦とセットになっていることが多いものです。
…と言うことで、「雪輝<黒>」におすすめの蕎麦はもちろん、新潟県は魚沼のソウルフード「へぎ蕎麦」。
海藻の布海苔(ふのり)と蕎麦粉を合わせて手打ちしたものです。わさびではなく、からしをたっぷり乗せたへぎ蕎麦をつまみにどぶろくを飲む、なんてオツな取り合わせ。ぜひ、お試しあれ!
米粒感たっぷり『天領どぶろく』天領酒造(岐阜県)
おかゆのようにドロドロしたどぶろくが多い中、しっかりお米が溶けきれていない部分がなんとも旨い「天領どぶろく」。甘いだけではなく酸味も感じられて軽快な味わい!さすがに日本酒を知り尽くした酒造が醸すどぶろく。味のバランスがとれています。
アルコール度数は10℃と低め。ラベルも女性を意識したデザイン。甘酒がわりに飲むのも良さそうですね。火入れなしの生きたどぶろく。シュワっとする炭酸の爽やかさを味わうためには、冷やして飲むのがおすすめです。
「天領どぶろく」おすすめおつまみは「秘伝豆酩(ひでんとうべい)」(熊本)
先程の答え……
豆腐のもろみ漬け《秘伝豆酩(とうべい)》でした。
熊本・五家荘周辺に伝承された平家落人の保存食「豆腐の味噌漬け」を現代風にアレンジ。クリーミーでとってもまろやか、しかも塩分は控えめ♪日本酒と一緒にちびちびやりたい最高の肴です pic.twitter.com/fm8mAl9a9r— 日本名門酒会 (@meimonshu) 2017年9月14日
お米のつぶつぶを感じながら飲む「天領どぶろく」のお供には、チーズのようにクリーミーな豆腐のもろみ漬けがベストマッチ。
豆腐の味噌漬けももちろんおつまみとして美味しくいただけるのですが、熟成したもろみの旨味でコクを増した豆腐はどぶろくの強さに負けないので、さらにおすすめなんです。
ちょっとずつお箸で秘伝豆酩をつまんでお口の中でとろけさせ「天領どぶろく」をチビチビ味わってください。幸福感が止まらなくなること請け合いです!
大人の辛口『どぶろく卓』どぶろく荘(新潟)
完成度の高い辛口どぶろくといえば「どぶろく卓」。旨味は濃厚なのに酸味と切れの良さが上質な日本酒を思わせます。その結果が「TOKYOどぶろくフェスタ2010大賞」や「全国どぶろく研究大会最優秀賞」の受賞に現れているのですね!
甘口のどぶろくがお好みの方には「どぶろく牧の初雪」をおすすめ。
濃厚な旨味でスイスイ喉を通っていきます。どぶろく特有のドロドロ感はなく、どちらかといえばサラッとした感覚です。
「どぶろく 卓」と「どぶろく 牧の初雪」を醸している「農家民宿どぶろく荘」は、「どぶろく特区」の認定第一号の地域(新潟県上越市牧村)にあります。
両どぶろくとも第一号認定の貫禄をしっかり持ったどぶろく、ということが納得できる味。普段飲みのどぶろくに飽きて、上質のどぶろくを飲みたくなった時にもおすすめです。
※「どぶろく特区」については以下の文をご参照ください。
規制を緩めて地域の活性化を目指す国の「構造改革特区」の一つ。年間の醸造見込み量が酒税法で定めた最低6キロリットルに満たなくても、特区内の農業者が自家産米で仕込み、自ら経営する民宿などで提供するならば酒造りの免許を取得できる。
「どぶろく卓」おすすめおつまみは「極上珍味やわらかめ3種セット」(新潟)
完成度が高い辛口どぶろくには、日本酒におすすめの「極上珍味やわらかめ3種セット」を選んで正解。
イカの頭の軟骨を炙り、燻製のような味わいを楽しめる「炙りなんこつ」、半生タイプで肉厚の「一夜干しイカ」、貝の旨味と唐辛子のピリ辛感が渾然一体となった「さくら貝」。いずれも柔らかめに調理されています。
冷蔵庫に常備しておけば、急な来客でも余裕でワンランク上のおもてなし!
まとめ:にごり酒とどぶろくは健康にも貢献!
にごり酒、どぶろくにはもろみが多く含まれているので栄養がいっぱい。腸内環境を改善して免疫力を向上させる乳酸菌も含まれています。
にごり酒もどぶろくも発酵食品。人間の体には限られた数の酵素が存在していますが、発酵食品は私たちが持つ酵素の無駄使いを防ぐ働きもしてくれます。
最近では免疫力アップや酵素サプリも多く発売されていますが、どうせなら楽しく免疫力を上げたいもの。
肝臓に負担がかかからないよう留意しつつ、にごり酒やどぶろくで健康体を美味しく維持していきましょう!