
最近耳にする、地方の小さな酒蔵の廃業。ハードワークな酒蔵での人手不足からくる生産量の減少。
悲しいことですが、地産地消と家族経営で持ち堪えてきた酒蔵は、地域での過疎化が進行すると売り上げも生産量も減り、急速に弱体化します。そんな日本酒業界の問題をなんとか底上げしたい、との思いから活動を始めた集団があります。
今回は日本酒愛が高じて、自前の蔵を持たず日本酒造りを始め、「日本酒応援団」についてご紹介します。
日本酒応援団が解決したい問題点とは
地酒を醸し、地元中心で地元で採れる食材に合う日本酒を古くから商ってきていたのに、人口の減少で日本酒の販売は頭打ち。酒蔵は廃業あるいは縮小。酒米も需要が減り、お米を作る人がいなくなって荒れ果てていく田圃…。
大手酒蔵はメディアでコマーシャルを流して「人気」の日本酒を大量生産しているのに対し、地道に土地の人や食べ物に合わせた酒造りをしていた個性的な地酒の酒造は消滅の危機にあります。
そんな「小規模酒蔵の廃業」と「酒蔵周辺の耕作放棄」問題の解決は困難に思えますが、「しかし、方法はある」、と日本酒応援団は考えています。
その解決方法とは、
- 日本酒の造り手と販売とのギャップを埋め、双方のコミュニケーションを図るために全工程に日本酒応援団が参加すること
- 地方の無名の銘酒をサブスクリプションで頒布して、もっと小さな酒造が醸す日本酒の良さを知ってもらうこと
お米作りから日本酒醸造、販売まですべてのポジションに一貫して関わり、「日本酒のあるライフスタイルを世界中に広める」ために活動している集団が「日本酒応援団」です。
日本酒応援団のメンバー
蔵こそ持ち合わせていませんが、彼らは田植え、日本酒の開発、製造、国内外での販売を全てこなしています。メンバーは個性溢れる人の集合体。彼らの前職も、呆れるほどバラバラです。
- 東大卒業後、三菱商事勤務。その後、外資系投資会社に転職、スタンフォード大にも留学してMBAを取得。その後、ITベンチャー企業設立の経験者
- 金融、大手広告会社での経験者
- デザイナー
- 東京農業大学で醸造を学んだ日本酒造りの専門家
- 日本酒ソムリエ資格保持者
- 大阪大学医学部出身者
etc…
それぞれのバックグラウンドに違いはあるものの、彼らには相通じるものがあります。それは、
そんな彼らに高島屋も企業提携でバックアップ。
高島屋からも従業員を酒蔵へ送り込み、日本酒造りのプロセスに関わることで日本酒造りを肌で感じ取り、その経験を日本酒販売に生かすことで地方の日本酒の復興に助力しています。
日本酒応援団プロジェクトの始動
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日本酒応援団が設立されたきっかけは、2014年の、ある日の飲み会。
後日、日本酒応援団のメンバーとなる1人が、歴史ある実家の酒蔵の生産量減少を嘆いたことから偉大なチャレンジが始まりました。このままでは小規模な地方の酒蔵が続々と廃業していき、自分の好きなタイプの日本酒も飲めなくなってしまう…と皆が危機感を抱いたからです。
では、どうすればいいのか。
答えは1つ…「自分たちは蔵を持たないが、すばらしい日本酒を造ってみようじゃないか!」。
2週間後に日本酒造りに着手した日本酒応援団
決定したら即行動。
2週間後に彼らは、上記のメンバーの1人が心配している蔵を実際に訪れて日本酒造りを提案。酒蔵に承諾を得た後、何の報酬もあてにせず、手弁当で日本酒造りに取り掛かります。
加えて仕事の傍ら、Facebookを立ち上げて全国に発信。すると、各地からボランティアが集まり、彼らのとって初めての「純米無ろ過生原酒」がめでたく完成。
ほんの1タンクだけではありましたが、完成した日本酒は、なんと2か月半で完売したのです。
石川の老舗『数馬酒造』が日本酒応援団のパートナーに
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小さな蔵でボランティア集団が日本酒を造ったニュースは、地元だけではなく全国的なメディアに瞬く間に取り上げられ、石川県能登町の実力派酒蔵「数馬酒造」がパートナーとして申し出る奇跡がおきました。
数馬酒造は江戸時代から味噌、醤油の醸造をしていた歴史がありますが、日本酒造りも150年、という老舗。そんな酒蔵との関係ができたことが、後の日本酒応援団の結成に結びつきます。
日本酒応援団の特徴
自分の蔵を持たず、ファブレス※で日本酒造りをしている日本酒応援団。
彼らのこだわりは、
- 日本酒本来の味を楽しめる「純米大吟醸 無ろ過生原酒」の生産だけにこだわる
- 稲作の段階から、国内はもとより海外での販売までトータルで自分たちが関わる
※ファブレスとは:自社工場を持たず製品を作り出すこと。商品開発から販売までの業務を行います。初期費用が少なく、市場の変化に即対応できるため、現在では収益性の高い企業が取り入れていることで注目されています。アルコール飲料分野ではクラフトビールの委託醸造、日本酒ではWAKAZEなどが有名です。
日本酒応援団の酒の特徴は『純米大吟醸』『無ろ過』『生』『原酒』であること
通常、日本酒は透き通った状態で販売されています。これは「濾過」工程を経ているからです。
しかし、日本酒応援団の日本酒は、「無濾過」でさらに「火入れをしない生酒」。それに、アルコール度数を下げるための加水もしない「原酒」ですから、
- 外観はかすかに濁りがあり、酒の色はうっすらと黄色味を帯びる事がある
- 飲み始めに、フルーツを生かじりしたようなフレッシュな感覚がある
- アルコール感があるので力強い飲み口になることもある
という特徴があります。
日本酒応援団の日本酒は「食中酒」としても「単独」でも美味しい
現在、日本酒の味わいの方向はワイン同様、食事と楽しむ「食中酒」に向かっていますが、日本酒応援団が目指す日本酒のあり方は、食中酒だけではなく単独でも十分に楽しめる日本酒。
食中酒として飲んだ場合でも合わせる食材を選ばないので、グルメな日本酒コアファンからも支持を受けています。
そして現在、大手の日本酒にも負けないポテンシャルを持ちながらも地方に存在しているがために、このままでは無名で消失してしまうであろう地酒の良さを知ってもらう事にまで、日本酒応援団の活動は派生しています。
1県で1蔵の酒蔵と提携する日本酒応援団
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日本酒応援団は、1県1蔵をモットーにして、小規模でも歴史と高い技術がある酒蔵とパートナーシップを締結。
今までも日本酒を世界酒にしたい、というベンチャー企業はありましたが、地酒メーカーの復興までも視野に入れたベンチャーはありませんでした。だからこそ、日本酒応援団に日本で苦戦を強いられている日本酒造に対する愛を感じるのです。
日本酒応援団はパートナーシップ酒蔵の稼働していないタンクを使わせていただき、その土地で作られたお米を用い、自社プロダクトの設計をもとに地元の特色を打ち出した新しい日本酒を完成させています。
そして、
現在では6酒蔵で日本酒の醸造と提携していますが、すべては単一のブランドで販売。
しかし、銘柄名は酒蔵が存在する地域の名前を用い、マークはその土地のシンボルでデザインされているので、その酒蔵の特徴が失われることなく共存することが可能です。
地方の貴重な地酒をサブスクでアピールする日本酒応援団
純米大吟醸無ろ過生原酒を味わっていただくだけではなく、地道に旨い日本酒を造り続けている「隠れた地酒酒蔵の銘酒」をサブスクリプションで体験してもらうことも実践しています(詳しくは後述しています)。
日本酒応援団と提携している6県6蔵
将来的には、30の酒蔵と提携していくことが目標の日本酒応援団。現在日本酒応援団とパートナーシップを構築している酒蔵は、すべて日本酒造りとお米作りに並々ならぬ情熱を抱き、豊富な経験もあるスペシャルな6蔵です。
「KAKEYA 純米大吟醸無ろ過生原酒」島根『竹下本店』×日本酒応援団
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第74代内閣総理大臣、竹下登氏の実家として知られる酒蔵は「出雲誉」「我が道を行く」などの日本酒を醸造。慶応二年から続く老舗ですが、最近ではDAIGOラベルの日本酒も手がけています。
そんな伝統ある酒蔵でも「昔は待ちの営業でも良かったのですが、今の時代、大手メーカーが大量に安いお酒を作る時代。また、洋酒や焼酎などの人気も高く、このままのやり方でいいのだろうか?」と疑問を持つようになったとのこと。
そんな中、竹下本店は日本酒応援団と提携。完成した日本酒が「KAKEYA 純米大吟醸無ろ過生原酒」です。
『KAKEYA 純米大吟醸無ろ過生原酒』についてはこちら
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「NOTO 純米大吟醸 プロトタイプ」石川県『数馬酒造』×日本酒応援団
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持続可能なもの造りを目指している数馬酒造は、創業150年を誇る老舗酒造。地元の耕作放棄地を水田に戻して、そのお米で日本酒を造るなど、日本の農業にも情熱を注ぐ、熱意に溢れる酒蔵でもあります。
今回の、NOTO 純米大吟醸 プロトタイプで使用した酒米は、石川県が10年以上の年月を費やして大吟醸に適した酒米として開発したもの。このお米を使っての試験醸造の許可が数馬酒造に下りたことから造られた日本酒です。
まだ、名前も決まっていない新品種の酒米。しかし、皆さんにはその酒米で醸した日本酒を体験できる貴重なチャンスでもあります。
『NOTO 純米大吟醸 プロトタイプ』についてはこちら
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「AGEO生もと純米大吟醸無ろ過生原酒」埼玉県『北西酒造』×日本酒応援団
日本酒応援団との提携は、今まで考えもしなかった新しいタイプの酒造りの概念を持つスタートになった、と振り返る北西酒造。
北西酒蔵の代表銘柄は「文楽」でした。燗酒にすると美味しいと評判だった日本酒ですが、ここ数年は冷酒ブームのあおりを受けて売り上げは減少。
しかし、北西酒造は日本酒応援団の日本酒に対する姿勢に共感したことで、イタリアンやフレンチにも合う新しい日本酒のインスピレーションが湧き上がり、新しいブランドまでも立ち上げることになります。
その後は生酛造り※にも意欲を燃やし、日本酒の市場を拓げることに積極的にチャレンジ。その結果が、IWC2019「SAKE部門」大吟醸酒の部で見事金賞受賞との形になって現れました。
生酛造り:もっとも労力を必要とする日本酒の伝統的な造り方のこと。自然に存在する乳酸菌や微生物を利用して造られた生酛造りの日本酒の味はコクと旨味に富み、飲みごたえがある一方、造りに手間がかかることから、生酛造りを継承している酒蔵は多くはありません。
地元産のお米を使った「AGEO生もと純米大吟醸無ろ過生原酒」は、生酛らしくコクとボリュームに満ちています。あっさり、スルリの日本酒に 飽き足りない方にもおすすめです。
『AGEO 生酛純米大吟醸 無ろ過生原酒』についてはこちら
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「KAMOGATA 純米大吟醸 無ろ過生原酒」岡山『丸本酒造』×日本酒応援団
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有機米作りにこだわることで有名な丸本酒造は、日本酒造りに使うすべてのお米を自社栽培しています。
しかも、栽培するだけではなく、数値管理や分析も徹底して行うことで究極の日本酒造りを目指しているのです。
KAMOGATAも、蔵元によって大切に育てあげられてきた岡山県産山田錦を使用。日本酒愛で醸された逸品でハッピーになれそうです♪
『KAMOGATA 純米大吟醸 無ろ過生原酒 』についてはこちら
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「KUNISAKI 純米大吟醸無ろ過生原酒」大分『萱島酒造』×日本酒応援団
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「酔っぱらっても、飲み続けられる酒がいい酒なんだ」と豪語するのは萱島酒造の5代目蔵元。「国東の地で、飲み続けてもらう酒造り」を目指し、豪傑さと情けの厚さでも宮崎・国東の人々から慕われています。
明治40年に初めて開催された全国品評会で一等入賞の経歴を持つ萱島酒造と日本酒応援団がタッグを組んで醸した日本酒が、「甘味は旨味」の九州型「KUNISAKI 純米大吟醸無ろ過生原酒」。
原料米は大分県国東町産「吟のさと」。山田錦の血を受け継ぎ、心白も大きく高度精米が可能です。
『KUNISAKI 純米大吟醸無ろ過生原酒』についてはこちら
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「NAGAOKA純米大吟醸無ろ過生原酒」新潟『長谷川酒造』×日本酒応援団
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日本一の酒蔵数を誇る新潟県内で、もっとも酒蔵が多い長岡市で日本酒を醸す長谷川酒造。
酒米は、夏の花火大会が有名な長岡での契約栽培米「越淡麗」を使用しています。
日本酒瓶のラベルに「花火と育った、癒しのコクと香り」と記されているように、最初に酸味が口の中いっぱいに広がり、その後に余韻をじっくり楽しむ、まるで花火のような華やかさ。
『NAGAOKA純米大吟醸無ろ過生原酒』についてはこちら
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日本酒応援団、その他の「日本酒盛り上げ活動」
日本酒応援団は日本酒を造るだけではなく、限定生産された地酒を「届ける」「体験する」ことにも注力し、地方の小さな酒蔵を応援することも忘れていません。
日本酒応援団のサブスクリプション『SAKETAKU』
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日本酒のあるライフスタイル実現には、いつも日本酒がそばにあることが必要。そのために日本酒応援団では、サブスクリプション「SAKETAKU」を開始。定期的に皆さんのお宅へ希少な美酒をお届けしています。
SAKETAKUのおすすめポイント
SAKETAKUのメリットを以下にまとめました。
- 日本の津々浦々には1.5万の日本酒銘柄があるのに、日本酒マニアでさえ、まだ1%の日本酒しか飲んだことがない事実がある
- 99%の地酒は限定生産なので流通に乗らないため、欲しくても手に入れにくい、情報も少ない
- 隠れ銘酒である希少な地酒を自宅で味わっていただくために、プロが厳選して自動的に毎月お届けする
- メディアで人気の銘柄は美味しいけれど、実は地方の小さな酒蔵が造る日本酒とメディアで有名な銘柄との間には味の差はない。いや、それ以上の味わいがあることを知っていただく
- 家族経営の小さな酒蔵が醸す「1点ものの芸術品:日本酒」を皆様に知っていただくことで、小規模酒蔵の消滅を防げる可能性も出てくる
- 日本酒の知識や経験がなくても日本酒が好きになれるように、わかりやすい形で日本酒の魅力を知っていただく
- 「本格的な一品おつまみ」「うつわ」「テイスティングリスト」「日本酒の情報誌」など、様々な日本酒グッズを毎月同封
- 送料無料、解約OK、縛りなし、美味しくない場合は全額返金
『SAKETAKU』についてはこちら
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『日本酒応援団』についてはこちら
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日本酒応援団のまとめ:テロワール日本酒が海外で主流に!?
海外でも人気の高まりを見せている日本酒。この流れに乗って世界のSAKEブームがさらに盛り上がる可能性が見えてきた、と言えるかもしれません。
さて、美味しい日本酒を造るためには美味しいお米が必要です。
日本全国で作られているお米ですが、その土地によって味わいも香りも違ってきます。なぜなら、お米作りにはその土地のテロワール(その土地が持つ独特の気候や環境)が大きく関わっているからです。
特に、美味しいお米に欠かせない要素が気温。昼夜の寒暖差が大きいほどお米に旨味が出ると言われています。
その点、コシヒカリで有名な新潟県で、さらに棚田で育ったお米の甘みと旨味は格別です。
「棚田コシヒカリ純米酒大吟醸」は、初めてテロワールを重視した日本酒。さらに、なかなか手に入りにくい棚田産コシヒカリを用いています。
老舗酒造の熟練技が冴える日本酒を、この機会にぜひお試しください。お洒落なボトルデザインなので、プレゼントしても喜ばれます。