
最近はワインのようなテイストやアロマを持つ日本酒が脚光を浴びています。
特に、日本酒用語が難しく日本酒に苦手意識を持って避けていたり、今までの日本酒は洋食に合わないと思い込んでいたり、日本酒瓶のデザインがオシャレじゃない(おじさんっぽい)から感覚的にイヤ、なんて思っている人が選んでいます。
「ワインのような日本酒」はボトルも洗練され、ワインを思わせる味わいながら日本酒が持つ淡麗な後味とキレの良さを備えていることが特徴です。
今回は、
- 日本酒とワインの造り方の違い
- 「ワインのような日本酒」の造り方
- おすすめの「ワインのような日本酒」銘柄
について紹介させていただきます。
日本酒とワインの違いとは?
華やかでフルーティーなワインを飲み慣れている人にとっては、日本酒は辛く(ドライ)てアルコール度数も高い、ましてや熱燗にいたっては目までアルコールの刺激を受けて涙が出るほど沁みて、匂いも強くて飲めない、翌日は二日酔いは必至、との印象をお持ちかもしれません。
それが正しいのか思い込みなのかはさて置き、同じお酒ではありながら日本酒とワインは材料が違うだけではなく、造り方も楽しみ方も、合う料理も違うことが多いものです。
それなのに、なぜ「ワインのような日本酒」が生まれたのでしょうか。その疑問にお答えする前に、まず日本酒とワインは同じ醸造酒であることを説明いたします。
大きく分ければ日本酒もワインも醸造酒ですが…
お酒は製造方法によって3つに分類できます。
- 醸造酒…日本酒、ワイン、ビール
- 蒸留酒…焼酎、ウイスキー、ブランデー
- 混成酒…梅酒、リキュール、ベルモット、etc…
日本酒とワインは同じ製法のカテゴリーに属しますが、
- 発酵方式
- アルコール度数
- 飲み頃温度
- 飲む容器
- 合わせる料理
は異なります。
日本酒とワインは発酵方法が違う
日本酒は並行複発酵、ワインは単発酵で造られます。
『並行複発酵』で造られる日本酒
この投稿をInstagramで見る
日本酒は硬いお米を使うので、まず精米と洗米をした後に蒸米にして柔らかくしなければなりません。その後、麹(こうじ)を加えてお米のデンプンを糖に分解する工程と発酵を同時に行います。
この醸造法を「並行複発酵」といい、手はかかるものの、まろやかで魅力的な味わいと旨味、香りが作り出されます。
『詳しい日本酒の造り方』についてはこちら↓
日本酒の複雑な製法に比べて、ワインはどちらかと言えば、単純な製法と言えます。
『単発酵』で造られるワイン
ワインの原料であるブドウにはもともと発酵に必要な糖分が含まれているので、面倒な手順は一切なし。
ただブドウを破砕して酵母を加えるだけで(白ワインの場合は、圧搾してから酵母を加えて)アルコール発酵ができます。
赤ワインは圧搾(果実に圧力をかけて搾る過程のこと)して樽に貯蔵、白ワインは酵母を加えて樽に貯蔵。その後オリ引きして瓶詰めして熟成させます。
日本酒とワインはアルコール度数が違う
この投稿をInstagramで見る
日本酒のアルコール度数は法律上22度までと決まっていますが、私たちが飲んでいる日本酒は15〜16度が一般的です。これは、アルコールを作る役割の酵母が、自分で作り出したアルコール度数が高くなると活動できなくなり死滅するからです。
それに対して、ワインは10〜14度。日本酒よりは少々低めです。一般的に赤ワインのアルコール度数は高く、白ワインは最後まで発酵させないことからアルコール度数は低めになります。また、ワインのアルコール度数はブドウの品種や収穫時期などに影響されます。
日本酒とワインは飲み頃温度が違う
日本酒を飲む時の温度には幅があります。
多種ある世界中のお酒の中でも飲み頃温度に柔軟な日本酒。飲む温度を変えることで別の味わいを発見する楽しみもあるからやめられません♪
日本酒の温度は、
へと続きます。
この投稿をInstagramで見る
日本酒を温めた最高温度の状態を表す言葉が「熱燗」と思っている人が多いのですが、上には上があるもので「とびきり燗…55℃」「超とびきり燗…55℃以上」なんて徳利を持つこともできないほど温めることもあります。
日本酒は低い温度では香りを楽しめてスッキリした飲みごごちになり、温めると深いコクが感じられることから、それぞれの温度で異なる味わいを楽しめるのです。
「今度お店で注文してみよう!日本酒温度のおしゃれな言い表し方と、おすすめ燗付け時間」についてはこちら↓
しかし、ワインの場合は、赤ワインのフルボディで16〜18℃、白ワインは辛口で7〜14℃と幅は狭まってきます。
ホットワインにする場合もありますが、これはスパイス類を混ぜて体を温めるための飲み物で、ワイン自体の味を楽しむものではありません。
日本酒とワインは飲む容器が違う
この投稿をInstagramで見る
フルーティーな香りの吟醸系日本酒人気が影響してか、最近では日本酒をワイングラスでサービスするお店も増えてきました。
そうはいっても伝統的な日本酒の酒器の種類は様々で、日本特有の繊細なデザインのおちょこやぐい飲みを愛用している方も多いものです。
日本酒にワイングラスをお勧めする理由はこちら↓
それに対して、一般的にワインはワイングラスで飲みます。中にはコップで飲む人もいますが、ワインの香りを楽しむためにはやっぱりワイングラスが最適です。
日本酒とワインは合わせる料理が違う
海外では、日本酒は寿司や刺身に合う、かたやワインは脂肪が多い肉料理に合い、口中の脂分をサッパリ洗い流してくれる、という認識があります。
最近でこそフランス料理店やイタリア料理店でも日本酒をサービスしていますが、一般的には「日本酒=寿司・刺身」の認識から逃れられない人が多いものです。
このように日本酒とワインには、造り方から飲み方、合わせる料理まで違いが見られるのですが、そんな常識を打ち破り、日本酒の旨味を持ちながらもワインのように洋食を楽しめる「ワインのような日本酒」が登場!
「ワインのような日本酒」とは一体どのように造られ、どのような味なのでしょうか。
「ワインのような日本酒」の造り方とおすすめ銘柄
今までの日本酒の常識を覆すような日本酒は、
- ワイン酵母を使って発酵
- ワインの樽を使って熟成
- 活性酒の手法を用いてシャンパン風
- リンゴ酸を強調してワイン風に高酸度
- フランス製ボトルとコルク使用、ラベルもHPも日本酒感がないデザイン
などの手法を使って造られます。
今までにない「ワインのような日本酒」を目指すために、上記のような手間を加えて日本酒に相乗効果を発揮させ、お客様に瀟洒なイメージでアピールする手法を用いるのです。
では、それぞれの具体的な方法と代表的な「ワインのような日本酒」銘柄をご紹介します。
ワイン酵母を使って発酵させた「ワインのような日本酒」
日本酒用の酵母を使う代わりにワイン用の酵母を使った日本酒です。甘みがありながらも酸が感じられて、食中酒としても食後のデザート代わりにしてもふさわしい味わいになります。
ワイン酵母使用で「ワインのような日本酒」のおすすめ『越後鶴亀 純米吟醸 ワイン酵母仕込み』
https://www.instagram.com/p/BlkgKXTh8qO/
清酒酵母の代わりに」ワイン酵母で醸した優しい甘さが印象的な新ジャンルの日本酒です。酸味が爽やかに効いて後味サッパリ。甘い上立香がほんのり漂い、日本酒が苦手な女性でも大丈夫です。
実は、ワイン酵母を使った日本酒を造っている酒造は全体の1%のみ。星の数ほどもあるワイン酵母からお米に合う酵母を探し出すのは至難の技ですが、運よく見つけられてもアルコール度が上昇しないという苦難も待ち構えているので蔵人泣かせなのです。
そんな苦労を乗り越えて完成した「鶴亀のワイン酵母仕込み日本酒」は発売すると3日で売り切れるほどの人気です。
目隠しして飲んだら日本酒とは思えない香り高い白ワイン風日本酒。和食にも洋食にも合わせてお楽しみください♪
この投稿をInstagramで見る
*日本酒酵母を用いたワインも!
ワインはワイン用の酵母を使って発酵させるものです。特に白ワインは7℃で造ることが一般的です。
しかし、チリのある醸造家は白ワインをもっと低温で発酵させれば、より香り(アロマ)豊かなワインになるのではないかと思っていました。
ところが、、7℃以下で活動するワイン酵母は存在しません。そんな時、日本酒酵母はワインが発酵する時の温度よりも低い温度で発酵する、という事実を知りました。なんとか日本酒酵母を手に入れて試行錯誤の末、彼は清酒用7号酵母を使った超低温発酵日本酒酵母ワインを完成。
強烈に自己主張はしないけれど、口の中でゆっくりと個性が花開き、日本酒のようなアロマを持った奥深い味のワインです。面白い事に、ワインでは生臭さが先立ってしまう鯖やイワシとのマッチングはバッチリ!通常の白ワインの発酵は10〜15日ほどですが、日本酒酵母を用いた白ワインの発酵は40〜50日。長期間の発酵で酵母の世代交代が激しくなり、複雑で旨味のあるワインが誕生。日本料理との相性もバッチリだそうです。
『日本酒酵母ワイン』についてはこちら
↓
ワイン樽を使って熟成させた「ワインのような日本酒」
上槽後の日本酒を、ワインを醸造していた樽に入れて熟成させる方法を用います。
熟成用の樽は赤ワイン、白ワイン、シェリー(酒精強化ワイン)で、それぞれの樽につめて熟成させる事で樽に残ったワインの風味が日本酒と交わり、今までにない和と洋が融合した日本酒が出来上がります。
赤ワイン樽熟成で「ワインのような日本酒」おすすめ『木戸泉Afruge No.1 純米酒 赤ワイン樽熟』
この投稿をInstagramで見る
Afrugeは、「AFS」製法で造った純米酒を樽熟させた日本酒です。
AFS製法とは「高温山廃もと」製法のことで、安達氏、古川氏、荘司氏の3人により確立されました。その功績を称えるために3人の頭文字をとって命名されたものです。
Afruge No.1は純米酒を赤ワイン樽で6か月間熟成、その後1年半の貯蔵熟成をプラス。グラスに注ぐと普通の日本酒では得られない淡いゴールドがゴージャスに揺らめきます。
Afrugeはドライアプリコット、ハチミツにミントが巧妙に混じった複雑な芳香。ボリュームのある酸と甘みを持つので、コクのある食事に最適です。
『木戸泉Afruge No.1 純米酒 赤ワイン樽熟』についてはこちら
↓
白ワイン樽熟成で「ワインのような日本酒」おすすめ 『名張NABARI純米大吟醸2019』
この投稿をInstagramで見る
あの「而今」で有名な木屋正酒造が限定200本のワイン樽熟成日本酒を発売したのは今年の4月。
720mlで10,000円の白ワイン樽熟成日本酒は、4月19日にすでに完売しました。
このワイン熟成日本酒に使われた樽は、新潟県新潟市でワインを醸造している「フェルミエ」で使われていたもの。
木屋正酒造がこだわったのは「国産の樽」であることです。どこの樽を使ったのかが明らかにされていないワイン樽熟成酒もある中、日本で使われていたワイン樽にこだわり、日本のメーカー同士のコラボで新しい日本酒を造りたい。それが、商品化のきっかけとのことです。
『名張NABARI純米大吟醸2019』についてはこちら
↓
*新潟県産ワインについて
フェルミエは、米どころ酒どころ新潟で、海風が渡る「ワインコースト」のテロワールを利用した家族経営の農園ワイナリー。日本海の海の幸とマリアージュできるワインを目指す新進気鋭の醸造家が造り出したワインはスペイン屈指の白ブドウ品種「アルバリーニョ」を使っています。大西洋に面したスペイン・ガリシア地方は新鮮な魚介料理で知られ、「海のワイン」とも称されるアルバリーニョも魚介類との相性が良いワインです。
新潟にはもう1つ、フードフレンドリーなワイン造りに情熱を燃やしている別のワイナリーもあります。その名は「ZIO SETTO(ジーオセット)」。
ブドウは個性豊かなイタリア品種やカベルネなどを用い、食事のよきパートナーとして果実と酸味にこだわったワイン造りで定評があります。
そんな個性的なワインたちの中からソムリエが厳選した白ワインは特別な日のお祝いにぴったり♪
*イタリア・トスカーナのワイナリーから厳選直輸入した赤ワインもあります。
お世話になった方へのお礼やご長寿などの喜び事にお使いください。
『イタリアのワイン』についてはこちら
↓
活性酒の手法を用いた「スパークリングワインのような日本酒」
生きた酵母をそのまま瓶詰めすることで日本酒が炭酸ガスを含み、まるでシャンパンのように食事の場を華やかに彩るスパークリング日本酒。
スパークリング日本酒には以下の3種類があります。
- 活性にごりタイプ
- 瓶内二次発酵タイプ
- 炭酸ガス注入タイプ
いずれも発泡性ワインのような口当たりで、若い人にも人気です。
スパークリング日本酒についてはこちら↓
スパークリング日本酒でおすすめ『永井酒造 MIZUBASHO PURE』
一次発酵、二次発酵の技術やオリの取り除き方までフランス・シャンパーニュでのシャンパン造りを踏襲。発想から販売に至るまでに5年の歳月をかけています。
使用している瓶やコルクもフランス製。
2008年に日本、アメリカ、香港で同時発売後、国際的なスパークリング日本酒としての地位を確立しています。
『MIZUBASHO PURE』についてはこちら
↓
こちらもおすすめ!『柏露酒造 HANABI(はなび)Sparkiling SAKE』
リンゴ酸を強調して造る「ワインのような日本酒」
普通の日本酒が好きな人はまず買わない、酸が多い日本酒。
有機酸(リンゴ酸、コハク酸、乳酸)が多い日本酒は味自体は爽やかで、スッキリお口を洗ってくれる印象なのですが、繊細で品のある旨味を求める人からは敬遠されてしまうのです。
しかし、ワインのようなフルーティーさがあり爽やかな酸味を持つ日本酒は、海外では品評会で賞を取るほど好評です。特にフランスでは料理に合わせるお酒の酸味を重要視するため、今後海外での評判も高まることが予想されます。
酸味が強くて「ワインのような日本酒」『河武醸造 鉾杉 ワインタイプ KH改 純米酒』
この投稿をInstagramで見る
商品名に堂々と「ワインタイプ」と名乗るほど自信がある、ワインみたいに酸が強い日本酒です。
リンゴ酸が多いことで、まるでワインを飲んでいるかのような心地になるので、伝統的な日本酒好きな方にも新鮮に感じられるのでは!?
このワインは洋食に合うだけではなく、和食の天ぷらなどの油物、庶民の好物のお好み焼きやトンカツなどのタレを使った料理にも美味しくマッチング!
また、日本酒のつまみにすると生臭みが出ることもある貝類ですが、「ワインタイプ KH改」は生牡蠣などの貝類とも相性はバッチリです。
『河武醸造 鉾杉 ワインタイプ KH改 純米酒』についてはこちら
↓
牡蠣好きの方は『牡蠣のための純米酒』もチェック!↓
日本酒感一切なし!ボトルやHPデザインがお洒落なワイン風日本酒
HPから打栓に至るまでフランスワイン風に統一して日本酒感を消し、ワイン風日本酒であることをアピール。
外見だけワイン風にするのではなく、ワインボトルで瓶内熟成させるヴィンテージ日本酒は、ワインと同じく高めの酸で、コクのあるお米の風味も楽しめます。
これはワインか日本酒か?本場のワインボトルで熟成させた「ワインのような日本酒」『清水屋酒造 榮万寿』
この投稿をInstagramで見る
榮万寿(さかえます)の日本酒は、すべてブルゴーニュ型ワインボトル、長めのコルク打栓、さらにワイン風デザインのラベルで統一されています。
まずHPを訪れてみてください。ここでは「おじさんっぽい」なんて評されるような日本酒は1本もありません。
それぞれの日本酒のコメント欄も、通常は「製造年月」と説明するところを「ヴィンテージ」、「吟醸香」は「アロマ」!
清水屋酒造は元々は新潟県にゆかりがある家柄だったのですが、現在は群馬の館林に移り、少量仕込み・少量生産というミニマリズム風な日本酒造りを目指しています。なので皆さんのお目に止まることはほとんどないと思われますが、非常にこだわりが強い酒造ですので一度はお試しになることをおすすめします。
ワインボトルを日本酒瓶代わりに使っているのはヴィンテージ化を進めるため、3.7cm以上もあるコルクの打栓は空気を抜いて着色や老香を発生させないためで、ボトルエイジングを完璧に進めることができます。
エイジングが進んだ榮万寿は、グラスに注いだ時のアルコール臭さはなく芳醇なアロマでいっぱい♪
また、フランスワインのほとんどがテロワールにこだわるように、同じ地域で契約栽培された五百万石のみを単一品種として使用。そういえば、ブルゴーニュワインも単一品種のみで醸造しています。
テロワールについてはこちら↓
『ワインと間違えそうな榮万寿』についてはこちら
↓
「ワインのような日本酒」のまとめ
熱燗にしてコップに入れて飲む日本酒のイメージから脱皮しつつある日本酒は、ワインに引けを取らないほどに成長しています!
日本酒に先入観を持ってなかなか飲もうとしない人たちや、やっとお酒が飲めるようになった若い人たちも、ワインライクな日本酒で今まで持っていたイメージを払拭できそうです。
「ワインのような日本酒」から日本酒への一歩を踏み出して、いつかは日本酒ファンの仲間入りをしてくださいね♪