
「もう夏の到来?」と思うほど暑い日が続くと、待っていたかのように酒屋さんに涼しげな風情の日本酒が並びます。そんな日本酒を「夏酒」と呼んでいますが、他の季節の日本酒とはどのような違いがあるのかご存知ですか? そして、どのようにして夏酒を飲めば一番美味しいのかを知りたくありませんか?
この記事では、
- 夏酒の特徴
- 夏酒を美味しくするクリスタル氷の作り方
- 夏酒でパフォーマンス!みぞれ酒の作り方
- 夏酒で簡単カクテル
- 「夏こそ燗酒」の深い意味
- 夏酒おすすめ銘柄
などをご紹介します。
夏酒とは
夏はビールが旨い、なんて言っている人におすすめしたいお酒、それは「夏酒」。日本の蒸し暑い夏を吹き飛ばしてくれる、キーンと冷やして飲むと旨い日本酒のことです。
冷やして飲む日本酒の中には「夏酒」としっかり銘打って販売されているものや、アルコール度数を低くして酸味を感じさせる軽快な飲み口にしてある夏酒もあります。
そんな夏酒はチビチビと言うよりはグイグイいけてしまうので、夏にぴったりなんです♪
夏酒に定義なし?
日本酒には四季折々の季節にあった種類や飲み方があります。
秋に収穫した新米を仕込んで以降、冬にはしぼりたて、春にはうすにごり、秋にはひやおろしを燗付けしたり冷やで飲んだり、と味の移り変わりを季節が変わるたびに楽しめますが、夏だけは人の心はビールに流れがち…。
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なぜ、夏に日本酒を飲む人は少なくなるのでしょうか。
今でこそ特定名称酒の人気上昇の影響で吟醸や大吟醸は冷酒か冷や(常温)で飲む、と認識されるようになってきましたが、以前の日本酒には「燗をつけて飲む酒」という印象が強く、「夏に日本酒なんて暑くてたまらん」と言う人が多かったのです。
しかし、技術の進歩により日本酒の保存や物流が円滑になる、酒造では世代交代で若手経営者や若手杜氏が台頭し、今までにないアイデアで日本酒造りを始める、などで新発想の日本酒が多く発売されています。
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日本酒というバックボーンをしっかり保ちつつ、肉料理にもすんなり合う「ワインみたいな日本酒」や、大人の時間をまったり過ごせる「ウイスキーみたいな日本酒」があるといいな、と思ったことはありませんか?そんな日本酒、実はあるんです!それが今話題の「樽熟成日本酒」…。
そんな酒造が夏場でも人々が楽しめる、冷やして美味しい日本酒を作ろう、と工夫を凝らした日本酒が夏酒。一目で夏酒とわかるように、ボトルの色がブルーや透明でラベルも夏を思わせるモチーフが入っています。
「夏酒」には定義がないので、「これが夏酒」「これは夏酒じゃない」と分類はできません。夏酒とラベルに表示しなくても、見ているだけでひんやりした風が吹き抜ける印象があれば、それはその方にとっての夏酒。
今代司酒造
夏酒の特徴
「とりあえずビール」党が夏になると勢いを増してくる中、夏酒も負けてはいません。
「夏酒」はアルコール度数を低くしてある
夏は発汗作用が活発になり喉が渇きやすく、上昇した体温を下げるためにもどうしても勢いよく飲んでしまいがち。そんな時にアルコール度数が高い日本酒では軽快な喉越し、とは言い難いものがあります。
しかし、夏酒と銘打った日本酒には低アルコール仕様のものも多く見られます。
アルコール度数が低いということは、日本酒に弱くて日頃は避けている人でも口当たりや喉越しがよくなり、サラリと飲めるということ。また、翌日にアルコールを残したくない人にもおすすめです。
柏露酒造
日本酒の新しい飲み方を提案する甘口の「日本酒ベースリキュール」。日本酒の風味を感じながらも上品でフルーティーな果実の香り、爽やかな酸味で、火照った体もクールダウン!アルコール度数は8と低めなので、日本酒に弱い方でも安心して飲んでいただけます。高級感あふれるボトルに詰められたフルーツリキュールの種類は梅、桃、シャルドネ(白ぶどう)、ゆずの4種類。氷を浮かべたりソーダで割ったりして味比べするのも楽しい♪
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日本酒が甘いのは砂糖を加えているから、と信じている方もいるかもしれません。それで日本酒を避けているとしたら大変残念です。なぜなら日本酒が甘いのは砂糖が入っているからではなく、日本酒を造る過程で発生したもの。低カロリーで腸内環境や健康に貢献する糖質なのです…
「夏酒」にはシュワシュワの炭酸が入っている
最近若い人たちが好んで飲んでいる日本酒と言えば「スパークリング日本酒」。炭酸ガスを含んだ日本酒のことです。
日本酒に馴染めない人でもスパークリング日本酒なら飲める、と言うことで乾杯酒、食中酒として人気急上昇!
上品に糸を引く泡立ちと日本酒に溶け込んだ爽やかな炭酸ガスは、お腹もお口もスッキリさせたい時に最適。夏でもこってり料理や肉料理が好きな人にも欠かせない夏酒です。
「HANABI」 Sparkiling SAKE
柏露酒造
数あるスパークリング日本酒の中でも「純米スパークリング」で「新潟県」の「全国新酒鑑評会金賞受賞蔵」が醸したスパークリング日本酒の味は保証付き!炭酸ガスを注入して仕上げるスパークリング日本酒とは違い、瓶内二次発酵させたスパークリング日本酒は、柔らかい甘味と米の旨みが生きています。アルコール分は8%。食前酒としてはもちろん、食中酒として、デザートと合わせても◎。パーティーの場でも大活躍!
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この夏はスパークリング日本酒でひんやり冷たく喉を潤しませんか?日頃は日本酒ファンでも夏はビールに変える人が多くなる猛暑。でも、スパークリング日本酒なら夏の暑さを爽やかに乗り切れます…
「夏酒」生酒でフレッシュな味を堪能できる
春から夏に向かって出回る生酒は火入れ殺菌がされていないことが普通なので、味わいは搾りたてでフレッシュ感たっぷり!さらに「原酒」とラベルに表示があれば、水が加えられていない日本酒と言うこと。だからオンザロックで飲んでも水っぽくならずに、いつまでも生酒の新鮮味を楽しめます♪
白龍大吟醸 「本生しぼりたて生原酒」
白龍酒造
「白龍大吟醸本生しぼりたて生原酒1800ml」は、数々の賞を獲得している白龍酒造が限定で醸した生酒。火入れ殺菌なしで無濾過、無加水の生原酒は日本酒通も納得するガツンと来る辛口。若者向けのテイストを追うことなく、「作品」と呼びたくなる日本酒だけを醸し続けている老舗酒造の味を、「これぞ!」と感服しつつ味わってください。
「夏酒」美容に貢献するにごり生酒もある
生酒でもにごり生酒なら、酒粕のもとであるもろみ、こうじ、こうじ酵素も入っているので栄養たっぷり。美容や健康を気にする女性には特におすすめです。
味わいは、フレッシュでまろやな味ながら酸味もあるのでお口もスッキリ。低アルコールタイプもあり、日本酒を飲み慣れない人にもぴったり!
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私たちの身近にある日本酒にはこうじ酵素が含まれていることをご存知でしたか?嬉しいことに、日本酒にはこうじ酵素以外にも老化を防いだり美容のために女性が見逃せない成分も含まれているのです…。
しかし、「にごり生酒」と一口で言っても実は数種類に分けられるのです。次回、にごり生酒を選ぶ時に迷わないようにその種類を知っておくと便利です。
にごり生酒の種類
滓絡み(おりがらみ)
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日本酒の瓶の下部分に溜まっている白い部分を滓(おり)または澱(おり)と言います。日本酒からもろみを搾る時、目の荒い酒袋を使えばもろみ成分が日本酒に混じって搾り出されます。
昔はおりが入った日本酒は歓迎されませんでしたが、最近ではどぶろくと同じく人気上昇。とは言えいえどぶろくではないのですから、滓絡みのおり部分はキメが細かくさらりとした上品な味わい。どぶろくのようなつぶつぶした舌触りやコッテリ感もなく、夏酒らしく喉にスルリと流れていきます。
なお、滓絡みは「おり酒」「初しぼり」とも呼ばれることもあります。
笹にごり(ささにごり)
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細濁り、小濁りとも表記されることが多いささにごり。ちょっとにごっているかな、と感じるくらいのにごり生酒です。酒造によってはラベルに「うすにごり」と表記していることもあります。
活性にごり
もろみが発酵している状態のまま瓶詰めした生酒で、瓶の中では炭酸ガスが発生し続けていることが特徴。発泡にごり酒とも呼ばれています。
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生酒の中にはこうじ菌が作り出したこうじ酵素が生きており、徐々に生酒の糖分やタンパク質を分解していくので酒質が変わってきます。したがって生酒を購入したら出来るだけ早めに飲みきることをおすすめしたいのですが、開栓して3日ほど経ったものも口当たりが柔らかくなり、落ち着きのある味になることも…。皆さんも色々と試して生酒の賞味期限を決めてください。
夏酒を最高に美味しくなる飲み方
ここまで読んでも「蒸し暑い夏になんで日本酒?」と思っている方に、見るだけで体が冷え冷えになる夏酒の飲み方をご紹介します。これで「とりあえずビール」の方も夏酒で乾杯派に転身するかも!?
「夏酒」原酒タイプはオンザロックで
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クリスタルのように透明で大きな氷を入れたグラスに夏酒を注ぐだけですが、普通の氷ではすぐに溶けて水っぽくなってしまいます。夏酒の味を薄めないポイントは3つ。
- スローアイス製法で作られた透明な氷であること
- かちわり氷みたいに大きな氷であること
スローアイス製法とは、時間をかけてゆっくりと凍らせること。スローアイス製法で作られた氷は溶けにくいので夏酒が水っぽくなりません。また、水に空気が含まれていないので氷が白く濁らず、キラリと透明で見た目の涼しさも倍増!このクリスタルアイス、ご家庭で作ることもできるので挑戦してみませんか?
では、お家でできる透明で溶けにくい氷の作り方の概要をかいつまんで説明します。
- 「純水(ピュアウォーター)」を使う←工業用純水ではありません。飲料用を使ってください。
- 水を沸騰させて一度冷まし、再び沸騰させて冷ます。その後、以下の3通りの方法のいずれかで凍らせます。
①グラスや製氷皿に冷めた水を入れてクーラーボックスに並べ、蓋をして24時間冷凍庫に入れる
②あるいは冷凍庫の温度を−1℃に設定してゆっくりと24時間冷凍庫に入れる
③または、塩水を作って冷まし、その上にコップを置き、コップの中に水を入れて冷凍庫に入れる
詳しくはwiki how「How to Make Clear Ice」をご参照ください。
「夏酒」フレッシュな生酒は凍結酒で
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凍結酒とは凍らせた日本酒のことです。日本酒の種類は生酒であることが多く、長期低温熟成させるために凍結させることもあります。
火入れしていない生酒は酵素や酵母が活動しているので品質が変化しやすいのですが、凍結することによって品質を安定させ、しぼりたての新鮮さを保つことができます。
凍結酒を飲む時にはぬるま湯につけて半解凍の状態にし、その後酒瓶を振ってからグラスに注いでいただきます。カップに入った凍結酒なら、そのままスプーンを入れてかき混ぜて食べてもOK!
口の中で夏酒のシャリシャリ感も楽しめ、火照った体も瞬く間にヒンヤリ!
「夏酒」冷んやりパフォーマンスはみぞれ酒で
凍結酒のシャリシャリ感は夏酒を不思議な味わいに変えますが、みぞれ酒はちょっとしたパフォーマンスを楽しめます。
凍結酒とみぞれ酒の違いは以下の通り。
- 夏酒を凍らせたものが「凍結酒」
- 夏酒を凍結させずに、グラスに注いだ瞬間にシャーベット状に変化するのが「みぞれ酒」
みぞれ酒の作り方
まず日本酒を冷蔵庫でよーく冷やしてから−20℃に設定した冷凍庫に移して過冷却の状態にします。過冷却とは、本来凍結してしまう温度なのに液体のままでいる状態です。同時に日本酒グラスも冷凍庫に入れておきます。
この時の夏酒の量は1合ほど。冷凍庫に入れる時間はアルコール度15前後の夏酒で90分が目安。
90分経ったら、冷やしたグラスに高めの位置から注げば、その衝撃でシャーベット状になります。
注意点は、
- 徳利などに入れ替えて冷凍する場合は、万が一割れても惜しくはない酒器を使うこと。
- 冷凍後に冷凍室から出すときに衝撃を与えないようにすること。冷凍中に、気になるからと揺すったりしてもいけません。ドアに当てても凍り始めるので要注意です。とにかくそーっと取り扱ってください
最初は難しい感があるかもしれませんが、冷凍時間、夏酒の量、アルコール度数などのコツを掴めば楽勝のみぞれ酒。宅飲みパーティーでもぜひ皆を楽しませてくださいね。
「夏酒」見た目もカラフルなカクテルで
夏酒はカクテルにするのもおすすめ。例えば、
- サムライロック:夏酒+ライムジュース(or ライムシロップ)+氷
- サムライ :夏酒+ライム+レモン+氷
- サキニック :夏酒+ソーダ+トニックウォーター+氷
- なごみ :夏酒+抹茶+氷
- レッドサン :夏酒+トマトジュース
分量はその時の気分によってお好みでお楽しみください♪
夏酒は燗酒で!特に冷え性の方
ここまで冷たくして楽しむ夏酒をご紹介してきましたが、実は、夏は自律神経が乱れる人が多くなる季節でもあります。外は猛暑、室内は空調がバッチリ効いた現代の環境では体温調節が難しく、体が冷え切っている人も多いものです。
また、熱帯夜が続けば睡眠不足になってさらに体調がすぐれなくなることも…。
そんな人には、自律神経の乱れを回復させる燗酒がぴったり!
なぜなら、日本酒には血管を拡張するアデノシンという物質が含まれているからです。
日本酒中には、核酸の一種であるアデノシンがワインの1.4倍、焼酎の11.5倍含まれている。アデノシンは交感神経によってもたらされる精神的ストレス(例えば、強い驚き、心配事、寝不足など)による血管収縮を抑制する作用を備えており、アデノシンを多く含む日本酒によってストレスが癒される…
出典:湯浅知子「心拍数変化からみた日本酒の酔い」J-Stage
日本酒は他のアルコール飲料を飲むよりは体温が2度高くなり、その持続時間も長いとされています。冷房で体の芯まで冷えてしまったら、氷を使った夏酒よりも燗をつけて飲んだ方が冷え性の女性にとっては効果的です。
純米吟醸「和楽互尊」
池浦酒造
多くの女性が悩んでいる冷え性や低体温。夏でもカーディガンや靴下を手放せない人は陰タイプのお酒であるビールやウイスキー、麦焼酎を飲んでは逆効果。体温が37℃以下になると体内の酵素の働きが弱まり体調も悪くなるのでお酒選びは慎重にしたいもの…
「夏酒」まとめ:ビールもいいけど夏酒も
「日本酒は熱燗」のイメージから抜けられない方も、日本酒は季節を問わず美味しく飲めることがわかっていただければ幸いです。
今年の猛暑は「ビールもいいけど夏酒でね」とお楽しみください。